友達になる理由がなくなった。
真っ暗な部屋の中、ただぼーっと、虚空を眺める。
友達になる理由がなくなった。
そう思ったことに、自己嫌悪で吐きそうになる。
七海さん、美鶴、屋敷先輩と友達になりたかったのは、下北を見返すため。つまりは、みんなを利用しようとしていたことに他ならない。
月曜日、先輩にどうして友達になりたいか、その問いを答えられなくて、胸がどうしようもなく苦しかった理由がわかる。俺は不純な思いで、友達になろうとしていたからだ。
また吐き気がする。
どんな形でも友達は友達。木曜日、七海さんの口から発せられた、かつての自分の言葉に、疑問を抱いたのを覚えている。本当にそうなのか、自らの問いに、今ならはっきり答えられる。
不純な思いを抱えたまま友達にはなれない。そして友達になる資格がない。
友達とは、池たちの時のように、自然に、純粋でいてこそ、友達という関係になるのだ。俺がみんなと築こうとしていた関係は、友達とはいえず、自分に得のある都合の良い関係でしかない。
クズだ。人として、してはいけないことをしようとしていた。
そう考えると、耐えきれなくなり、トイレに駆け込む。
吐いた。何度も吐いて、液体しかでなくなって尚、吐いた。
呼吸も過呼吸気味になって苦しい中でも、考え事はやまない。
自分みたいなクズが、人と関わってはいけない。だけど、だからといって、自分の都合で人との関係を切る方が悪い。多分、人のためにも、自分のためにも、これからもいつも通りに過ごすことが正解なのかもしれない。
だがそれは、自分の良心が咎める。
みんなと会話するのは面白いし、一緒にいて楽しい。そう思えるほどの素敵な人たちだからこそ、自分みたいなクズが関わってはいけない、と強く思う。
関係を切るような真似はできない、けれど関係は切らねばならない。
どうすればいいんだよ。
ぽつりと弱音を溢す。そして弱音を吐いたことに、弱音を吐けるような立場じゃないだろ、と自己嫌悪。そしてうじうじしていることにもまた、自己嫌悪。何をしても、何を考えても自己嫌悪が止まらない。
金曜日、土曜日、日曜日。3日間、悩みに悩み続け、ようやく答えを出した。
人に迷惑がかからないように少しずつ距離をおこう、と。
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