第5話 帰宅したら…

自宅の近くまで送ってもらった。


屋敷の前だと誰が見ているのか分らない。


案の定、屋敷の玄関にお母様がいた。


よかった…


遠くで降ろしてもらって。


「あゆみさん」


確実に怒りが含まれていた。


「何をしていたんですか?」


静かに、そして怒りを込めて、お母様は問いかける。


「少し寄り道をしていました」


私が答えると同時に


【パシーン!!】


と乾いた音が響く。


打たれた頬が痛い。


「何をしているの?私は言いましたよね?勉強以外にあなたに必要なモノはないっ

て。まさか…あなた、悪い人間とでも付き合っているの?だったら、付き合うのはやめなさい。あなたの将来に傷がついたらどうするの?」


一気に、まくしたてる。


私は何も答えない。


「あゆみさん!!」


「私は、別に悪い人間と付き合っている訳じゃありませんから」


それは…本当。


あの人…柴田先輩は悪い人じゃない。


それは、分かる。


お母様は息をつき


「ほら、ごらんなさい。誰かに誘われて、どこかに行っていたのね?クラスと名前を言いなさい」


お母様の言葉に眉を顰める。


「何をする気ですか?」


「その方のご両親にでも注意するんですよ。『うちの娘をたぶらかさないでください』って」


そう言ってから、


「さ、言いなさい」


そう私に詰め寄る。


「答える義務はありません」


そう答えてから、私はお母様の横をすり抜けた。


「あゆみさん!!あなたは騙されているのですよ!!その方達の目的は江藤家の財産なんですからね!!あなたは騙されているのよ!!」


お母様の叫びも私には届かない。


どうして、お母様に、そこまで言われないとならないのだろう?


あの人は、あの人は…悪い人じゃない。


江藤家の財産とか、そういうのが目的じゃない。


それは分かる。


何となくだけど


分かるの。


この人は、聖二兄さんと同じだって。


聖二兄さんと同じ空気を持っている人だって。


でも…もしかしたら…


お母様の言葉も、引っかかる。


どうして、あの人は、私に声をかけたんだろう?


私を何度もナンパしてくるんだろう。


どうしても分からなかった。




その理由を聞いた時…




私、すごくショックだった…




でも、



でもね、



聖二兄さんが…



私達を会わせてくれたんだって思ったんだよ



ありがとう



聖二兄さん


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