第10話 ある朝の決意

「あゆみさん、今度の日曜、深田のご子息との縁談がありますからね」


食事の際にお母様の言葉。


私は、無視した。


「あゆみさん!!」


勢いよく立ちあがり、私に軽く一発平手打ち。


「お断りします」


そう言うと、もう一発。


「何で、親の言う事をきかないの!?」


ヒステリックな声が響き渡る。


「嫌だからです」


私は、正直に答える。


その場の空気が凍りついた。


お母様は、顔を真っ赤にして


「これは、あなたの将来の安定の為に必要な…」


「私は、別に安定なんてほしくありません」


これまで逆らった事のない私からの反抗。


お母様は、完全に逆上している。


「この!この!!」


そう言って何発も平手打ちを私に打ちつける。


「お母様、止めていただけませんか?」


良一兄さんから、溜息混じりに言うと


「だって…あゆみさんが…」


「あゆみは、まだ子供です。そんな話なんて、成人してからでいいでしょう?」


良一兄さんは、私を見ようともしない。


この人にとっても、私は煩い蠅くらいにしか感じないのだろう。


「…ですが、この話は先方も乗り気で」


冷静を取り戻したお母様の言葉に、


「どうせ、江藤グループのバックアップが欲しい、どこかの家でしょう?そんなの世の中わんさかいるし、今、急がなくても」


良一兄さんは、ご飯を口に運びながら言う。


良一兄さんの言葉は、お母様の耳には届くらしい。


「まぁ…良一さんが言うなら…」


と、納得している。


「とにかく、あゆみさん、あのような方との交流は、止めてちょうだいね」


もっともらしい事を言う。


そうしないように監視をつけているんでしょう?



私は、お母様が憎い。


憎くてたまらない。


聖二兄さんを、失敗作だと言った。


聖二兄さんの死を…お金で換算した。


聖二兄さんを頭から否定していた。


そんな、お母様が憎い。



だから、二度とこの人の思い通りにはならない。



大学も…



就職も…



すべて



この人の思い通りにはなるものか…



そう誓った。


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