第4話 白浜パンダの歴史
「まずはパンダの歴史について」
パソコン室でパワーポイントを使いながら『パンダの歴史』というタイトルで説明を始めた。いや、いつ作ったんだこれ。パンダ愛がすごすぎる。
「これ?いつ作ったの?」
「パンダ同好会を立ち上げてから。こういうこともあろうかと」
「すごい……」
「じゃあ、アドベンチャーワールドの最初のパンダについて説明するね」
古そうな写真と共に2頭のパンダが映し出された。
「この子はオスの
次の2頭も古ぼけた写真だった。
「1994年、今、アドベンチャーワールドにいるパンダの永明さん。永明さんは2歳でアドベンチャーワールドに来て、ずっと日本にいる。永明さんは17頭のお父さんで本番の中国を除けば世界一の繁殖力のパンダ。それに飼育下で自然交配に成功した最高齢パンダでもう伝説を持ちまくるパンダなんだ」
「早口すぎる」
「おっと……。永明さんはそれだけの魅力じゃなくて優しくてメスからモテモテなんだ。で、この写真のパンダはメスの
次の写真は新しくなっていて、梅梅らしきパンダともう1頭の子パンダがいた。
「梅梅、実は子供を身籠ったまま来日していて、今写真に写っているのは今、アドベンチャーワールドにいるベテランママ、良浜なんだよ」
身籠ったまま来日ってありえるの、ちゃんと検査してなかったんだろうか。まあ良浜は幸せそうだし、良いのか。
「で、梅梅と永明さんは子供を作り、日本で初めて自然交配に成功……!で、生まれたのが、オスの
雄浜の写真が写っていた。ここからの写真は大分新しい。
「次はまさかのオスの双子パンダ!
映画のタイトルとそのポスターが映し出された。
「次はオスの
うん、面白いは面白いけど、なんだか長く感じる。どれだけ続くんだろうか。
「で、次も双子とメスの
「相手は?」
「永明さん」
「え、良浜って梅梅の子供じゃないの?」
「そうだよ。永明は良浜と子孫を残すんだよ。良浜は梅梅とは中国にいる
まあ動物だからその辺はそう、なのか。人間ならかなり歳の差でやばいけど……。
「良浜の初の出産は双子、最初はなかなか育児出来なかった良浜だけど飼育員のサポートで立派なお母さんになれたんだ。名前は梅梅と永明からとってメスが
良浜の初の出産か……アドベンチャーワールドには色々な歴史があったんだ。
「ただ、残念なことがあったんだ」
「残念なこと?」
「2008年、良浜が子供を産んだ年の10月15日に梅梅は病気で亡くなったんだ」
「……」
「でもその分、良浜と双子ちゃんはたくましく生きたんだよ!」
良いことだけじゃないんだな……パンダって。
「それからと言うもの、良浜は順調に繁殖を続けるんだ。次に生まれたのがオスの
あ、確かにとんがってる。可愛い。
「次はメスの
そういうのが多いな。これだけ出産を経験しても助からないんだな……。難しいんだ、出産って言うのは。
「次からは今、アドベンチャーワールドにいるパンダのことだよ。メスの桜浜とメスの桃浜。桜浜はマイペースなお姉さんで桃浜はおてんばなパンダ。双子なのに色々違っていて、桜浜はなんでも食べるのに桃浜は竹を選り好みするグルメなパンダ」
今もいるからか、桜浜と桃浜はたくさんの写真が映し出されていた。拘りのベストショットと言うやつか。しかし、双子でも必ずしも似てるとは限らないんだなぁ。
「パンダラブツアーって言うパンダに餌やり体験が出来るツアーがあるんだけど、桃浜は餌が早く欲しいと竹を振ってアピールする可愛いところもあるんだ」
そんなツアーがあるんだ。すごいなアドベンチャーワールド……。
「次はメスの結浜。アドベンチャーワールドでは1番大きく生まれたパンダで、お姉さんの陽浜と同じ頭のとんがりがチャームポイント。メスにしては甘えん坊なパンダなんだよ」
結浜のあのとんがりや岩で休んでる姿は特徴的だったな……。
「結浜は超グルメ、選り好みしすぎて体調を崩すこともある、困ったパンダなんだ。けどそこが可愛い!」
グルメだなんだ、パンダには色々あるんだ。竹なんて全然変わんないように思えるけど。
「そして次がメスの彩浜、彩浜はアドベンチャーワールドで1番小さく生まれたパンダで体重はたったの75gしかなかった。平均は150gなのに。しかも双子だったんだけど、もう1頭は死産。彩浜も絶望的に思えた、けど、飼育員も良浜も彩浜も諦めなかった。頑張って生きて見事成長!今では社長のあだ名を持つ貫禄ある姿になったよ」
これだ、私が心惹かれた彩浜。社長のように偉そうに座りながら竹を食べる。可愛いだけじゃない、何か貫禄を感じた、このパンダ。
「そして次は今のアイドル、赤ちゃんパンダ、メスの楓浜。楓浜は最初はオスって言われたんだけど後から修正されたんだ。パンダは性別の判定が難しいからね」
赤ちゃんパンダが映し出される。可愛い、天使だ。
「この子は元気で歩き始めた頃はぴょんぴょん飛び跳ねながら歩いてたんだよ」
「可愛い」
「以上がアドベンチャーワールドのパンダでした」
面白かったが、何というか、長い。これはお客さん飽きるだろう。
「どうどう?感想は」
「……長い」
「え?」
「楽しかったけど、長かった」
「えー……これでもかなりコンパクトにしたんだよ?」
「今いるパンダだけで良いんじゃないかな?」
「それじゃあ歴史じゃないよ」
「他のパンダは冊子にするとかで短く出来ると思う」
「なるほど、ありがとう、黒川さん」
少しは役に立てたかな?
「よし、今日から文化祭の準備だ!私は新しくパワポと印刷をするから、黒川さんはパンダを撮って来て」
「え?ええ!む、無理だよ」
「大丈夫大丈夫。たくさん取れば大丈夫!ね」
推しの弱い私はパンダの写真撮影を頼まれてしまったのだった。
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