第9話 ユウ・エルムバーンの計画
「それでね、魔法には適正があって~」
「アウ」
お兄ちゃんがまだ動けない私にこの世界について教えてくれている。
周りにいる母エリザやメイドさん達はニコニコしながらこちらを見ている。
傍からみれば自分が勉強して学んだ事を一所懸命妹に教えている子供にしか見えないだろう。
実際、その通りなのだが中身が前世からの続きである私達にすれば重要な情報の伝達だ。
だけどゴメン。お兄ちゃん…
私が持ってる賢者の紋章が全て知ってるみたい…。
私が持つ賢者の紋章の能力は魔法能力の向上と紋章使用時に思考の加速。
そして賢者の紋章は情報の集合体。知りたいと思ったことを教えてくれる。
この世界の歴史や地図、人種や魔法、紋章についても。
現代地球のweb検索機能のようなものだ。
ただわからないことももちろんある。
例えば現在確認されている鉱山の位置等は教えてくれるが
未発見の鉱脈は教えてくれない。
紋章の能力も個性によって違いのでる部分の詳細な能力は教えてくれない。
未来のこともわからない。
それでも非常に便利な能力だ。
私に合ってると思う。
そして私が真っ先に調べたのは・・・
この国の結婚の制度についてだ。
イヨッシャアアアアア!
調べた結果に私は心の中でガッツポーズを決める。
この国では一夫多妻制。
そして兄妹での結婚も認められている。
さすが異世界!さすがパラレルワールド!
ビバ異世界!ビバパラレルワールド!
この世界ではお兄ちゃんとの歳の差も3つ。
兄妹での結婚も認められているならば最早なんの問題もない!
あとは鈍感な最上級朴念仁なお兄ちゃんをどうやってその気にさせるか・・・
前世ではかなり露骨にアピールしてたのに柳に風、暖簾に腕押し、糠に釘。
ただでさえお兄ちゃんも前世の記憶がある以上、兄妹での結婚に否定的だろう。
しかし、今の私はサキュバス。男を魅了し誘惑する者。
その力も使いお兄ちゃんを…
イヤ、ダメだ。それはなにか違う気がする…
それに今度こそお兄ちゃんを幸せにしなければならないし…
無理やりという形はできるだけとりたくない。これは最終手段だ。
ならどうするか…
やはりお兄ちゃんの考え、価値観を変えるしかない。
となれば…一夫多妻制を利用する。
ハーレムだ。
お兄ちゃんのハーレムを作ろう。
前世で日本人なら一夫多妻制とは無縁だったしそんな状況に身を置けば
価値観も大きく変わるはず。
そうなれば妹と結婚だって受け入れやすくなるはず!
ほかの女がお兄ちゃんと結婚するのはイヤだけど…
私が正妻、No.1なら問題ない。
今は動けないし喋れないから計画に動けないけど
せめて周りにいる人からハーレムメンバーの候補を見繕うとしよう。
「それでね、こんな魔法もあって~」
お兄ちゃんが一所懸命に説明する横で私はそんな計画を立てていた。
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