第179話 妄想のハーレムパーティー(男女混合パーティーに関する雑談)

「では、エルフ族のやドワーフ族は、男女混合パーティーを組むんですね?」


僕は興味の赴くままストレートに聞いた。

答えてくれたらめっけものである。



最近、僕はパーティー編成についていろいろ考えている。

特に男女混合パーティーについて。


将来、僕は『魔術師クラン』の男女混合パーティーを率いることができるだろうか?


例えば。

ネリーとメリアンと僕、3人でパーティーを組むとする。

男の憧れ、ハーレムパーティーである。


ヤバい。絶対ヤバいよ。

ちょっと妄想しただけで、このパーティーで起こりそうな様々な、が頭に浮かんだ。


最年長ということで、ネリーにリーダーを押し付けようか。


もちろん1番重要なことは、こんなヤバい妄想パーティーに入らないことである。


君子危うきに近寄らず!



「はい。エルフ族やドワーフ族は、良く男女混合パーティーでダンジョンに潜ってますね。

エルフ族やドワーフ族では、ダンジョンに潜る時は女性を連れていくと縁起が良いとされていますから」

ハイエルフのケレグントは笑顔で答えた。


「彼らはどんな風にパーティーを組むんですか?

その役割分担とか、何かあった時の解決方法とか。

ええと、リーダーとして参考にしたいんです」



「うーん、あまりあなたの参考にはならない気がします」


ケレグントはそういうと、続ける。


「理由は、エルフ族や、ドワーフ族は地縁血縁でパーティーを組むことが多いからですよ。


対してロイメは地縁血縁が薄い都市国家です。

冒険者ギルドで会った者同士、ほとんど初対面でパーティーを組むこともあるとか。

あなたは、ロイメで運用される男女混合パーティーの参考にしたいのですよね?」


「その通りです。

ロイメのダンジョンに潜るパーティーのために、情報を集めています」



「一応参考までにお話しましょう。


小さな地縁血縁で結ばれた社会でなら、男女混合でパーティーを組むのも案外抵抗がないのです。

本人達の能力や適性もお互い知っています。


だいたい、余所者よそものの男性より、身内みうちの女性の方が信頼できるじゃないですか?

もしパーティー内でトラブルが起きたら、身内・共同体の問題として処理されます」



これはこれで耳寄りな話ではある。

しかし、ケレグントの言う通り、僕の知りたかった情報からは、少しズレている。

 


「まあ、相手が交配可能な異性か否かというのは、生物として重要なことですからね。


ヒト族の様々なトラブルは、そこから生まれています。

あなたが、パーティーの中の男女の問題が気になるのは当然です」



「交配、ですか……」

流石ハイエルフというべきか、スバリ言ったね。



「初対面なら尚のこと、男か女か、どの種族か、年上か年下か、そういう表面が気になるでしょう。


でも、パーティーを組む以上は、味方であり、身内なんです。

会ったばかりでもそれは同じのはずです。


結局、パーティーの構成員が、世界の中でどこに線を引いているか、どのように認識しているか、それを共有しているか、です」



僕が知りたいのは、パーティー内の認識を共有するためにはどうすれば良いのか、である。


でも、線か。これはちょっと面白い。


例えば、『三槍の誓い』の中には、どのような線が引かれているか?


ナガヤ三兄弟は身内で強固な繋がりがあり、ナガヤ線の内である。


キンバリーとメリアンも仲が良い。女性2人で線の内である。


それなら、僕の位置づけはどうなる?

もしかするともしかして、僕の立場弱くない?



「まあ、私はパーティーに参加する時は、たいていオブザーバーとしてです。

私にリーダーシップについて聞くのは間違ってますよ」

最後にケレグントは脂肪を揺らしながら、陽気に言った。



「いえ、興味深い話をありがとうございます」 



ぼくはもっといろいろ考えた方が良い。

『三槍の誓い』を結成してから、冒険者生活は順調だった。

そして調子に乗って、いささか考えが浅くなっていた。



「ねぇクリフ、男女混合パーティーのことなら、そのでぶエルフよりも私に話を聞くべきじゃない?」

メリアンが突っ込んできた。



僕は沈黙した。


確かにその通りなのだ。


でも、メリアンの話を聞くと、訳の分からない方に流れていくんだよ。

『暁の狼』で散々経験した。


あと、でぶエルフじゃなくて、ケレグントな。



「ロイメには男女混合パーティーはたくさんありますよ。 

『魔術師クラン』もそうだったはず。

そちらの経験者に話を伺うのが良いと思いますねぇ」


「俺もそうだと思うぞ」

ソズンさんが脇から口を出す。


う、親父に聞けってことか。


いや、まず『黄緑の仲間』のマークさんだ。

親父に聞くのは、その後にしよう。




その時である。


「っワ!」

いきなり背中をドンと叩かれた。


「うわヮワ、わぁー!」

僕は悲鳴を上げた。

び、びっくりしたぁ!



「よお、クリフの坊主、驚いたかぁ?」


僕は振り向いた。

振り向かなくても分かるけどな!

イケイケ禿はげおじさんこと、チェイスのオッサンだよ!


あーチキショー、驚いたよ、超びっくりだよ、心臓止まるかと思ったよ!



「いい加減にしてください!

もうちょっとで結界切れるところだったんですよ!」


本当に、、やばかった……。


「そーかぁ?

クリフの坊主はそう簡単に切らさないと思うぞ」


禿親父チェイスは、僕の肩を叩きながら言った。


チェイスさんの後ろには、トムさんとデイジーがいた。


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