第3話 夏が燻る

 夏が燻る

 夏がくすぶる

 私たちはくすぶっている


 なかなか火がつかない煙ばっかり。バーベキューなんて数えるほどしかしないから。いつか燻製作ってみたい、段ボールキットも売っているらしい。


 やりたいことがいっぱいある。夏じゃないとできないことも多い。夏の風物詩はキラキラしている。太陽のせい、夜も明るいせい。


 短くて激しいのにいつまでも心に残る。あるいはくすぶったまま。囚われたまま、エンドレスで夏を繰り返したりするんだろう。陽炎もたちが悪い。ゆらゆらする。まるでアスファルトにじわじわ焼かれている錯覚を起こす。実際そうかもしれない。料理されている。


 くすくす

 ぐずぐず

 くずくず


 耳の中に残る誰かの楽しそうな笑い声

 そういったものに翻弄され続けている

 クズぶる


 夏は暑いけど雨も多い。もくもくの積乱雲、入道雲。絶対あの雲、異世界がある。子どものころから夢にみた世界。雨や雷の竜を抜けた先にきっとある。


 豪雨は唐突にやってきてはなにもなかったかのようにからっと晴れ渡る。まるでそこだけ異世界のように、雨で見えない、煙る世界、見えづらい。線香がつかない、花火がつかない、湿気っちゃうのはこの湿度。暑いのは太陽のせいだけじゃない。


 夏が燻るのは私のせい

 私の曲がった見方のせい



 火は重たいけど田んぼがなくなって点々黒い


 たいまつが重たい。火がついているから余計だ。慎重に持っていたのに、荒れた田んぼが焼けてなくなった。点々と黒い煙が僕を責める。

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