5 減給断固拒否計画
――魔法とは何か、それは人間の体内に埋め込まれた
西暦2666年現在、魔法を扱えない者はほとんどいないが、特に扱いに長けた者達のことをこう呼んだ。
――【
――此処はIMRO第3試験棟2F会議室。
そこにはティエラを始めとする各部門の班長12名が集められていた。
途中何度も休憩を挟み、特に誰が案を出すでもなく完全に停滞している室内は、既に会議開始から凡そ8時間が経過していた。
この会議は前回行った
「あ~無駄無駄~だーれもまともに意見なんか出さないじゃな~い」
「そんなこと言うならティエラが出せばいいネ。私はいい加減お尻が痛くなってきたヨ」
「そうよね~あ~あ、誰かいないかな~閃きの天才」
少なくともここに集っている者達は、俗に言う天才の中でも特に能力の高い者達である。
「カイン、あんた今絶対ゲームしてるでしょ」
「してないよ。僕に構わないで」
「構わないでってどういうことよ」
「無駄なんだよ、会議なんて」
「んなことはわかってんのよ、せめて目開けて喋りなさいよ、腹立つわね」
この会議室は中央にU型のテーブルが置かれ、全員が大モニターを眺め易い様に設計されている。
現在の会議室内の様相としては、誰が一番暇潰しに長けているのか
「……しゅに~ん、私帰りたいで~す」
「ケイ、私だって帰りたいのよ。でも何か1つぐらい案を出さないと、最悪全員減給よ」
「……それっていくらぐらいなんですか?」
「……200オルド」
「……マジですか」
「マジよ。信じられないわよね」
「……頑張りま~す」
「ティエラ、僕に名案がある」
「はいグスタフ、どうぞ」
「GCに案がないか聞いてみよう」
【GC】とは【GHOSTCopy(ゴーストコピー)】の略称で、人類の発明史上最高のAIの
主に各試験棟のセキュリティシステムの管理を担当し、研究員の監視、または事故を防止する為に使われている。
「まあ、悪くないかもね。カイン、あんたちょっとGC呼んで」
「だから僕に構わないで! あと少しなんだから!」
「クロム、軽めに
「ええ~カインさんに怒られちゃいますよ~! この人陰険だから嫌なんですよ」
「聞こえてんだよクロム、構うなって言ってんのにもう……わかったよ、おいGC応答しろ」
カインは面倒臭そうに目をゆっくり開くと
第3試験棟においてGCに直接指示を出せるのは、班長以上の権限がないと出来ない決まりとなっている。
「……おい、GC応えろ! 聞こえないのか!」
「あんたのその横柄な感じがGCも超絶に無理なんじゃないの?」
「……AIがそんなこと思うわけないだろ」
[秘匿回線接続、会議室内の研究員へ
「おい、僕のNo.は5324だぞ、故障か?」
「キャハハハハ最高ネ! ゴミヤローって意味ネ! AIジョークヨ!」
「……ノアさん、うるさいです」
「怒ったカ?GCは賢いネ、人を見る目があるヨ」
コピーとはいえGCには擬似人格プログラムが搭載してあり、日常会話程度なら楽々とこなせる。
[会議室での会話は音声記録として保存してあります。グスタフ・ハイスタインの発言『GCに聞いてみよう』]
「え、怖いんですけど、GCが俺の声マネしてるよ」
[声マネ……検索……声帯模写と認識、これは声マネではありません。録音再生です]
「バカドモは黙るネ、GC会議内容はわかってるネ?」
[本日の会議内容、議題に該当、または関連するデータ無し、議題を教えて下さい]
「……ちょっと遊びが過ぎたネ」
――エドワードはもう堪え切れないと我慢出来ずに立ち上がった。
「……ケムが家で待っている、会議を早く終わらせよう」
今日の会議中一番の静寂が訪れた瞬間であった。
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