第17話 夏祭り(3)
こうして裸で畳の上に座って潤んだ瞳で僕の方を見つめる真希お姉さんを見ていると、真希お姉さんが心の中にエッチなかみさまを宿している、というのが真実であるかのように思えてくる。
普段と違う髪型なので、お姉さんのうなじのあたりが見えてとても色っぽい。僕は跪いて真希お姉さんに近寄ると肩を抱いて、唇を重ねた。
むさぼるように何度も唇を重ねて舌を絡ませてお姉さんを味わった。白桃のように白くて大きな胸の方へ手を伸ばしてつかむと、柔らかで弾力のある肉が指からはみ出て、触り心地がとても良い。
お姉さんが巾着袋の中からコンドームを出して僕に手渡すと、畳の上に寝転がって両手を僕の方に向かって開き、こう言った。
「貴文くん、来て」
その姿はとても魅力的で、エッチで、そして可愛らしくて、僕はとても興奮していたのだけれども、それよりもお姉さんが愛おしく感じられるほうが強くて、お姉さんが望むなら、どんなことでもしてあげたい……そう思ってしまった。
「楽しみましょう、お姉さん……お姉さんも、お姉さんの中のかみさまも一緒に……」
僕がそう言うとお姉さんは潤んだ細い目を少し見開いて、小さく「ありがとう」とつぶやいた。
ジーンズを下ろして、下着を脱いでゴム製品を僕ものにつける。もちろん固く勃起しているのだけれども、いつもよりすんなり装着できた気がする。興奮や欲情よりも真希お姉さんへの愛おしさの方を強く感じていたからかも知れない。目の前に横たわる真希お姉さんの白い体はとても可愛らしくて美しい動物のように見えた。
寝転がる裸のお姉さんの喉を撫でると目を細めて嬉しそうな表情。僕はさらに大きな乳房や柔らかな体、肉づきの良いお尻を両手で撫で回した。
唇をふっくらした乳首に近づけて舌先で舐めると、お姉さんが可愛らしい声を上げた。太腿を撫でて股間の繁みに手を伸ばすと、お姉さんのその部分は既に熱く湿っていて、突起も固くしこっていた。軽く指で触ると跳ねるように反応して、その動きすらも可愛らしい。
「行くよ」
「……来て」
僕はお姉さんの上にのしかかって中に入れていった。熱くて柔らかな肉に包まれ、快感が背筋を伝って脳にまで響いてくる。たまらず何度も突き入れると、寝転がったお姉さんは手足を僕の体に絡めて抱きしめてきた。裸のお姉さんを全身で感じて、とても気持ちが良い。
僕はゆっくりと腰を動かした。今までのように本能のままに突くという感じでは無く、大好きな女の子を包み込むように抱き合って、お互いを味わうように求め合った。
外はまだ少し暑かったのに不思議と汗をかかない。お姉さんの体も奥に熱を感じるのに触れている部分は柔らかでひんやりとしている。
そして、僕はお姉さんの中で果てた。全身の精気が股間に集まって吸い取られていくような快感。今までのような荒っぽさや激しさは無い、穏やかな行為ではあったのに、満足感がものすごく大きい。心が満たされていたからかも知れない……そう思った。
目の前の真希お姉さんの表情がとても可愛らしく見える。いつもと違う髪型のせいだろうか……耳から首筋にかけてのラインもとても色っぽくて素敵だ。口元が緩んで微笑んでいるように見えた。
「すごく気持ちが良かったよ」
そうお姉さんが言う。
「僕もすごく気持ちが良くて、楽しかったです」
「楽しかったね」
真希お姉さんが細い目をさらに細めて笑った。
外からドーンという音が聞こえ始めると、お姉さんは浴衣を着始めた。僕も服を着て、ゴミが残らないように袋に片付けた。
「打ち上げ花火が始まったみたい」
続けてドーンという音が聞こえてくる。僕らは静かに本殿の床下から出て、二人で空を見上げると、次々花火が打ち上げられて夜空に大きな光の花が咲いていった。
行為の後、あまり人に見られたくなくて、僕らはまた手をつないで神社の裏手から抜け出して、人の目があまりない方向へ向かうと、また打ち上げ花火が夜空に咲いて、真希お姉さんの顔を照らした。
「綺麗だ」
「綺麗だよね」
真希お姉さんは花火を見上げてそう言った。でも、僕は夜空に咲く花火よりも、きらめく星よりも、真希お姉さんのほうが綺麗だと思っていた。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆
私がこの町に戻ってきた日、神社はあの頃と何の変わりも感じさせず小雨の中に佇んでいた。お祭りまではまだ期間があるためか飾り付けもなされていなかったが、それでもあの日の思い出が生々しく私の脳裏によみがえった。
こうしてあの日と同じ部屋でキーボードを打っていても、青地の浴衣を着た色っぽい真希お姉さんのひまわりのような笑顔を思い出す。私が高校を卒業する前に行方不明となってから既に何十年もたつというのに、今にもふらっとこの部屋に、あの時と同じ姿で現れそうな気がしてならない。
あの夏、私は真希お姉さんと大切な約束をした。結局その約束は果たされることは無かったのだけれども、今になって再びその約束のために私はこの町、このお屋敷に来たような気がする。
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