第6話 予想外の展開
そんな私に「ちょっと待っててね」と言って郁美は携帯を手に何処かに行ってしまった。
「あぁ~私の癒しがぁ~」
「もう美佳、酔っているでしょう」
「酔ってないわよ、まだハイボール三杯しか飲んでない」
「充分飲んでるし酔ってる」
「う゛~~う゛~」
こういう時エリ子とふたりきりなのは辛い。エリ子はどこか人の恋愛を冷めた目で見ているところがあるから。
結構恋バナには乗っかって騒ぐのに自分のことは話したがらない。そのくせ偉そうにアドバイスとかして来るところが妙に鼻につく。
──でも
「愚痴ならいくらでも訊いてあげるから、そんなにめげるな」
「~~嘘だぁ、前、愚痴訊くの嫌だって言ってたぁ」
「場合によるわね。弱い人間には優しいの、わたし」
「……」
こういうところは好きだと思ってしまうから完全に嫌いにはなれないのだった。
「お待たせ」
「あーいくみぃ~何処行っていたのぉー」
「ちょっと光輔さんに電話」
「真戸しゃん?」
「三好さんのこと、話してもらおうと思って時間取ってもらった」
「……へ」
郁美の突然の言葉に一瞬目の前が真っ白になった。
(三好さんのことを話してもらおうって…)
「ちょ…待って、郁美。真戸さんが三好さんに直接私のことを話すってこと?!」
「え?……あ、違う違う、光輔さんから三好さんの話を訊くってこと。そこに三好さんは関与していないよ」
「~~はぁ~そう」
「完全に酔ってるわね。今の郁美の発言でどうしたらそう取れるのよ」
「だぁって~もう、いっぱいいっぱいで」
四杯目のグラスに手が伸びたところをエリ子に制された。
「あのね、でもあまり期待しないでって」
「…え」
「なんだか光輔さん自身もあんまり三好さんについては詳しくないからって」
「そう…なの?」
「うん…でも答えられる範囲なら答えるからって」
「……ありがとう、郁美」
出来れば友だちには晒したくない醜態だった。好きな人のことが解らなくて友だちという伝手で余所から情報を得ようとしているだなんて。
(本当に彼氏彼女の関係ならこういうこと、直接本人に訊くんだよね)
それが私には出来ない。三好さんに直接ぶつかるのを怖がっている。
(こんな気持ち…初めてだ)
ちょっとしたことでもそれが三好さんに嫌われる原因になるかも知れないと思うと言いたいことが言えないでいた。不満に思っても自分の気持ちを晒してそれを拒否されたら怖い。
(本当、見掛け倒しの女なんだよね、私)
言い換えればそれほどまでに三好さんが好きで、そして…失いたくないと思っているのだ──。
「えっと…あの、お休みのところすみません」
「……郁美の頼みだから」
次の休日、午後から時間を都合してもらいとあるカフェで真戸さんと話すことが出来た。
(っていうか相変わらずブスーッとした顔してるなぁ)
迷惑に思っているのだろうかと少し恐縮していると
「光輔さん、無理いってごめんなさいね」
「いや、全然構わない」
(なっ!)
真戸さんは一緒に来ていた郁美の言葉には満面の笑みで応えていた。
(この人…郁美以外の人には愛想悪いって噂、本当だったんだ)
噂の真意を目の前で見せつけられ少し脱力した。
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