第164話 爆発
「フむ。俺は銃使いのエヴァンだ。
エらい騒ぎだが、俺はちゃんと火薬を扱う許可を持っている。
安心しろ」
「失礼ですが、その許可はどこで取られましたか?」
ユーフェミアさんが聞く。
「西方辺境伯領だな。
魔物退治に参加して、辺境伯から直々にサインをもらったぞ。
……見ろ」
そう言うと、エヴァンは懐から封筒を取り出す。
ユーフェミアさんは盾から手を伸ばそうとしたが、僕が代わりに受け取ってユーフェミアさんに渡す。
封筒は上質の紙でできており、それなりの
「サインはわかりませんが、どうやら本物のようですね」
ユーフェミアさんはそう言うと、封筒を僕に返す。
僕はそれをエヴァンに渡す。
エヴァンが銃と火薬を持って、呑気に王国を移動できた理由がわかったよ。
西方辺境伯はそれなりの権威だ。
「エヴァン様、ロイメは独立国です。王国成立以前から存在しているんです。
ですから、この書類はロイメでは無効です。
ロイメで火薬を扱う認可は持っておられますか?」
ユーフェミアさんは再度聞く。
僕の魔術師としての勘だけど、エヴァンは火薬認可を持っていない。
こいつがロイメ魔術師クランの火薬扱いの基準を満たしているとは思えない。
「持ってねぇな。ドうすりゃいいんだ?」
エヴァンの答えは、案の定である。
しかし、彼は正直に答えた。これは意外である。
「冒険者ギルド他、関係する役所には既に連絡を入れました。
しばらくお待ちください」
「はあ。面倒くせーな。待つか」
僕達は、『青き階段』のロビーで3人で待つことになった。
カウンターに置かれた『銃』。
その前に異邦人のエヴァン。
少し離れたところに大型の盾に身を隠し、『安全第一』の兜を被ったユーフェミアさん、そして僕。
「ソんな盾に隠れてないで出てこいよ」
エヴァンは言った。
「申し訳ありませんが……」
「危ないから駄目ですよ。あ、僕は防御魔術師です。
もし、火薬の爆発が起きたら、ユーフェミアさんの分の結界は張ります。
でも、あなたは知りませんからね」
僕はユーフェミアさんの言葉を遮り、早口で言った。
「ソんなにびびる事ねぇつーのに」
「僕に言わせれば、分かってないのはあなたです。
ロイメでは火薬はすごく危険なんです。
役人が来たら、銃と火薬は没収されますよ」
後で思えば、僕のこの発言は余計だった。
まあその……、火薬には良い思い出がないんだよ。
「アあ?銃は俺の相棒だぞ!
俺とこいつの仲を引き裂こうツーのか!」
エヴァンは感情を荒げた。
「ロイメの魔術師クランが火薬を扱う場合に課す条件は、火魔術・土魔術ともに中級以上です!
エヴァンさんこのレベルの魔術が使えますか!?」
僕もいささかイラついている。
でも、嘘は言ってないぞ。
これは魔術師クランの『敷地内で』火薬を扱う時の条件である。
僕もここまではクリアしている。
火薬をクランの敷地外に持ち出す時は、さらに条件は厳しくなるのだ。
「お前らは、ワかってない。
俺は火薬の調合もやる。
ちゃんとあつかえば、火薬は大人しいモンなんだ」
そう言うとエヴァンは、赤いケースを開けた。
やめてくれ!
ケースの中には薬莢と弾、ガラス瓶に入れられた火薬がきちんと整理されて入っている。
エヴァンはケースから薬莢を1つ取り出し、カウンターに置いた。
ヒイッ!
「イいか!銃と火薬は俺の相棒でっ……」
薬莢の火薬の中で、土のマナと火のマナが
「伏せてください!!」
パアン!
次の瞬間薬莢が爆発した。
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