第19話 悪魔の囁きを持っているのは

「すごい」

 ツカサは惚れ込むようにそう呟いた。

 浜から出た船は引き絞られた矢のように入江を切谷村の船がある方向へと突っ切っていく。今までに何度も船の出港は見てきたが、これほどまでに速く、これほどまでに力強い姿は見たことがなかった。船員の意思が体言されたかのような気迫で船は水面を滑走する。大きさに大差のない切谷村の船と何が違うのかと言えば、ひとえに風の捉え方だった。膨らんだ帆は乱れることなく鳥の翼のような曲線を描き風を切る。一葉の風を切る毎にその速度は増していく。一糸乱れぬ速度と角度で、船は縦に列をなした。

 相対速度を見て、切谷村の船は前進を半ば諦め、扇状に広がって陣形を整え始めた。

 しかし潮村の船は陣形を組もうとしない。船の並びに厚みを持たせないまま、切谷村の一団へと突き進む。

 先頭の船が桐谷村の扇の先端に触れた。

 瞬間、無数の風を切る音が崖の上にいるツカサにまで届いた。扇の両翼から矢が村の船に向かって雨のように降り注ぐ。ツカサは予想される次の惨状に眉をひそめるが、それは現実とはならなかった。先頭の船は降りかかってくる矢を床から取り出した木板で防ぐ。厚みはさほどあるものではないが、船上の男衆は誰一人射られていない。それもそのはず、的が小さいのだ。切谷村の船とは違い、こちらの村の船には一隻に三人しか乗っていない。船の縁に身を寄せればほぼ姿が隠れ、かろうじて覗いている一部には木板が蓋をしている。よほど近距離で射抜かない限り殺しえない状況である。

先頭の一隻が扇を突っ切り囲いを抜けた。そしてその後を追うように二隻目、三隻目と扇を突き抜ける。ついには浜から出航した全ての船が切谷村の囲いを抜けた。

「・・・?」

 しかし、見ていたツカサにとってはその状況は異様でしかない。速力に勝る相手に的を絞らせないように少人数で接近するのは理解できた。あの状態ならば早々傷を受けることはない。しかし、守りに徹し過ぎていて何一つ相手に傷を負わせていない。矢の一本すら射っていない。ただ接近し、すり抜けただけである。

 後ろを取られた形になる切谷村だったが、慌てた様子は見せない。これは船での戦いであって騎馬ではない。矢を打ち合う限りに置いて、進行方向の先も後も大差はなかった。そして何より桐谷村からすれば、わざわざ敵が目的とする村までの道を明けてくれたことになる。速力で劣る切谷村だが、船に乗り込んでいる人員は倍近い差がある。力押しで通せない無理ではなかった。

 ツカサの目からは潮村の船が舵取りを誤ったようにしか見えなかった。

 案の定、桐谷村の一団は突き抜けていった船には目もくれず、再度入江の中へと侵攻を始める。

 村の船は急旋回などできようもなく、矢が届かない距離まで大きく迂回をする羽目になった。桐谷村の船から馬鹿にしたような笑いが響く。

 慌ててツカサは崖を下り始める。村の船が旋回を終えるには時間がかかる。誰かが時間を稼がなきゃならない。崖の上からの矢では、殺すことは出来ても足止めにはならない。しかし水面近くまで降りて、お互いに見える距離で矢を射れば、何隻かは自分へと注意を向けられるかもしれない。そんな自殺行為にも近い決断をツカサは自分に下した。

「誰かがやらなきゃ」

 海神のときと同じように心が冷えていくのを感じながら、ツカサは崖を降りる。自分にはこういう生き方しか望めないのだと覚悟しながら。

 足元に波の白さが見えるほどの位置まで降りて、ツカサは切谷村の船を見据える。切谷村の一団は既に入江の半ばまで差し掛かっていた。

先頭の船に狙いを絞る。どうせなら松明も持ってくればよかった。そうすればより注意を引けたのに、とツカサはずれた部分で後悔をした。弓を引き、一人一人の顔を視認できるほどの距離まで近づいた船に狙いをつけた。

