第2話 パンダ同好会入部
「パンダ同好会って、い、いきなり言われても」
制服なのは部活の一環だからなのか。一眼レフも部活の部品なんだろうか。同好会ということは人数が足りていないんだろうか。というかパンダ同好会とか何をするんだ。
「ああ、ごめんね。パンダ同好会って言うのはパンダの素晴らしさを伝える同好会なんだ」
「パンダの素晴らしさ……」
「そう!世界でもトップクラスのパンダ繁殖を誇るアドベンチャーワールドは、そこに至るまでには飼育員さんとパンダたちの涙なしではいられない努力があって……」
ああ、これは長い奴だと思った。これはパンダオタク、パンダマニアだ。コミュ力あるオタクは話し出すと止まらない。このままだとずっと話し続けるだろう。
「あ、あの、ま、まだ入部は……」
「まだ同好会には私しかいないの!誰か入ってくれないと廃部にされちゃう!」
1人だけ!?さっきの部長ってどういうことだ。1人で部長を名乗っていたのか。というか同好会は部ではないから部活とは呼ばない気もする……。
「お願い!人助けだと思って。幽霊部員で良い。ほら帰宅部よりも部活に入っていた方が受験や就職で有利でしょ?お願いします!」
パンダ同好会がどこに受験や就職に有利なんだろうか。動物園に就職する以外に有利には思えないが。
入ったところで2人しかいないのに幽霊部員が通用するだろうか。クラスメイトだし、気まづいったらありゃしないだろう。
「お願い!」
しかし私はコミュ障であるが故に押しに弱い。
「わ、わかった」
「やったぁ!ありがとう、黒川さん」
しかし入って見たは良いが何をするんだ?まさか写真を撮るだけ?
「カメラならたくさんあるから、部室に着いたら見ていって」
「あ、あの…ぐ、具体的にどうすれば?」
「ああ、活動内容ね。基本は可愛いパンダたちの写真を撮って発表したりするの!そしてパンダの可愛さ、すごさの魅力を伝えるの」
「は、はぁ……」
写真を撮るだけ?まあ飼育員じゃないからそれだけしか出来ないか。
「あ、今、写真を撮るだけとか思ったでしょう」
「え」
「可愛く面白く撮るにはコツがいるの!あと運!SNSを見てよ、可愛くて面白いのがたくさん。私たちはああいうのと戦わないといけないの」
「ほら
白井さんはカメラを向けていた早い。
「桜浜、可愛い。…あ、桜浜って言うのは双子パンダのお姉さん、で、妹は
お、おうひん?とうひん?ひん?彩浜もひんがついてたな。みんなひんが付くのか?なんか紛らわしいな。
「分かる?」
「う、うーん?」
「よし、じゃあパンダを一から勉強しようか。まずは桜浜と桃浜。2014年に生まれた双子のパンダ。桜浜はおっとりしていて今はバックヤードにいる桃浜はやんちゃなんだ」
「ふーん」
「で、あだ名が社長の彩浜は2018年に生まれた子なんだけど、パンダは基本150gで生まれるのに、彩浜は75gしかない、超未熟児だったんだ。自力で母乳すら飲めなかった」
「え?」
あんな、偉そうに笹を食べている子が?
「でも、彩浜も母親の
「そっか……」
すごいドラマがあるんだな……。
「次はブリーディングセンターで
「ゆ、ゆいひん…とえ、えいえん?」
今までひんだったのに急になんか違う名前が……それに、さん?さん付け?
「永明だよ!とにかく行こう!」
ブリーディングセンターはかなり歩いた場所にあった。
「本当は2020年のいい夫婦の日、11月22日に生まれた
なんかシャンシャンみたくなってる……。やっぱり赤ちゃんパンダは人気なんだろうか。しかし、すごい人集りだ。
「あの岩のところでくつろいでいるのが、2016年に生まれた結浜!頭のとんがりがチャームポイントだよ」
とんがり……確かにさっき見た彩浜や桜浜と違って頭のてっぺんがとんがっている。
とても可愛い。岩にまるで人間がくつろぐ姿と似ている。『社長』と呼ばれる彩浜もそうだが、パンダって人間っぽくて面白い。シャンシャンをもっと見ておけば良かったと後悔する。
「次は永明さんだよ」
「あ、あの、永明さんって……」
「永明さんはすごいんだよぉ1992年に生まれて、2歳でアドベンチャーワールドに来たんだけど、永明さんは17頭のパンダを子に持つビックダディーで、人間で言うと80歳近いのにこの貫禄!しかも飼育下で自然交配に成功した世界最高齢のパンダとしてファンからは敬意を評して永明さんと言われてるんだよ」
何だ、なんかパンダなのにスケールが大きい。17頭?世界最高齢?なんか、アドベンチャーワールドのパンダってすごいんだな。
「ほら永明さん」
「永明さん……」
「永明さんは竹の選り好みが激しくてグルメキングって呼ばれてるんだ」
「グルメキング……!」
「他に結浜と桃浜も選り好みが激しくて、双子の姉の桜浜は選り好みしないの。不思議でしょ?あと良浜も選り好みしないんだ」
「へぇ……」
「パンダの魅力、分かった?」
「す、少しは……」
なんか色々喋られて理解はしてないけど……。
「よし、部室だね!月曜日に部室を案内してあげる!」
「部室…か…」
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