第5話 好きだから
好きだから相手の全てを知りたいと思うのは悪いことなの?
好きだから相手のどんなことも受け入れられると思っていた──はず、なのに…。
「え、別れる?」
「嘘…なんでそんな話に」
「もう決めたの、私」
「「……」」
数日後、仕事終わりに久しぶりにエリ子と郁美の三人で飲んだ。郁美が真戸さんと付き合うようになってから中々三人揃ってこういう場を持つことが難しくなっていたけれど今日は上手い具合に都合がつき、いい機会だからと三好さんとのことを話した。
「どうしてそんな話になっているの?」
「いきなりじゃないでしょう。私、前々から三好さんに対して不満、言ってたじゃん」
「それはそうだけど、そうはいっても結構仲良く続いていたじゃない」
「エリ子は私と三好さんの本当の関係を知らないのよ」
「何よ、本当の関係って」
「……私、本当に彼女、なのかなぁ」
「は?今更そこ?!」
「えっと…美佳さんと三好さんってちゃんとお互い好き合ってお付き合いしているんですよね?」
「……そのつもりだったけど」
「家に行きたいって言って拒否られたくらいで別れるって発想、極端じゃない?」
「っ、充分別れる理由になるでしょう?!彼女を家に連れて行かない彼氏って何よ!」
エリ子の冷めた言い方にカチンと来て思わず声を荒げた。
「掃除していないから部屋を見られたくないとかって思わない?今は来て欲しくない事情があるんだとか」
「そんなの…なんかそんな雰囲気じゃなかったもん」
(そう、あの時の三好さんそんな感じじゃなかった)
顔を強張らせてすぐにでもその話題から逃げ出したいって感じがあった。
「彼女なのにずっと割勘だし家には呼んでくれないし…こんなの彼女だっていえないっ!もー絶対別れる!吹っ切れる!」
「美佳にしては珍しく引きずっているね」
「……え」
「あんた、いつも割とあっさりとくっついたり別れたりしていたじゃない。男関係ただれまくり」
「そ、そんなことないもん。純粋に本当に好きになれる人を探して結婚したいって思っているだけで…たまたまそういう人が見つからなかっただけで」
「そんなあんたが文句言いながらも一年も付き合っているんだよ?そして別れるって決めている癖にこんな風に管を巻いているのはどうして?」
「……それ、は」
「美佳さん、本当は三好さんのこと、好きなんですよね?」
「……」
「好きだから三好さんのちょっとした行動が気になって傷ついて…分からなくなっちゃっているんですよね?」
「~~~いくみぃ~」
天使のような郁美の優しい声と慈悲深い表情に思わず涙腺が崩壊した。
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