 けれど、矢が手元から離れる前に、ツカサは別のものに目を奪われてしまった。

 黒い、深い、怖気立つような影がツカサの正面を横切った。水面ではなく、水中を。

 ツカサの瞳が大きく開く。ありえないものを目にしたように、瞳の奥には否定の色と拒絶の色がない交ぜになっていた。

 横切った影はそのまま深さを変えず、真っ直ぐに入江を横断し始める。進行方向には切谷村の船があった。まだ切谷村の船からはあの影が見えていない。それに気付いたとき、ツカサは自分が崖を降りてきた理由を思い出した。

 黒い影に身をこわばらせながらも、再度弓に矢を番えて引いた。狙いも曖昧なまま、一本の矢が風切音を鳴らしならが桐谷村の船に近づく。

「ずれた」

 船に落ちる前にツカサが呟く。射った瞬間に気付いていたことだった。

 矢は誰にも当たらなかった。ただかがり火の一つを揺らし、燃えていた木の破片が水面へと落ちたのみである。炎は光の糸を引きながら海へと吸い込まれた。

 水に触れた瞬間に消えた光ではあったが、しかし海に飲み込まれるその刹那、歪なものを映し出していた。何もせずとも、あと少し立てば切谷村の奴らも気付いていただろう。ツカサの矢はそれを早めただけである。落ちたかがり火の一部が映し出したのは、先ほどツカサの身を竦ませた黒い影だった。それが真っ直ぐ船に近づく様子がツカサには見えた。

「うわあああああ」

 最初に声を上げたのは舵取りの男だった。進む先を見据えようと常に水面に目を凝らしていたその男は、かがり火の明かりが一瞬映し出した姿に張り裂けんばかりの悲鳴を上げた。

 男の声に驚いた同舟の者達が男を、そして水面を見る。しかし彼らが目をやったときには既に黒い影は別の船の正面へと移動していた。いぶかしむ男達を尻目に、別の船からまたもや悲鳴が上がった。横一列に並ぶ切谷村の船から、順々に悲鳴が上がり続ける。多くは舵取り役が、他にも幾人かが声を上げた。

「何があった、何を見た」

 最初に声を上げた舵取りに弓を構えたまま大柄な男が詰問する。見れば舵取りは呆然とし震えているだけである。

「舵が逸れてる、戻せ!」

 波に流されて一直線に進むはずだった進路が入り江の中心へと大きく逸れていた。他の船も同様に、先ほどまでの整然とした船の並びが崩れている。

「嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ」

 ついに舵取りは膝を抱えて震え始めた。

「俺はいねえって聞いたんだ。だからこんなおっかねえ海にも出てきたんだ、なのにーー。」

 ぶつぶつと呟く言葉に切谷村の男たちが気味の悪さを感じ始めた頃、まるで見計らったかのようにそれは堂々と姿を現した。

 それを見て驚いたのは切谷村の男達だけではない、ツカサも同様に、むしろそれ以上の驚愕を持ってそれを見据えた。

 夜の水面を割って、大きな背びれが姿を現す。生々しい傷跡を帯び、地獄の窯が開いたような悪臭を湛えながら、それは姿を現した。入江の中心をその背びれで水を切りながら進む。一つの船に接近するたび、その船からはおよそ戦場に向かう男の声とは思えないような悲鳴が上がった。

 ありえない、とツカサは呟いた。

 巨大な鮫が、海神が姿を現した。

 篝火にありありと映し出されたその姿を見て、切谷村の男たちが乗る船はいよいよもって混乱の極みに達した。海神が動くたびに船は無理やりにでも海神から離れようとする。既に帆は役目を果たさず、速度は死に、船は波に揺られるだけとなった。切谷村の者達は櫂を使って必死に移動しようとするも、慣れない操舵方法と初めての海域に上手くいかず四苦八苦している。

