第4話
第1章
→だからってお友達になれるわけでもあるまいし。③
それから暫くして彼女は文字通り1人になった。同性の女子から話しかけられることも下心ありきで近づく男子も今となってはもういない。一時男子の間で朝比奈チャレンジ(ルールはよく知らないが、多分ジャンケンで負けた人が好きでもない女子に偽告白しに行くとかその類のゲームらしい)なるものが流行ったくらいで以降はそれさえナリを潜めている。時折「三年の先輩が告白してこっぴどく振られた」とか「前の学校で問題を起こしたらしい」などの尾ひれの付いた噂話が流れるくらいだ。そのどれもが「朝比奈美夜ならありえそう」なものばかりだった為、彼女はより一層クラスから浮彫な存在となった訳である。
とは言えビジュアル的には冗談みたいな美少女であることには変わりない。教室に入って着席するまでの一動作や、頬杖をついてぼうっと外を眺めるだけの仕草に周囲の視線はこれでもかと集められていた。何をするにも絵になると言えば聞こえは良いが周りからしてみれば、憧れよりかは畏怖の意味合いが強かったのだろう。「目を離せば何が起こるか分からない」的な?知らんけど。そういう含みで捉えるならまさしく彼女はこのクラスにとっての爆弾だった。
一方そんな色々な意味で規格外な彼女…のお隣さんである俺は、相も変わらず代わり映えのしない平坦な日々を送っていた。顔も平均、頭の出来も平均。小中からの友達もこの学校にはいない。愛想はあるけど特段話が面白い訳でもない、有り体に言えば口下手な陰キャ。そのような自己評価と他者評価が一致した結果見事高校に入学したときから『害のないぼっち』のスタイルを貫くことができましたとさ。ぱちぱち~。………自虐キッッツ。
しかし別段「友達いないと寂しくて〇ぬ」みたいなタイプではない自覚はあるので、劣等感に苛まれたりしないのは救いではある気がする。ぶっちゃけ友人が欲しいと思った時期もあったが、ここまで来ると「今更友達できてもなあ…。もう高校生活半分終わったし…。それにできたらできたで多分めんどくさいだろうしなあ…」みたいな帰結に至るので煌びやかな青春という淡い望みは大学生活に賭けることにした次第である。何故か言語化するとメンタルダメージが無駄に入ってくるので俺の話についてはここらで一旦やめておくことにしよう。
さて。そんなこんなで時は流れこのまま全ては卒業まで平行線―――で終わる筈だった。少なくとも当時の俺はそう思っていた筈である。だがこれはあくまで『物語』。盛り上がりには欠けるとしても何の変哲もないまま終わりを迎える、なんてことは許される筈もない。
だからもう少しだけこの与太話に付き合ってくれれば幸いだ。
ことの始まりは、7月に入ってすぐだった。
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