第10話 悪魔
鈴華「ガッ....!」
背中から叩きつけられる。
何が起きた?
目の前に目をやると鎌を地面に振り下ろしたあいつが居た。
優仁「避けたか...どこにそんな力が...?」
鈴華「よけた....?まさか」
キマリスが無理やり体を制御したのかもしれない。
しかし本来そんな真似は...
『極短時間だが、可能である』
鈴華「そうなの!?」
頭の中に声が響く。聞きなれたキマリスの声だった
『かなり無茶をした故、暫くはもう出来ぬ。吉報を待つとしよう』
フェードアウトしていくキマリスの声。鈴華の決意は固まった。
鈴華「任せてキマリス。とびきりの吉報を持ち帰るからね...!」
相変わらず痺れは酷いし腹もまだ鈍く疼く。
しかし、それでも.....
鈴華「期待されたら、答えなきゃ!」
大斧を構え直し、眼前の敵を睨む
優仁「まだそんな気力が...ほぅ、面白い」
鎌を突き立て、相手は拳を構える。
正真正銘、今度で決着だろう
バアル「そういえばこれ、初めてじっくり見るな」
優仁の大鎌。
死神の装備のうち、武器となるもの........本来は。
刃には真ん中辺りに返しが付いていて、流麗と言うよりは機能的と表現した方が正しいだろう。
しかし、刃の付け根や柄は東洋、西洋の翼竜や辰があしらわれているそれはどこか絵画のような魅力さえ感じる
そして、それよりも気になるのが...
バアル「篭手......」
そう、篭手。
通常、武装は一人一つのはず。
なぜなら死神の武器は心の形。
鎌なら鎌、篭手なら篭手のはず。
一度霊装を着れば、体内にある程度残留した力の影響で武器の出し入れは自由だが、そこまで。
仮に2つ出せたとしてもあそこまでの...霊装相手に動きを鈍らせる程の拳を打ち出すことなんて
バアル「....まいっか。優仁は強いなぁ....」
篭手ということなら腕力強化も付いているのだろう。心の形は....まぁ篭手も鎌も同じようなデザインなのでセットなのだろう。
バアル「大鎌って結構腕力使うらしいし、そんなこともあるよね」
鈴華「うっ....はぁ、はぁ....」
事態は拮抗...いや、完全に押されていた。
不味い。このままでは負ける。
完全に押されているこの状況なのに相手はまだまだ余裕そうだ。
鈴華「出し惜しみしてられないか...」
キマリスの言った言葉が頭にこだまする
『吉報を待つ』
鈴華「絶対倒してやる...!」
優仁「おや、猪突猛進一択かと思っいたが....さぁ、今度は何をしてくれる?」
大斧を掲げて声高らかにその魔法を発動させる。
鈴華「キマリス....力を貸して!"
バアル「あいつ大罪系の魔法をっ!?」
優仁「強欲の魔法か...武器に事象を付与してそれを起こすための特化兵装にする魔法...」
7sin'sにそれぞれ1つづつ与えられた魔法、「大罪系魔法」。その一角を前にしても優仁は余裕そうに、思い出すかのように強欲の権能を口に出す
鈴華「絶対倒す..."付与:殺人"!」
優仁「ただし、そんな強力な魔法、当然欠点もある」
鈴華が突っ込んでくるが、優仁は気にする様子もなく相変わらず物思いにふけた様子。
優仁「特化兵装...つまり、その事象以外は起こせない。ということは...」
突っ込んでくる鈴華を前に篭手を解いて軽く両手を広げる。それはまるで『抵抗はしないから好きにしろ』とでも言いたげだった
鈴華「舐めんじゃ...ないわよっ!」
首元に大斧が吸い込まれていき、鈍い音を立てて
....止まった。
斧は首を飛ばすでもなくその場でピタリと止まったのだ
優仁「...殺せぬ相手にはなんの効果もないただの大きなカカシよ。如何に七大罪の魔法と言えど出来るのは精々『可能性』を『可能』にする程度。『不可能』は揺るがぬ」
鈴華「な....んで.........」
狼狽える鈴華に諭すように優仁が言う
優仁「お前の敗因は「強欲」を使って振動や衝撃などといった搦手を使わなかったこと、馬鹿正直に突っ込んできたこと、そして...儂の挑発に乗り、理性を捨てたことじゃ。もっと言うならキマリスの言葉をよく考えなかったこともじゃな。『勝てぬ相手を前にして生還する』。これ以上の吉報はあるまい」
斧をつかみ力を込め、さらに続ける
鈴華「旧友のよしみじゃ。殺しはしても眷属にしてやろう。そうすれば再び相まみえる機会もあろう」
斧からピシッと音が鳴る。
優仁「おっと、これ以上は心に良くないな...この程度にしておこう」
斧をほおり投げ、鈴鹿をうつ伏せに倒すと首元に鎌の先を突きつける
バアル「あれ!?いつの間に!?」
優仁「さぁ、終いだ。遺言くらいは聞くいてやるぞ」
鈴華「あ......ぁ...」
優仁「やはりやりすぎてしまったか...霊装は硬いのに心の方は脆いのだな...」
死神始めました。 朧月夜 @32hNJF9APiE3e6o
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