 誰一人として弓を構えている者はいなかった。

 海神は何度も繰り返し切谷村の船の前を左右に移動した。その動きは男達の恐怖を楽しんでいるかのようだった。

 動きが絶え、武器も放棄した船が入江の真ん中に散逸しているその状況を見過ごすはずもなく、矢じりのように一直線に駆け抜けていった潮村の船は、ツカサが気付いたときには切谷村の船を取り囲むように扇状になって接近していた。切谷村の男達は目の前の恐怖に目を奪われるばかりで、差し迫った状況に気付きもしない。

 弓を引き絞る音がツカサにも聞こえ、一息の間をおいて、数え切れないほどの矢が切谷村の船へと降り注ぐ。

 この時点で勝敗は明確に決まった。足の止まった船と風下を押さえた船、どちらが勝つかなど船の操舵に詳しくないツカサの目にも明らかだった。

切谷村の男達は二つの恐怖に脅かされていた。水面に見える言いようのない恐怖と、実際に身を穿つ矢の恐怖。曲がりなりにも他の村に攻め込もうという者達である、どちらか一方であればあるは耐えられたかもしれない。続けられたかもしれない。しかし、その両方に挟まれては保つものも保てなかった。

 総崩れという言葉を体言しているかのように、瓦解する一団がツカサの前には繰り広げられていた。

 いくつもの矢が降る中でも海神は繰り返し水面を荒立てている。

 しかし不思議と、ツカサはその影に恐怖を抱かなかった。

 実際に対峙したあの日の凍りつくような怖さは今も生々しく思い出せる。けれどこの影にはその怖さがない。目に見えるのは海神そのものの姿なのに、これは違うとツカサの心は言っていた。

「――!」

 海神に奪われていたツカサの意識は切谷村の船から出た一際大きい怒号に引き戻される。

 対処しきれない矢を受けた切谷村の船はそれぞれに引き返し始めている。

 ツカサには何がなにやらわからない状況ではあるけれど、これでひとまず潮村は助かった。後は夜が明けた頃を見計らい村長が使者を送って和睦の手はずを整える。切谷村には少なくない犠牲が出たが、それは攻めてきた側の落ち度である。しぶしぶでも和睦を呑むだろうというのが潮村の大人達の見立てであった。

 このまま事が進めば、そうなるはずだった。

 そうならなかったのは、今まさに切谷村の者達が敗走しようとする場に、潮村の男衆が勝鬨を上げんとするその場に、ツカサがいたからである。

 切谷村の者達が描いた画を潮村の大人達が打ち破った。そして潮村が描いた画はツカサが破り捨てることとなる。一人の犠牲も出さずに収めようとしたその画を。

 切谷村の敗走が始まりつつある中、ツカサは先ほど見た海神の正体を掴もうと海を見た。暗い水面に懸命に目を凝らす。彼の背びれはどこにあるかと目を凝らしていると、べつの物を見つけた。その実、物ではなく人だったが。仰向けに水面に浮かんでいる男だった。ツカサは潮村の矢で射抜かれた切谷村の一人だろうかと思ったが、違った。見覚えのあるその顔は、崖の上で見張り役をしていたあの青年であった。

「大丈夫ですか?」

 声をかけるが返事はない。岩肌から身を乗り出して、弓の先で青年の服を引っ掛けた。慎重に手元に引き寄せ、水中から岩場へと引き上げる。青年は薄く目を開けて小さく、しかし確かに息をしていた。肩には崖から落ちる前に受けた矢が刺さっており、少しずつではあるが血が流れ続けていた。

「痛いけど我慢してください

 ツカサは青年の腕を固定し、一息に矢を抜き取った。

「ぐっ、むぅぅ」

「がまん、がまん」

 歯を食いしばる青年に声をかけながら、服のすそを破き、傷口にあてがって止血を施す。幸い矢傷からはそれほど血が出ていなかった。青年が消耗している部分の大半は落下の衝撃によるものであったのだ。命は繋ぎとめられる、そう判断し、ツカサは安堵した。

