6 計画頓挫阻止計画

 第3試験棟会議室にて、ティエラと各班の班長12名はGCの発言を待っていた。


 [DEに対する考察をします。事象の地平面、元いブラックホールですら未だ生体、又は物体がそのまま・・・・通過できる確率0%、通過成功を仮定した場合……生存確認方法無し、交信方法無し、確認可能な最初の記録にれば西暦1930年以降同種の実験、または試験で成功の糸口となる結果無し、よってDEは不可能と断定します]

「何故だ、根拠を言え根拠を」

魔器製作技士エーテルデバイスエンジニア班長グスタフ・ハイスタインへの解答をします。IMRO研究員であればその程度の理解はしていると推定、別例検索……西暦2651年、東日本国主導で行われた【暁光《ぎょうこう》計画】……計画内容、光、闇属性の複合魔法による精霊銀鎧ミスリルメイル装着者の次元跳躍試験ディメンションジャンプテストの結果からも明瞭です。試験テスト結果は当時の東日本国魔法科学長長官ヤマト・ユカワを含む参加者258名、及び試験施設内の重力防護壁グラビティセイブウォール1147枚の消失、死者多数、試験施設壊滅で終了]

「違う、僕が聞きたいのは試験テスト内容に関するもっと理論的な話だ」

[理論の説明に及ぶ必要もありません。結論は既に出ており、前述の通りです。魔器製作技士エーテルデバイスエンジニア班長グスタフ・ハイスタインの問いは無意味です]


 人類史上最高のAIはDE実現をそもそも不可能、論外と評した。各人なんとなく解っていたが、ここへ来てDEの計画は暗礁に乗り上げてしまった。


「聞かなきゃ良かったネ。ワタシ帰りたくなってきたヨ」

「まあまあ、まだ試していないことの方が多いじゃないですか、ねえカインさん」

「クロム、僕に構うな」


 ――もはや現在会議室にいる13名全員が計画の頓挫、そして減給を覚悟した。


主任研究者チーフリサーチャーティエラ・ディ・ヨングスに嘆願します]

「はぁ……お次はなぁにGC、トドメならもうとっくよ?」

[トドメ……検索……生物の息の根を止めること……貴方は死んでいません。再度嘆願します。私を人間の複製体クローンに移植して下さい]


 ――研究員一同は1名を除き一度頷き、そして実体無き声の主を探し、結果として天井を見上げた。

 魔回廊技士エーテルコリドーラー班長 カイン・シュヴァルツはため息を吐きながら小さな声で言い放った。


「……だから故障してるって言ったじゃん」



✡✡✡✡✡✡



 『――意思、それは人間に具わる五感と人生経験による産物を便宜上意思そうと呼んでいるに過ぎない』


 科学誌ヴァーハイト、ハイディン・ヨハンソンのインタビュー記事より抜粋 

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