第158話 男女混合パーティーの悩み
「クリフさん、男女混合の冒険者パーティーを率いるのは、高難易度ミッションです。
くじけずに、頑張ってください」
ユーフェミアさんは、ちょっと心配そうに言う。
確かに、男女だと体力差もある。
考え方の違いもある、と思う。
でも、だ。
「大丈夫です。
僕は魔術師クラン出身ですから、男女混合パーティーは当たり前なんです」
僕は答えた。
これは、本当である。
男女混合パーティーにびびっているようでは、『マナ同盟No.2』にも、『マナ同盟』にも勝てない。
当然ヤツにも勝てないのだ。
……つまり、ヤツに勝つためには。
僕は、メリアンと話し合わなければならない!
頑張ろう。
メリアンは、キンバリーの説得で部屋から出てきた。
テーブルには再び6人揃った。
仕切り直しだ
「一応聞いておくけど、バーディーとサットンはどうするのよ?」
この発言から、話し合いは始まった。
メリアンは、いきなり喧嘩ごしだ。
「ハロルドさんに頼んだよ。『雷の尾』が2人の情報を集めてくれるそうだ」
僕は答えた。
「えーそれ、きっと、お金払う羽目になるわよ?」
「もちろん。お金を払って依頼したんだよ。
僕が調べるより確実だと思う」
メリアンは少し黙った。
とは言え、さっきよりは、メリアンも話し合う気はあった。
「何でバーディーとサットンにこだわるのよ?」
「きっかけは、レイバンに会ったことだけど……。
ともかく、気になるんだよ」
レイバンは、『面倒を見るならお前が見ろ』と言った。
半分思いつきで言ったような感じだったけどね。
とは言え、レイバンの言葉は僕の心の中の可能性の扉を開けた。
3人で過ごした時期の『暁の狼』は楽しかった。
そして、なんと言っても、2人はまだ18歳なのだ。
もちろん、最大の理由は、僕が冒険者として幾つかの運に恵まれたこと。
要は、資金に余裕があるからだ。
「お金払ってまで調べるクリフ。
何もしないわたし。
これじゃあ、わたしが友達
メリアンはむくれながら言う。
……、僕はそういうのは、余計な思考だと思うよ、メリアン。
「周囲にどう思われるか気にしても仕方ないだろ?
大切なのはメリアンの気持ちだ。
だいたいメリアンは資金に余裕がないし」
「あんたのそういう所嫌い」
はぁぁー。
受付でユーフェミアさんとミシェルさんとノラさんが、ため息をついた。
皆さん、今のため息は、僕に向けてじゃないですよね!?
それでも、である。
ここでへこたれていては、ヤツには永遠に勝てない。
僕はメリアンと、お互い納得がいくまで話し合う必要があるのだ。
「メリアン、偏見込みで、メリアンを見てきたのは悪かったよ。
今後気を付ける。
だから、メリアンも僕が嫌いじゃなくて、具体的にどこが悪いのか、教えて欲しい」
これは事実である。
例えば、僕は、メリアンがバーディーとサットンと仲が良いと思い込んでいた。
メリアン自身から、彼らをどう思っているのかは聞いたことがない。
「だからっ、……。
そういう風に、イイコちゃん風に言われるのも困るのよ。
やりにくいじゃない!」
メリアンは言った。
うーん、通じてないな。
「メリアン殿、それは違う」
ここで、コイチロウさんが脇から口を出す。
「リーダーが真面目で、パーティーメンバーに対して誠実でなければ、ダンジョンなぞ危なくて潜れない。
クリフ殿は、冒険者パーティーのリーダーとして、当然のことをしているだけだ」
メリアンは唇をかみ、下を向く。
「メリアン殿は、クリフ殿にどうして欲しかったのだ?」
コジロウさんが言った。
メリアンは下を向いたまだ。
「メリアン、ちゃんと話さないとダメ」
キンバリーが声をかける。
「だから!
メリアンの治癒術スゴいねとか、
ランクインしたのは君の、いえ君達のおかげだよとか、
このメンバーは最高だ!とか。
バーディーとサットンの話題より先に言うことがあるでしょ!」
えーと、メリアンは褒めて欲しいのかな?
でもお世辞はダメだぞ。
偏見に通じる。
慎重に、真実に基づいて語るんだ。
メリアンの取り柄は、まず容姿だけど、ここは違うよな。
同じパーティーを組む女性冒険者に対して、実力じゃなくて、容姿を褒めるのは失礼にあたる。
魔術師クランで、僕はそう習った。
ヤツもそう言っていた。
「……メリアンは頑張ってると思うよ」
メリアンの頬っぺたは、あっという間に膨らんだ。
「メリアンはすごく頑張っていると思う」
メリアンの頬っぺたは、さらに膨らむ。
もう、ぷっくぷくである。
だから、どうしろって!
「では、クリフ殿、どういう治癒術師なら、スゴいと思える?」
コジロウさんが僕に質問した。
スゴいということは、最低でも僕以上である。
「そりゃ、マデリンさんとかスゴいですよね」
はぁぁー。
ミシェルさんとノラさんがため息をついた。
「スゴいかどうかはともかく!
メリアンより優秀な治癒術師を見つけて来いって言われても、まず無理だよ。
そういう人は、ダンジョンに潜ったりしないんだよ!」
半分やけくそだ。
「ふーん、まあ、わたしの有り難みを一応は理解してるわけね?」
この場合どう答えればいいのか?
調子を合わせるべきか?
メリアンの言う『有り難み』とは何か聞くべきか?
その時、受付のミシェルさんが目に入った。
ミシェルさんは目で合図をし、大きく頷く。
多分これは調子を合わせておけって意味だろう。タブン。
「メリアンの存在はありがたいし、『三槍の誓い』に必要な存在だと思ってる。
もちろん他のメンバーも同様に必要だ」
「わかった。一応だけど、納得した。
サブダンジョン頑張りましょ」
メリアンは言った。
その後、僕は新作の芋菓子をおごらされた。レモン味。
ミーティングはまだ途中だし、まあいいか。
「いざという時は、容姿を褒めてもいいのよ、クリフ。
簡単でしょ!」
メリアンは芋をバリバリ食べながら言った。調子にのっている。
容姿でもいいのか。
えーと。
「メリアンの金髪は、黄色ニシキヘビのようにきれいだと思う」
「却下!」
メリアンは言った。
はぁぁぁぁー。
受付で、ユーフェミアさんとミシェルさんとノラさんが、すごく大きなため息をついた。
僕の渾身の褒め言葉は不評だった。
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