当日
あれからちょうど一週間経った。
本当に戻ってくるのか…?なんて言う心配をするぐらい朝は気配がなかった。しかし、授業が終わり下校時刻となったとき、いきなり声がした。教室だけれど、周りには美奈と私以外いない。その声は、言うまでもなく河井さんの声だった。
「ここに二人で待っていたということは…あなたが死神ということをあの子に打ち明けたようね。」
「打ち明けた、というより、美奈は元々知っていた、という言葉の方が正しいかな。その事に関しては、私からは話せない。美奈本人の口から話す言葉を、聞いてほしい。」
私は美奈にアイコンタクトをした。
「河井さんが今、そこにいるのね。まずは謝らせて欲しい、本当にごめんなさい。」
あのとき私に話してくれたように、美奈は丁寧に河井さんに説明した。彼女自身、ずっと辛かったのだろう。いじめられたくない、誰もがそれを思うと思う。私だっていじめから逃れるためにこの学校に転校してきて、死神であることを隠そうとしていた。河井さんの場合…取り返しのつかない選択でいじめから逃れようとしていた。いじめていた美奈がその選択に一番驚いただろう。だからといって許される行為ではないけれど、そのことの重大さも十分理解し反省していた。そんな美奈の思いを、河合さんはどう受け止めるのだろうか…?
「許して欲しいとは言わない。殺したいのなら、それでも構わない。けれど謝らせて欲しい。本当にごめんなさいっ…。」
「…そんな風に思われているなんて、知らなかった。その言葉、私が生きていた時に、聞きたかった…。」
河合さんは静かな声でそう告げた。美奈の思いは、河井さんに伝わったようだ。
「もし来世で会うことが出来たなら。次は友達に…」
河井さんはそこで力つきたようだ。河井さんは私が転校してくる前からずっと長い間幽霊としていたことによって、長時間生きている人間と話すことは出来なかったのだろう。私は、彼女が幸せになることを願った。
「河井さんは、成仏したよ。きっと、思いが届いたから。」
私は美奈にそう告げた。
そのとき、美奈の目からは涙が溢れ出した。彼女を縛り付けていた糸が解けたように。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます