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気づいたらどんどんと自分の視界が薄れてくる。1度目を閉じると涙が出てきた。


『グスッ…グスッ…』


涙ってものは1度流れると止まらない。だから私はとことん泣いた。なんで自分が泣いてるかは分からない。これはエレーヌの心が泣いているのか、それとも琴弓が泣いているのか。


「大丈夫だ。俺がいる。安心して泣け。俺はお前を裏切ることは絶対にないから。」


お兄様は私の頭を撫でながらそう語りかけてくれる。私はぎゅっとお兄様に抱きついた。服を濡らしてしまうのは見逃して!


『大好きですお兄様。』

「あぁ俺も大好きだ。」


お父様とお母様はそんな私たちを微笑ましそうに見ていた。


「羨ましい限りだなアンベール。」

「そうねぇ。私達もこれからエレーヌに好きになって貰えるように頑張らなくちゃ!」


この2人の言葉は泣いている私に届くことは無かった。




┉ おまけ ┉


それからと言うもの、2人は時間があればエレーヌと話をするようになった。それに少しでもエレーヌの好きなものを知りたいからと町に出てはエレーヌに好きなものを買っていった。そして、


『もうお父様もお母様も好きになりましたからこれ以上おやめ下さい!!!』



というエレーヌの叫び声が響くことになるのは言うまでもないだろう。

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