第2話 縁

目を開けるとそこは全てが白黒の世界だった。

見慣れた風景のようでどこか違和感のあるようなそんな風景に戸惑っていると声がかかった。さっきの詠唱をしていた声だった。

バアル「やぁ、少年。いきなりこんなことしてごめんよ?私はソロモン様の配下"72柱"が1柱、暴食のバアル、真名をバアル・ゼブルと言う。以後お見知りおきを」

そう、威厳たっぷりのセリフとともにお辞儀をしたのはバアルと名乗った悪魔だった。

黒のローブを印の入った黄金のボタンでとめ、丁寧な動作でお辞儀している。ローブの隙間から見える服はいかにも貴族が来ていそうなしっかりとしたYシャツのようなアレで、それでいて気取っていないような自然な感じだった。

これだけならかなり威厳がありそうだが、頭に王冠モチーフの髪留め、腰からは猫のしっぽが垂れ、更にはどこからどう見ても幼い女の子にしか見えなければ威厳など欠片もない。心做しかお辞儀したままの表情が「決まった...!」とでも言いたげなドヤ顔に見えてきたほどだ。

優仁「ご、ご丁寧にどうも...優仁です...」

バアル「まどろっこしいことは嫌いだから単刀直入に言おう、私と契約して死神になってもらいたい」

優仁「はい?」

バアル「了承したね?ではこの契約書n」

優仁「してないから」

バアル「やなの...?」ウルウル

こんな涙ながらに訴えかけられると断る側も断りづらいもので、咄嗟に付け加えてしまった

優仁「い、嫌というか....説明が足りないから、引き受けられない」

バアル「わかった。では説明しようじゃないか」

死神とは、人間の死後に冥界へと流れつかず、現世に留まり続けた魂の成れの果てである悪霊と呼ばれる存在を処理する、言わば魂の処刑人である。

そしてその適性があるのが今、優仁だけだという。

優仁「なんで俺なの?」

バアル「........他の候補者全員にフられた...。」

優仁「まぁ、確かになんか厨二病じみたロリに某アニメの白いヤツみたく『僕と契約して死神になってよ!』なんて言われて了承するやつはいないだろ」

バアル「ゔっ...ごもっとも...でも!頼むよ少年!いや、優仁!ここで勧誘できなきゃ"暴食"の称号を返さなくちゃならなくなる!下手したら72柱からも降ろされる!そうなったらいい笑いものだよ!ね?僕を助けると思って!」

優仁「暴食?あの七大罪の?」

バアル「うん、他には色欲のアスモデウス、強欲のシャックス、憤怒のベレト、嫉妬のグレモリー、怠惰のアミー、傲慢のキマリスかなこれで精鋭七人衆、7sin'sって言われてる」

優仁「へー...なんかできるの?」

バアル「そうだなぁ...暴食の権能だったらやっぱりあらゆるものを喰らうことかな?」

優仁「へぇー...てかそれ言っていいのかよ」

バアル「まぁ、秘密保持の義務なんてないしね暴食の権能だって一般人にじゃなきゃ見せてもいい。例えば...」

唐突にバアルは優仁の顎に手を差し伸べながら

バアル「君を食べることだってできるんだよ?」ニヤ

優仁「っ...!」

バアル「なーんてね、そんなことしたら僕が追い出されることに拍車がかかるからね!そんな事しないよん」

そう、ケラケラ笑っているバアルはやはりどう見ても悪魔には見えない

優仁「食えるならそれを引き合いに出せばよかったのでは...?」

バアル「あ...」

優仁「馬鹿だこいつ...」

バアル「バカとはなんだこのやろー!ほんとに食べるぞ!」

優仁「ははっ、愛いやつめ」

バアル「ぐぬぬ...」

そんな会話をしているとふと、

優仁「わかった。なるよ、死神」

バアル「はえ?」

突然の事で訳が分からないと言った顔のバアルを無視し、続ける

優仁「正直あんたがなんなのかも分かってないけど...こんな奴にあったのは初めてだからね。何かいい事がおきそうな気がするよ」

バアル「.......いいの!?」

数秒の沈黙(おそらくフリーズ)の後、嬉しそうにはしゃぐバアルを眺めているとふと、

優仁「刺激もなかなか悪くない...」

そんな言葉が口からこぼれていた。

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