第159話 ヤツ

「お久しぶりです。『青き階段』の皆様。

『冒険者通信』のゴドフリーと申します」


ゴドフリーは、揉み手と、いささか気持ち悪い笑顔と共にをやってきた。


ただ、僕的にはゴドフリーも陰キャの分類で、仲間である。

そして、誰かに嫌われても気にしない神経の太さは、スゴいと思っている。



『女神大戦』では、金盾アルペロを追いつめるために、ゴドフリーと『冒険者通信』に協力してもらった。

その時の交換条件が、『青き階段』における、ゴドフリー出禁の解除だった。


かくして、事前にアポイントメントを取ると言う条件ではあるが、ゴドフリーの出禁は解除された。



「おお!ゴドフリー殿、

我らに取材か?インタビューか?

応じるぞ?」

コサブロウさんが機嫌良く言った。


「これは、『三槍の誓い』の皆様お揃いで。

ではよろしくお願いします」


ゴドフリーは僕達のテーブルにやってきた。



「薬草取りのイベントに招かれると、番付に載りやすくなるらしいと聞いた。

『冒険者通信』は、『緑の仲間』やジェシカ・ダッカーと繋がりがあるのか?」


コジロウさん、いきなりソレ聞きますかぁ。


「別に繋がりと言うほどのものはございません。

ただ、『緑の仲間』も、薬草取りの方々も冒険者の端くれですからね。


彼女達の中には『冒険者通信』を買ってくださる方も多いのです。

薬草取りで会った顔見知りが番付に載ると喜びます。

つまり、『薬草取りの日』に来た方々を載せた方が、売上が増えるんですよ」

ゴドフリーは笑顔で答えた。


ゴドフリーよ、ばらしていいのか、そういうネタ。



「ゴドフリー、おぬしも商売上手だのぉ」

コジロウさんは言った。


「いえいえ、私などまだまだで」

ゴドフリーは答える。


なんか、ロイメ芝居で聞いたことがあるような台詞セリフだ。



ゴドフリーのインタビューは基本的な内容だった。


「『青き階段』と『三槍の誓い』の居心地はいかがですか?」



まず、コサブロウさん。

「両方とも、居心地は良いぞ。

不満と言えば、時々兄者が俺を使いっ走りにすることぐらいだ」



次はコジロウさん。

「クリフ殿の防御魔術があるから、思い切り戦える。

俺には合っているな」



コイチロウさん。

「クリフ殿はもちろん、キンバリー殿や、……メリアン殿も含めて、このメンバーで組めたのは幸運であった。

あと、『青き階段』の武術師範のソズン殿は素晴らしい」



メリアン。

「後から加入しましたが、居心地は良いです。

楽しい冒険者ライフを送っています」


さっきの今なので、メリアンが何を言い出すか、ちょっと心配したが、外面は完璧だった。


「『三槍の誓い』の治癒術師が、素晴らしい美少女だと噂が流れてますよ。

今度、単独インタビューをさせて下さい」


ゴドフリーはメリアンの存在に興味があるようだ。


「今はまだ、新入りなので。

いずれお願いします」

メリアンはそつなく答えた。



キンバリーは。

「ノーコメント」


「キンバリーさん、もう少し」

ゴドフリーは食らいつく。


「ノーコメント」


とりつく島もない。



「ゴドフリーさん、インタビューは本人の自由意思なので。

あ、僕から見ると、キンバリーは、素晴らしいスカウトです」


これは、本音である。

キンバリーは勘がいい。

そして、キンバリーがキンバリーであること。

これは、本当に素晴らしい。



ゴドフリーは、一瞬ムッとしたような顔をしたが、すぐに愛想良く僕に向き直った。



「ではリーダーのクリフ・カストナーさん、『三槍の誓い』の次の目標は何ですか?

第四層ですか?第五層ですか?」



「まずは、戦い方の練度をあげることと、装備の充実ですね。

第五層は目標に入っています。ただ、いつと言うのは決めていません」


僕は慎重に言葉を選んだ。

下手な事を言って、煽られるのは御免である。


目立ちたがりで『冒険者通信タブロイド紙』を利用しつつのしあがる、冒険者もいる。

しかし、僕は陰キャなのである。


もちろん目標は五層だ。

ヤツに勝つためにもな!



「では、質問です。

あなたのお父上、カール・カストナー氏のことです。

あなたにとって、彼はどんな存在ですか?」



……。


なんでいきなりヤツの話が出てくるんだよ!



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