第2話 好きの理由
同期で友だちの
その時に知り合った営業一課の
初めは我が社ではエリートと呼ばれる営業一課のクリーンスタッフという肩書目当てで付き合い始めた三好さん。
『付き合ってくださいよ』といつもの如く積極的にアプローチすれば『俺でよかったら』と、これもいつも通りの答えが返って来て晴れて恋人同士になったというのに……
『合計2500円だから1250円ずつね』
『…はぁ』
食事に行けば常に割り勘。
『休憩3000円か…じゃあひとり1500円ね』
『…はぁ』
ホテルに行けば常に割り勘。
(って、なんで何でもかんでも割り勘なの?!)
私は彼女なんだよね?!紛れもなく、正真正銘三好さんの!彼女なら気持ちよく奢ってくださいよ!
──そう大声で叫びたかったかったけれど滅多に出逢えない優良物件
こんな小さなことで愚痴って逃してたまるかという半ば意地もあって私は割り勘男の三好さんと付き合い続けていた。
本来なら最初のデートでフッてしまうタイプの男だ。だってお金に細かい男ってどうなの?結婚してからもケチでちょっとした買物でもグチグチと文句を言いそう。
そういう未来が見えてしまうからいくら希少な優良物件とはいえこのまま付き合って行くには不安も不満もある。
(あーあ、新しい男、探そうかなぁ)
そんな考えが何度も頭に浮かんでは消えて行く中、そんな守銭奴な彼でもどうしても完全に吹っ切れない訳があって……
「美佳ちゃん」
「っ!」
仕事が終わり作業服から私服に着替え更衣室を出たところで三好さんに声を掛けられた。
「今から帰り?」
「あ…うん。三好さんは今仕事が終わったの?」
「そう。今から帰り支度」
汚れた作業服を身に纏い、首から下げたタオルで額を拭きながらにっこり笑っている三好さんにドキッとした。
(はぅ~~やっぱり作業着姿の三好さん、カッコいいっ!)
そう、私は見かけが派手で如何にもチャラチャラした優男が好きそうに見られるのだけれど、本当は、本当に好きなタイプは重労働をものともしないガテン系男子だった。
作業着…
汗だく…
白いタオル…
そのピンポイントで好きな物を身に纏っている三好さんの姿を見た時からすっかり私は三好さんの虜になっていた。
だからこそその見かけの好きと中身、性格の不満が巧く折り合いが付かず悩んでいるということなのだった。
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