第224話 で、どうするの?
「分かったわよ。私も協力する」
メリアンは言った。
「いや、無理してやらなくても……」
「やるわよ!やるったら、やる。
ただし、ちょっとだけよ。
ミシェルさーん!」
そこまで言ってメリアンは、受付のミシェルさんに呼びかけた。
「今の私の言葉、覚えていてください。
できたら、書類に書いておいて下さい。
私は、
メリアンは、えらくしつこい。
無理して手伝ってくれなくても、良いんだけどな……。
「分かりました。
クランの業務日誌に書いておきます」
ミシェルさんは静かに答えた。
午後早めに、ナガヤ三兄弟がやって来た。
これで『三槍の誓い』は全員集合だ。
「随分と真剣に話しておったが、どうかしたのか?」
コサブロウさんが心配そうに言った。
僕は状況を説明した。
僕はかつて所属していた『暁の狼』に、バーディーとサットンという二人がいたこと。
二人は今、かなり追い詰められていそうなこと。
個人的に助けたいと思っていること。
「バーディーとサットンか。
以前も聞いたな。
良いではないか。
人助けだし、どうせ暇だ。
訓練ばかりでもつまらん」
コジロウさん。
「その二人は、メリアン殿にとっても昔の仲間ではなかったか?」
コサブロウさんがメリアンに尋ねる。
「そうよ。
クリフがやるって言うし、
メリアンは答えた。
「そうか。一応か」
コサブロウさんはちょっと嬉しそうに答える。
「人助けは良い」
コイチロウさんは言い、続ける。
「だが、この
クリフ殿は二人がどうなれば良いと思っているのだ?」
……スミマセン、あまり考えていなかったです。
僕はずっと、二人を助けるか、助けないかで悩んでいた。
そして、助けると決めた。
次は、具体的に『何をするか』を決めなくてはいけない。
「助けるというと、仕官先を紹介してやるとか、金を貸してやるとかか?」
コジロウさん。
「借金の保証人はやめておけ。
それなら、金を渡した方が良いぞ。
コサブロウさん。
なんか話が大きくなってきた。
しかし、仕官先か。
人を助けるってそういうことなのか。
僕にできるだろうか?
「二人がロイメの衛兵試験を受けるなら、勉強ぐらいは教えてられるけど……」
「やめときなさいよ。
クリフの家庭教師なんて、絶対二人はいやがるわよ」
メリアンが言う。
そうか?……うんまぁ、そうかもなぁ。
「クリフ殿、なかなか厄介な二人組のようだ。
なぜ助けたいと思ったのだ?」
コイチロウさんが静かに聞いた。
「このまま放っておくと、野垂れ死にしそうだからです。
結婚式の後、二人に会ったんです。
悪そうな連中に絡まれていて、随分痩せていました」
「つまりろくに食べておらぬのか。
それは気の毒だな。
では皆に聞く。
食べ物が豊富な場所はどこだ?」
コイチロウさんが聞いた。
「夏だし、食べるだけなら、ロイメより田舎のほうがマシだと思う。
今の季節なら農村に仕事がある。
ロイメは、物価が高くて、仕事もない」
キンバリーが言う。
今、ロイメはダンジョンが閉鎖されていて、やることのない冒険者が街にあふれている。
人余りなのだ。
『青き階段』の冒険者の中には、既に田舎に帰った者もいる。
昨日の結婚式の後、そのままロイメを出ると言っていた冒険者もいた。
「つまり二人はロイメにいるべきではない。
田舎に行くか、故郷に帰るべきなのだ。
もし、ロイメに残るなら、衛兵試験のことを考えても『青き階段』の庇護下に入ることが望ましい。
クリフ殿、どうだろう?」
コイチロウさんがまとめてくれた。
「……あ、そうですね、そうだと思います」
僕は答える。
うんそうだ。方向性が見えてきた。
「クリフさぁ。
お金を貸す場合、幾らぐらいまでなら出すのか、出せるのか、計算しておいた方が良いわよ。
言っとくけど、私、お金ないから」
メリアンが言う。
うん分かったよ。
ありがとう、メリアン。
「では、その二人とやらを探しに行けば良いのだな?」
コサブロウさんが言って、立ち上がろうとした。
「ロイメに不案内な我らだけで、探せるか?
誰か詳しい者に助けてもらうのが良策だ」
コイチロウさんはまだ立つ気はないようだ。
「困ったな。
この前助けてもらった『雷の尾』は、結婚式のためにネイサンさん達の村に行ってしまいました」
僕は考え込む。
「クリフさん、皆さん」
受付のミシェルさんが、口を開く。
「裏に、暇そうにしてるベテラン二人組がいますよ」
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