またのご利用をお待ちしております。
私の目の前にあった景色が煙のように消え去ると、角が生えた赤髪のスーツの男が視界に入った。
そうだった私は、妙なところへ迷い込んでいたのだった。彼の横には、先ほどまで見ていた赤いポーションがあった。一通りの映像を見た後では、あの赤い液体が素晴らしい品にみえる。
『いかがでしたか?この製品がどのようなものかご理解いただけたでしょうか?』
私が大きくうなずくと、スーツの男はニコリと笑い、『それはよかった』というと小さく拍手をした。
『それでは、お次はこの、名工ケブルリーノが初めて商品として販売した
今までポーションが乗っていたテーブルは、いつのまにか別の製品に変わっていた。それは、黒紫の光を反射している鱗が貼り付けられた鎧のようなものだった。
私は、とても興味を惹かれたが、それを遮るように背筋に寒気を感じた。
『おやおや、意外に早かったですね。お迎えがきたようです』
彼がそう言うと、急に背後から両肩を掴まれた。びっくりして自分の肩を見ると、蒼白くてしわがれた手が肩をガッチリと掴んでいた。
私は悲鳴をあげようとしたが、力強く後ろに引かれたことで声が詰まり、ぐっとうめき声を上げた。
『またのご利用をお待ちしております』
意識が薄れゆくなか微かに私の耳に声が届いた。
目を開けると、周囲は見慣れた日常風景に戻っていた。
異世界社会科見学 タハノア @tahanoa
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