第6話 Runner(1)
本家へと帰ると、夕食の時刻になっていたので、僕らは食卓について夕ご飯を食べ始めた。この日は夏野菜と豚肉の炒めものだった。従伯母さんの作る料理はとても美味しい。カツカレーを食べてきたはずなのに、この日もご飯をおかわりした。普段はそれほど大食漢だというわけでもないのに、この町に来てからたくさん食べるようになった気がする。
ごちそうになってばかりで恐縮するけど、従伯母さんは僕がもりもり食べるのを見ると嬉しいみたいだ。
夕食後、僕は持ってきたラジオを聞きながら部屋で勉強をしていた。ラジオからは爆風スランプが流れてきた。疾走感のある良い曲なので勉強も少し捗るような気がする。
しばらく勉強していると、薄青いパジャマ姿の真希お姉さんが古いアルバムをいくつか持って部屋にやってきた。アルバムと言うより写真帳と言ったほうが良さそうな、歴史を感じさせるアルバムを数冊抱えて持ってきた。でも薄手の生地のパジャマなので、とても色っぽいけど、相変わらず無防備過ぎるような気がする。
「貴文くん、興味ありそうだったから持ってきたの。うちにも昔の写真がたくさんあるから、見よう!」
そう言ってアルバムを広げると、昔の写真がたくさん貼ってあった。真希お姉さんはマイペースだ。でも、確かに面白そうな写真だ。山で仕事をする人たちがたくさん映っている。昔のことだから貧しい格好で炭を焼いたり、背負子に山のように荷物を載せて運んでいる人たちの写真だ。
お祭りの時らしい写真も有ったけど、少し変な感じがする。町の中ではなくて森のような感じの場所にある鳥居の前で、男の人たちが扮装をして集まっている。みんな犬のような仮面をつけていて、ほぼ裸の格好の人もいる。
「真希お姉さん、これは?」
「これは、多分、燃えてしまった山の神社のお祭りだと思う。おじいさんやひいおじいさんの時代までは『口の祭りをさかいのおやしろで行ってからかみさまを町の方に降ろしていた』って聞いたことがあるから、それだと思う」
「何か変な感じの写真ですね……」
「恭子先生にも聞いたことがあるけど、このあたりの信仰は周辺地域とも繋がりが無くて、特異なんだって。たぶん、昔、山で働いていた人たちの信仰がいろいろ混ざっちゃったんじゃないかって」
「この犬の仮面みたいなのは?」
「山の神社のかみさまは『いぬがみさま』とも言われていたらしいけど……私もよく知らないの。ごめんなさいね……山のお祭りには昔は男だけしか参加できなかったって聞いたことがあるけど……おばあさまもよく知らなかったみたいだし……おじいさんなら何か知っていたかも知れない」
犬神と言えば犬神家の一族という映画もあったし、恐怖マンガでも犬神憑きの話があったけど、そういうのとは違う感じで、どちらかと言うと部族の踊りのような異国風の扮装で面白い写真だな、と思った。
アルバムを覗き込んでいると、真希お姉さんの顔が近い。お風呂上がりなのか、いい匂いがしてとても色っぽい。あの、熟した果物のような甘い匂いも混じっていて妖しい気分になってしまう。
お姉さんの手が僕の手に触れて、そして握ってきた。細い指が絡んできて、ひんやりとした柔らかな感触の手が僕の手を握ってきて、お姉さんの顔がどんどん近づいてくる。
僕が身動きもできずにいると、唇がそっと合わされて僕たちはまたキスをした。
「女の子とお付き合いする練習、しよ」
お姉さんはそう言って敷いてあったお布団に寝っ転がると、僕を引き寄せた。お姉さんはパジャマをはだけて下着があらわになる。僕の下半身はとっくに元気になっていた。大きな胸の谷間に目が吸い付けられてしまう。
横向けに向かい合って見つめ合い、お姉さんは再び唇を合わせてきた。お姉さんの手が僕の下半身に伸びて、カチカチになっている部分を触ってきて、とても気持ちがいい。
「お姉さんと、してみない?……ここなら居間から離れてるし、何も聞こえたりしないから大丈夫よ」
確かにこのお屋敷の構造上、そうかも知れない。
ミツブセの炭屋敷を上から見ると口の字になっていて、僕のいる部屋は大座敷がある下の辺の中庭に面した左隅で、家族の居間や玄関、寝室は右上の方にあって対角線上だ。ちなみに右下の隅は人が集まるときの本玄関や土間があって左の辺には台所やトイレ、浴室と言った水回りが集まっている。
「でも……お姉さん、どうして?」
「……私の中にね『かみさま』がいて、良い男の子がいたら導いてくれて……こういう事をしたくてたまらなくなるの。お姉さんは嫌?」
「嫌じゃ無いです……でも、『練習』は嫌です」
僕はそう答えてしまった。何故なら、この夏お姉さんと出会って、いろいろお話をして、一緒にいろんなものを見ている時間で、大人のお姉さんには僕のことなんか子供にしか映っていなかったのかも知れないけれども、僕はお姉さんのことを本気で好きになってしまっていたから……いや、はっきりとした理由なんて無い。でも、「人を好きになる」というのは、そういうものなのかも知れない。
「僕は他の女の子じゃなくて、真希お姉さんが本気で好きなんです。僕はまだ高校生だし、子供だから責任もとれないけど、高校を卒業したらお姉さんときちんと向き合って、ちゃんとお付き合いしたい……」
お姉さんは細い目を少し見開いて僕の方を見た。そして起き上がると、少しの間、黙って僕の方を見た。すごく長い時間のようにも、ほんの数分のようにも思える沈黙の後、真希お姉さんはゆっくり話し始めた。
「……私も貴文くんのことが本気で好きになっちゃった……『かみさま』のお導きじゃなくて、心から好き。……だから、高校を卒業するまでなんて待てない。今、貴文くんの最初の人になりたい」
その言葉に答える言葉なんか思い浮かばず、僕はお姉さんを抱きしめた。腕の中のお姉さんは今まで漠然と思っていたよりも、ずっと華奢で、どんな女の子よりも可愛らしく思えて、実際は身長も僕のほうが少し高いくらいなんだな、と、再確認した。大きな胸が当たって気持ちがいい。
向かい合ったお姉さんが少し離れて、お姉さんがパジャマのボタンを外して脱ぎ始める。
「蛍光灯……消さなくて良いんですか?」
「暗いのは嫌。それに、貴文くんの目に私の姿を焼き付けておいてほしい」
真希お姉さんが下着姿になり、そしてブラジャーを外すと大きなおっぱいがまろび出てきた。色白で、とても張りがあって形もいい。淡い色合いの乳輪もふんわり盛り上がっていて、とてもきれいな胸だ。
「綺麗だ」
思わずそう口にしてしまうと、真希お姉さんは少し恥ずかしそうな顔になって
「ありがとう」
と答えてくれた。お姉さんはパンティーも降ろして一糸まとわぬ裸の姿になる。あの部分もあらわになるけど、お姉さんのそこは陰毛の生え方も綺麗だ。
「お姉さん……その部分も綺麗ですね」
「ムダ毛は処理してあるから。女の子はたいへんなのよ」
少し顔を赤らめた表情も、普段のふっくらしたイメージや大きな胸とは裏腹に砂時計のように細くくびれたウエストも、とても綺麗だ。蛍光灯の明かりの下の白い肌は輝いているようで、初めて間近に見る年頃の女の人の裸が、真希お姉さんで本当に良かったと感動する。
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