第156話 リーダーはたいへんだ
何故、こうなる。
僕は呆然としていた。
テーブルにいる皆は……、無表情なコイチロウさん、肩をすくめるコジロウさん、階段を見上げるコサブロウさん、唇を結んだキンバリー。
この空気をどうしてくれる、メリアン!
「私、メリアンさんの気持ち分かっちゃうなー」
受付から声が聞こえた。
ノラさんである。
「どこが悪かったですかね?」
僕はノラさんに質問した。
「悪いって言うよりは、もうちょいビミョーなものになりますがー……。
今さら昔のパーティーのこととか聞かれても困ると思います」
ノラさんは答えた。
そういうものなのだろうか?
「僕としては、バーディーとサットンのことは、仲が良かったメリアンに聞くのが、一番手っ取り早いと思ったんです」
僕はちょっと言い訳する。
ゴホン。
ノラさんの隣にいた、受付のミシェルさんが咳払いした。
「いいえ、私は、今回はクリフさんが悪いと思います」
ミシェルさんは言った。
そうなんですか?
ミシェルさんに言われると、ちょっと、いや、かなりショックである。
「女性が男性とニコニコ話しているからといって、仲が良いと思うのはやめてください」
ミシェルさんは断言した。
「バーディーは、間違いなくメリアンが好きだったと思うんですが……」
僕はモゴモゴと言い訳をする。
僕は鈍感な性だが、これは間違いないと思う。
「バーディーさんは好きでも、メリアンさんがバーディーさんを好きだとは限りません。
男性が女性に一方的に入れあげる。
良くあることです」
まあ、良くあること……なのかもしれない。
だけど、流石にバーディーが気の毒な気がしていた。
あんなにメリアンにサービスしてたのにな……。
「過去には、私が受付に座っているだけで、入れあげてくる男もいたんですよ」
ミシェルさんは言った。
後ろでノラさんがウンウンと頷いている。
それはあり得るだろう。
ユーフェミアさんも含めて、『青き階段』の受付3人は冒険者達の憧れだ。
彼女達のサポートを勘違いする男がいても、不思議ではない。
となると、メリアンとバーディーの関係も考え直した方が良いのかもしれない。
「まあ、『青き階段』はそういう場合は、きちんと対応してくれますが……」
もしかしたら、『暁の狼』時代のメリアンは、ミシェルさんやノラさんより、大変だったのかもしれない。
僕の記憶では、ロイメではわがまま三昧、ダンジョンでは「疲れた」ばっかり言ってたような感じなんだが。
……もしかして、もしかしたら。うーん。
「『暁の狼』時代のメリアンさんにも問題はあったのだと思います」
ミシェルさんは続けた。
「でも、今回は僕が悪いと」
僕はゴニョゴニョと言った。
「クリフリーダーだけが悪い訳じゃない。
最後まで話し合わなかったメリアンにも問題がある」
キンバリー!
こういう時に庇ってくれると嬉しい。
「……ちょっと言い過ぎました。
でも、良く話し合ってください。
その時は、メリアンさんと『暁の狼』のメンバーは、仲が良くなかったかもしれないと言う前提で話してください」
ミシェルさんは結んだ。
はい。
僕も、レイバンと再会やら、『マナ同盟No.2』の躍進やらで、感情がブレていたかもしれない。
ミシェルさんの言う通り、メリアンとは、ちゃんと話し合わなければならない。
それにしても、リーダーは大変だ。
特に女性込みのパーティーを率いるのは、大変だよ!
だが、ここで投げだしては、ヤツには絶対勝てない。
女性がたくさんいるパーティーを率いているのは、シオドアやマークさんだ。
特にマークさんは、女性が30人以上いるチームを率いている。
今度、マークさんに教えを請いに行こうかな。
僕はそんなことを考えた。
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