 すぐ近くには潮村の船がいる。声をかけてこの青年を浜まで運んでもらった方がよさそうだと考え、ツカサは顔を上げた。

 そして見つけた。

 船上に人がいた。それ自体は当然である。切谷村の者達は全滅したわけではないし、潮村は誰も死んでいない。切谷村にしても、最初に乗っていた人数から比べても五分の一も減っていない。戦える者の人数という意味では限りなく零に近いが、しかし人はいる。生きている。

 ツカサもそれはわかっている。全滅したわけではないし、潮村の大人達がそれを目的として戦っているわけではないことも気付いている。船上の人物に注目したのは別の理由があったからだ。

見た顔があったのだ。敗走を始め、命からがら逃げようとする切谷村の連中の中に見覚えのある顔があった。懸命に船を漕ぎ、時折背後の海神の影に目をやる男たちの中に。忘れようもない顔があった。

 瞬間、血が沸きあがるのを感じた。ツカサの中から多くの思考がそぎ落とされ、不純物を抜き去る。視野が普段と比べれば格段に狭くなったことにツカサは気付かない。

 見つけたのだ。

あの日、あの時、シイナを傷つけた男の顔を見つけた。

四人いた男達のうちの一人。殺しきれなかった三人のうちの一人。顔に布を巻いているあの男。

「私からシイナを奪った奴らの一人」

 ツカサの口からこぼれた言葉は呪詛にも似た暗さを宿していた。体中が熱くなり、逆に体をめぐる血液の冷たさを感じながら、ツカサは口を歪ませた。笑っているということに気付かない。気付かないまま笑っている。笑顔ではなく、牙を剥くように笑う。

 相手に気付き、高揚し、理解して、それだけの手順を踏んでツカサはようやく手に持つ矢を構えた。普段の狩から考えれば圧倒的に遅いくらいの挙動である。事実、狙った獲物は届かない位置に消えた。離れてしまったわけではなく、別の船が目的の船を隠すように入り込んできたためだ。

 心の中で舌打ちをしてツカサは矢を射る。それだけで一人を殺傷したが、気にも留めなかった。

 切谷村の逃げる勢いは目を見張るものがあり、少し間を外されただけで大きく距離が開いた。ツカサの弓力を持ってすれば決して射れない距離ではなかったものの、ツカサは弓を構えようとはしなかった。

 これでは足りない、と思ったのだ。復讐に燃える少女にとって、離れた位置にある的を狙うだけでは物足りなかった。近づき、恐怖を抱く目を見て、その上で終わらせる。狂気にも似た炎がツカサの胸の内に湧き上がってきていた。

 手段を探し辺りを見回す。潮村の船は去っていく桐谷村の船を追おうとはしていなかった。何かの間違いで切谷村の連中が戻ってきたときのために、敗走する背中を見てはいるが、しかし船自体は岸壁に寄せて動いていない。

 ツカサはそれを使うことにした。

 岩場に刀子の柄を打ち付けて音を鳴らす。こんこんと響く高い音に数人の男衆が船の上からツカサに気付いた。

「お前、ツカサか」

 気付いた男集の中で最も体格の良い一人が訝しげに声をかける。

「こんばんは、トキシマさん」

 ツカサからトキシマと呼ばれた男は、潮村にある漁師団の筆頭である。普段は海の荒波に笑顔で乗り込んでいく屈強な男も、このときばかりは顔が引きつっていた。今や村の厄病とも救い手とも言われる少女が不意に目の前に現れたからである。

