第3話 やきもち

「よかったら晩ご飯、食べに行かない?」

「あ…」

「ん?都合が悪かったらいいよ」

「…ううん、行こうか」

「了解、じゃあ着替えて来るからロビーで待っててくれる?」

「うん」


食事に誘われるのは嬉しいけれどまた割り勘なのかなと思うと少し躊躇った。


最近では別に割り勘が嫌というわけじゃないという気持ちになって来ている。ただ、なんだか私が本当の彼女じゃないみたいな扱われ方が不満というか……


(寂しい、とか思ってるんだ)


割り勘という制度が三好さんとの関係をいまいち上辺のものにしているような気がして嫌なのだった。




「あれ、花井ちゃん、こんな処で何してんの?」

「あ、田辺さん」


ロビーで三好さんを待っていると入社したての頃に合コンした相手のひとりだった田辺さんが声を掛けて来た。


「人待ち?じゃなかったら飲みに行かない?」

「ごめんなさい、人待ち」

「何、最近ずっと付き合い悪いね。本命のカレシ、デキちゃったの?」

「…本命っていうか…まぁ…つきあっている、かな」

「そうなの?ざーんねん。フリーになったらまたオレと遊んでよ」

「考えておきますね」


田辺さんは営業二課──いわゆる顧客確保をメインとする営業の人で、見た目は万人受けしそうなルックスの持ち主だった。


その見た目通りの遊び人で、本命の彼女は作らないという人で私も気が向いた時に遊んでもらったひとりだった。


(ああいう人、結婚には向かないよね)


まぁ、本人が最初から公言しているから泣く女の子は少ないとは思うけれど。



「お待たせ」

「あ」


考え事をしていると着替えを済ませた三好さんが息を弾ませながらやって来た。


「ねぇ、先刻田辺と話していなかった?」

「え?」

「遠目からでも分かった。あの派手ななり。何か言われたの?」

「…別に何も」

「そう?あいつには気をつけないとダメだよ。よくない噂あるから」

「…うん」


(何よそれ、ひょっとしてやきもち妬いているの?)


そんな一端の彼氏みたいな振る舞いをされると益々戸惑う。


(彼女だと思うならそれらしく扱ってよ!)


なんて、こんな風に考える私は我儘だろうか──?


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