第3話 犯罪に巻き込まれそうな予感
彰人は、急に深刻な顔でうつむきながら語り始めた。
「俺たち、ホストってイメージ悪いだろ。そのイメージを利用し、私の男であるホストに手をだしたな。落とし前として金を出せなんて、おかしな言いがかりをつける奴が出没し始めたんだ。
ホストだから、警察には通報せず、泣き寝入りに終わるだろうなんてなめたことを考えてやがるんだ」
笑香は、深刻な空気を吹き飛ばすように、冗談交じりのダジャレを飛ばした。
「全く世の中、油断もスキもございません。スキを求めているなら、メイドを好きになって、時間の隙間をつくって来店してほしいです。きっとね。スキップしながらね。なーんちゃってさ」
彰人もすかさず、ダジャレに乗った。
「スキッとするダジャレだね。そうしたら、帰りにはすき焼きおごってくれる、それともマグロのすき身でもいいや。
でもカードをスキミングするような真似はダメだよ。なんちゃって。なあ笑香、ひょっとして女芸人でも、目指してるのか」
笑香は、笑顔で答えた。
「正解です。今のうちにサインもらっといた方がいいよ。もう来年はテレビでしか、私を見られないのだからさ、スター候補生というところかな」
「俺の知り合いで、素人参加番組のスタッフをしている奴がいて、面白い素人募集中なんだ。なんだったら、笑香のこと、推薦しておこうか? 笑香の電話番号教えていいかな」
笑香は、喜んで教えた。これが、夢のスタートラインになるかもしれない。
その日の報道番組に、さっそく私を襲った女二人のことが、報道された。
もちろん、他にも余罪はあるという。
私は、テレビ画面を見ているうちに、どアップになった二人組の女性のうちの一人に見覚えがあった。
たしか、一年前、おかんが経営するスナックの客として入って来て、さんざん騒いだあと、言いがかりをつけて食い逃げしようとした女だ。
あのときよりも、太っているが、おかんを悩ませた問題女であることには、間違いない。
ニュース報道されたあの問題女の名は‘野宮む杖’というらしく、週刊誌にも掲載さ
れてきた。
なんでも、野宮む杖は、年齢は二十三歳。
短大を卒業して半年ほどOLをしていたが、フリーターで金に困って犯行に及んだと本人は供述しているが、どうやらそれだけではなさそうである。
む杖は、男にダマされ、共謀して犯行に及んだが、男がむ杖の名を出したという。
しかしその当時、む杖は男からひどい暴力を受けていたという。さすがに顔を殴ることはなかったが、む杖の背中には青いあざが、くっきり見えるほどだった。
暴力男の被害者女ということで、警察も情状酌量したが、二度も続くと再犯ということで、逮捕された。
懲りない奴というスティグマを貼られ、一度悪に染まった悪党ということで、もう服役するしかないのだろう。
笑香は、いわゆる非行に走ったことはなかった。
軽いいじめを受けたことはあったが、それが原因で非行に走るなんてことは、考えもしなかった。恵まれない母子家庭が、悪の道の発端になるなんていうあまりにもワンパターンの偏見の目で見られたくなかった。
昨今は、両親がいて裕福な子が殺人を犯している。マスコミはよってたかって、こ
こぞとばかり取材するが、そのあと、当事者がどんな人生を歩むかは考えもしない。
実際、そういう子には、更生の道は開かれているのだろうか?
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