 一寸身を引いたことを恥じ、トキシマはツカサに食って掛かる。

「何故ここにいる。女子供は家にいなきゃいけねえだろうが」

「村の危機と聞いてはいても立ってもいられませんでした。ところで、どうして皆さんあれを追わないのですか」

 指差す先は切谷村の船。答えを知っていながら、ツカサは問う。

「追う必要はねえだろ。しこたま射抜いたし、生き残りにも戦意はねえ。万に一つも危害を加えられることがねえんなら、俺らの役割は終了だ。くだらねえこと考えるなよ」

 トキシマはじろりとツカサを睨む。

 その視線を逸らすように、ツカサは少し体を横に引き、自身の背後を指差した。

「そんな心構えだから、皆大切なものを亡くすのよ」

「なんだと?」

「この人みたいに、また誰かを傷つけられてもいいの?」

 トキシマはようやくツカサの後ろに横たわる青年に気付いた。

「そいつはーー」

「トクサ!」

 トキシマの声を遮って、近くにいた船から別の声が飛んだ。男が一人、船から岩場へと飛び移る。

「トクサーー大丈夫か、トクサ。おい、おい!」

「落ち着いてください。大丈夫です、息はあります」

 ツカサは男の顔がトクサと呼ばれた青年に良く似ていることに気付いた。丁度、トクサに年を重ねさせたらこうなるであろうという顔。男がトクサに似ているのではなく、トクサがこの男に似て産まれたのだ。

「ツカサ。一体何があった」

「切谷村の人たちですよ。船が東端を回る前に森から少数の斥候が来て、見張り台を襲ったんです。トクサさんは敵を仕留めましたが、その際に見張り台から落ちました。たまたま私は近くにいたのでそれに気付き、海から引き上げた次第です」

 嘘は言っていない。ただ、ツカサが岩場に下りてきたのは別の理由であるし、トクサを見つけて引き上げたのも偶然でしかない。使える状況を使う。

「そうか、お前がトクサを助けてくれたのか。感謝する」

 トクサの傷を診ながら、トクサの父親はツカサに礼を言う。

「村の一員として当然です。それよりも、今は逃げる奴らを叩かないと」

「待て、だからその必要はないと言ってんだろうが」

 船から下りてきたトキシマが割って入る。

「始まる前に決めた通りにやる。もう俺らの役目は終わったんだ」

「必要がない?終わった?本気で言ってるのでしょうか。我欲で攻めてきた切谷村の連中が一時身を引いたからといって、それで全てが終わったと?」

「こっから先は村の長が決めることだ。切谷村の長に渡りをつけて事を収める。そしたら今後こんなことは起こらねえ」

「今日、起きたじゃないですか。起こるはずのないことが!切谷村とは友好的な関係を築いていたのに、少なくとも、こちらはそう考えていたはずなのに。そう考えていたからこそ、だから今日、起きたんじゃないですか?」

「それは、切谷村のやつらが俺らのことを舐めてたからだ。今日のでわかっただろう、あいつらも。俺らに争いを仕掛けることがどれだけ無意味か」

「だから、それが足りないと言っているのよ!」

 今にも飛び掛るように、ツカサは言葉に勢いを乗せる。

「もっと知らしめなければ。追って追って、今日の恐怖をあいつらに刷り込ませなければ、また繰り返しになる。またーー」

 ツカサは傍に横たわるトクサを指差す。

「彼のような犠牲者が出る」

 ツカサの言葉にトキシマは首を振る。それは違うと、駄目だとトキシマの目は語っている。

 その場にいるたのがツカサとトキシマだけならばここで議論は終わっていた。しかし二人の言い合いは他の男衆にも聞こえていた。トキシマから目線を切り、その後ろへと声をかける。

「皆さんはどうお考えかしら」

「お前・・・。」

 トキシマは感じた。向き合うツカサとは別方向、背後から立ち上るような熱量を。それはツカサから発せられているのと同質のもの。トクサの父からも、溢れんばかりに立ち上るもの。豪放でいて懸命さも併せ持つトキシマは一抹の不安を抱く。

「やるぞ」

 背後から一声登った。もう一度火蓋が切って落とされる音だった。

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