第22話 Your Song

 それは、お盆休みも近づいてきたある日の夜ことだった。僕が泊めてもらっている部屋に、パジャマ姿のお姉さんがやって来た。



「何か寝苦しくて…少しお話しよ?」



 それほど暑くは無いんだけど、真希お姉さんはうっすら汗ばんでいた。袋を手に持っていて、その中にジュースの缶がいくつか入っている。真希お姉さんは朝早いときもあるので早く寝たりもするのだけれども、一般的にはそれほど遅い時刻でも無かったので、僕は何となくラジオを聞いたりしてのんびり過ごしていただけだったから、「いいですよ」と答えた。



「朝早かったり、夜勤だったりしてお姉さんも大変ですよね」



「ありがとう。でも、それは慣れたから。でもやっぱり疲れるときもあるの。今日とか足がパンパン」



 あまり仕事の話はしたくないように感じた。僕はまだ高校生だから分からないけど、社会人には色々あるのかも知れない。他愛の無い音楽の話とか、僕の普段の高校生活の話をしながらジュースを飲んだ。



 真希お姉さんはというと、よく見るとお姉さんが飲んでいるのはビールだった。美味しそうに喉を鳴らしている。少し酔いが回ったのか顔がほのかに赤くて色っぽく見えた。



「お姉さん、何もおつまみ無くて良いんですか?」



「いいのよ。少ししか飲まないし。少し飲むと寝付きが良いの……貴文くんはダメよ?まだ未成年なんだし」



「飲みませんよ」



「貴文くん、真面目」



 お姉さんは目を細めて機嫌が良さそうな表情なんだけど、どことなく不安そうな感じもした。少し分かってきたけど、真希お姉さんなりに僕に甘えているんだと思う。そう思うと、お姉さんのことがさらに可愛く思えてきて、僕はお姉さんを抱き寄せて、唇を軽く重ねた。少しだけ苦いビールの味。



 お姉さんも僕の背中に手を回してきて、抱き合った。お姉さんの大きくて柔らかな胸の感触が気持ちいい。ほのかに石けんの匂いがする。僕はついばむようにお姉さんとキスしながら、ゆっくりパジャマを脱がせていった。



 布団の上にお姉さんを寝かせて裸の体を眺める。白くてとても綺麗な肌だ。触って見てもしっとりと濡れているような肌触りでとても気持ちが良い。お姉さんの体から良い匂いがする。熟した果実のような匂い。シシ汁の匂い。山菜と茸の匂い。山の野原の匂い。



「お姉さん……またシシ汁の匂いがします」



「この家の納屋でね、ずっと山菜と茸の毒抜きをしているから、家全体にあの匂いが染みついて居るみたい……時々、濃い匂いがするときがあるの」



 でも、その匂いはお姉さんの体から匂ってきているような気がした。何故かこの匂いを嗅ぐと、僕の理性がゆっくりと溶けていって幸せな気持ちになっていくような気がする。あるいは今までずっとお姉さんから少しずつ匂っていて、それが僕の意識の底に沈んでいって真希お姉さんを愛おしく思う気持ちと結びついていたから、そう感じるのかも知れない。



 仰向けに寝ていても形が崩れない大きな胸。ふっくら盛り上がった淡い色合いの乳首。砂時計のように細くくびれた腰。足の間の切りそろえられた繁み。肉づきの良い太腿。お姉さんの裸はとても綺麗だった。



 僕はゆっくりお姉さんの上に被さっていって、唇を重ねた。ふっくらした唇の感触。ほのかにビールの匂いがする真希お姉さんの唾液の味。舌を絡め合って僕らは何度もキスをした。



 お姉さんと僕は布団の上で座った姿勢でキスを続けた。左手でお姉さんの背中を支えながら右手で大きな胸を揉むように触って指で乳首を弄っていると、だんだんとそこは固くなってきた。僕が唇を離してもう片方の乳首に吸い付き、舌で舐めているとお姉さんは僕の頭をかけて胸に押しつけるようにしてきた。お姉さんの柔らかな乳房の感触が顔に当たって、とても気持ちが良い。



 僕も両手でお姉さんの腰とお尻のあたりを支えて裸の体の感触を楽しんだ。お姉さんの体はどこも柔らかくて、それでいて弾力がある。



 お姉さんが持ってきた袋の中にコンドームの袋が入っていたのには気がついていた。でも、今夜はお姉さんに導かれて、じゃなくて、僕がお姉さんを抱くようにした方が良いと感じていた。



 何故なら、部屋に来たお姉さんはどこか不安そうで、僕が支えてあげなければならないような気がしていたから。



 僕自身、既にすごく興奮していて僕のものは固くジャージを押し上げている。お姉さんの乳首を舐めながらゆっくりジャージを下ろして、お姉さんをまた布団の上に横たえた。



 扇風機の風が涼しい。うっすら汗ばんでいたお姉さんの汗も引いたようだ。でも、熟した果実の匂いはさっきよりもずっと濃くなってきた。やはりお姉さんの体から匂ってくるような気がしてならない。



 ゴム製品を自分のものに装着して、お姉さんの横に寝転がった。またお姉さんの乳房に顔を埋めて、片手で足の間の繁みを触る。お姉さんのその部分は十分湿っていたし、突起も固くなっているのが分かった。そのまま全身を触りながら唇を重ねてお姉さんの上に乗っかった。



 最近、後ろから入れることも多かったけど、今夜はこうして重なりながらお姉さんの息遣いや鼓動を感じたいと思った。お姉さんの足を開いて、そこに僕のものを入れていって、腰を動かしていく。ゆっくりと、お姉さんの体を味わうように動かして、唇を重ねたり乳首に吸い付いたりしながら交わった。お姉さんも僕の体に手足を絡めてきたので、柔らかな体を僕の体全体で感じて、とても幸せな気持ちになる。



 抱き合いながらしばらく腰を動かしてお姉さんの体を楽しんで、それからお姉さんの熱くて柔らかい肉を感じながら射精した。激しさは無い、穏やかな交わりで心の満足感がとても大きい。



 お姉さんの体の中から出して、ゴムを外して自分のものとお姉さんの体を拭いたら、お姉さんが裸のまま僕に抱きついてきた。軽く唇を重ねる。



「貴文くん、女の子の扱いがとても上手になったわね」



 その言葉にお姉さんの喜びと同時に、お姉さんの不安も少し感じた。そういえば僕が都会に帰る日が近づいている。



「真希お姉さんにそう言ってもらうと嬉しいです、僕にはもう真希お姉さんしか見えないですから」



 僕もお姉さんを抱きしめた。お姉さんの息づかいや肌触りを感じる、鼓動まで聞こえてきそうだ。



「眠くなってきちゃった……ここで寝ていいかな?」



「いいですよ。明日は早いんですか?」



「……明日はお休みなの」



「じゃあ、ゆっくり寝ましょう」



 僕はお姉さんの背中をさすりながらそう答えた。

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