第4話 契約
優仁「で、では...シャイターン、ここはどこですか?あと、契約の詳細は...」
バアル「あ......」
シャ「バアル君?」(暗黒微笑)
バアル「ヒッ」
シャ「契約をもちかける時には前に情報開示をしてくれと言ったよね?」
バアル「は、はい....イマオモイダシマシタ」
シャ「はぁ....まぁいいや。門出の日に叱りたくは無いからね。気をつけるんだよ?」
バアル「は、はい......」
優仁「こ、こんなにあっさりと丸め込むなんて....」
シャ「これでもこの子達72人の主だからね。
...あぁ、そういえば1人やめたんだったボソッ」
優仁「や、やめた?」
シャ「おっと、聞こえてしまったかい?1柱だけ、自分から降りた子がいるんだよ。姿を見なければ悪魔と分からないほどに優しい子だったよ。優しいからこそ、人間と交わったんだろうね」
優仁「え....?」
シャ「彼女は人間と駆け落ちしたらしいんだ。その時に永遠の寿命と、魔力の大半を失ったようだね。それ以来、第26の柱は空席なんだよ」
バアル「あー、ブネかぁ...遊んでくれるのはブネ位だったなぁ...」
優仁「知り合い?」
バアル「うん、割と仲良かったと思うよ。良く遊んでくれたなぁ...鬼ごっことかけんけんぱとか...」
シャ「現世や冥界にこっそり抜け出して叱られたりね」
バアル「うっ...ゴメンナサイ」
シャ「はははっ、いいよ。昔のことを引っ張り出して叱る趣味なんてないしね。っと、そうだった、契約の詳細とここについてだったね。ここは魔界。現世と冥界の狭間にあるものだ。」
優仁「???」
シャ「はは、分からない顔をしているね、そうだなぁ...お、これがいいや」
そう言ってその辺に置いてあったサンドイッチを持ち上げ、説明を始めた。
シャ「この下のパンが冥界、上が現世だとしよう。君たちは狭間と言ったら具材全てを想像するだろうが、実際は違う。形で言うと砂時計のようなものなんだ。」
都合よく壁にかけてあった装飾の砂時計に目をやると、砂時計が回転し、砂が上側になり、やがて落ち始める。
シャ「魂たちをこの砂としてみてくれ。現世で死ぬ、つまり力を弱くした魂は冥界へと落ちていく。だが、時に怨念や未練などによって冥界へと落ちない強い魂、大きな砂粒がある。」
そう言うと小さな石が砂時計につっかえてしまった。
優仁「あ、砂が止まった...」
シャ「そう。強い魂はそれだけ強い力がある。そのために冥界へと落ちるはずの魂を堰き止めてしまうんだ。まぁ、本当はその魂を喰らって自らの願いを叶えるためなんだけどね。例えば恋人に会いたいだとか、自分を殺したやつを殺したいとか」
優仁「こ、怖いですね...」
シャ「そう、これは現世にも、冥界にも良くないことなんだ。冥界では輪廻の循環が止まり、機能が停止する。現世では怨念や未練によって動く"意思のない、そして見えない何か"によって大量の人が死ぬ。そして、砂時計の片方が壊れるとどうなってしまう?」
優仁「砂が外に漏れ出て使えなくなる...?」
シャ「そう、正解!壊れて、使えなくなってしまう。つまり、片方が崩壊するともう片方も必然的に壊れてしまう。それはどちらの世界にとってもよろしくないことだ。だから。その強い魂が集まる場所を砂時計の砂が落ちる狭間に作ったんだよ。」
優仁「なるほど....それが魔界ってことですね?」
シャ「うんうん、こうも熱心に聞いてくれるとこっちも色々と話してしまうなぁ...さて次は契約の詳細だね。さっきも言ったが強い魂を集めただけでは溢れてしまうわけだよ。どんなものにもキャパシティというものがあるからね。それらを正しい輪廻の輪に戻すあるいは祓って取り除くという仕事をするのが死を司る番人、死神の仕事だよ。そしてその死神になるために悪魔とする契約が"結魂の義"という。魂を結び、悪魔の力をその身に宿すんだ。悪魔は強大な力を持つが、それゆえ物質中心である現世においては力が大幅に鈍る。ほぼ無力と言ってもいい。しかし、現世の人間では当然ユーレイなんて見えないし、ましてや悪霊を相手に戦うなんて真似はできない。そこで、人間と悪魔、両方の力を持つ存在を作るって作戦なわけだ。ご質問は?」
優仁「その仕事...戦闘は現世でやるものなんですか?その場合って他の人から見えたりは...」
シャ「お、いいとこに目をつけたな少年!結論から言うと、その答えは当分はNOだ。新人くんたちに現世に出るほどまで育ってしまった悪霊を相手にさせる訳にはいかないよ。」
ここじゃオーバーワークは死に直結するからねと笑うシャイターン。その冗談、マジで笑えない....
シャ「新人くんたちの仕事は最初は簡単。もの言わぬ理性の消えた悪霊を祓う。慣れてきたら理性の消える前の怨霊を輪廻に返す。実力がついたら現世に向かおうとしてる、または現世に出た悪霊を祓うってのが仕事内容になる。あ、戦闘の時は特殊な装備をしてもらうから一般人には見えないよ。他に質問がなければ早速儀式に入ろうか」
そう言ってグイグイと背中を押され、部屋の中央へと連れていかれた。しれっと大事なことを流された気がする。
シャ「さ、始めようか」
優仁「えっ?な、何も分からないんですが!?」
シャ「ノリでいいんだよこんなのは」
優仁「え、えぇ...」
シャ「それでは、"ソロモンの名においてここに新たな縁を開く。汝らに与うは無血なり。戒禁の下に正しき輪廻の番人となれ"」
バアル「wktk」
シャ「さて、詠唱は終わり。ここからは物的な儀式に入るよ?準備はいいね?」
優仁「は、はいっ!」
シャ「"病める時も健やかなる時も、お互いを助け合い、どんなときも守り合うことを誓いますか?"」
優仁(ん?どこかで聞いたような....?)
「それも必要な事なんですか?」
シャ「そう、"誓った"という事実を作る事。これが大事。バアル、答えは?」
バアル「もちろん誓うよ!」
シャ「いい返事、では少年、"病める時も健やかなる時も、お互いを助け合い、どんなときも守り合うことを誓いますか?"」
優仁「は、はい...」
あ、今思い出した。これ、結婚式でよく聞くヤツだ。一応音が同じだしもじってんのかな?
シャ「じゃ、誓のキスしようか」
優仁「は?」
バアル「無視していいよ。要するに体液の交換だからお互いの血を飲めばおk。」
優仁「良かった...幼女とキスとか法に触れる....」
シャ「何言ってるんだい?バアルは雄型だよ?」
優仁「え...?」
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