第12章 たかが番付、されど番付
第153話 番付発表
「いよいよ番付発表だな」
コサブロウさんは言った。
僕とコサブロウさんとメリアンは、『冒険者通信』を買いに行列に並んでいる。
今号は、冒険者番付の発表だ。
他の3人はというと、
他にやることがあるbyコイチロウさんとか、
午後に買いに行けば良いbyコジロウさんとか、
『冒険者通信』は買わないbyキンバリーとか、
等々であった。
僕達『三槍の誓い』は、この3ヶ月に稼いだ金額なら、十分トップ10に入ると、ユーフェミアさんから太鼓判を押された。
若手の登竜門と呼ばれる、金鈴花の薬草取りの護衛にも呼ばれた。
ただ、僕達が1番稼いだのは、
そこがどう評価に響くかだ。
まあ、評価するのは
ジリリリ。
ベルがなり、店が開く。
「1人1部まで、1部30ゴールドだぞ!」
僕とコサブロウさんはすぐに1部づつ、ちょっと迷ったが、メリアンも買った。
「載っておるか?」
「ありますよ、『三槍の誓い』8位!」
「すごい!『デイジーちゃんと仲間達』以上じゃない!」
僕達は、『冒険者通信』にかじりついた。
冒険者通信・パーティー番付
1 緑の仲間
2 盟約の守護者
3 てるてる坊主
4 洞窟の王者
5 マナ同盟No.2
6 マナ同盟
7 トンネル採掘隊
8 三槍の誓い
9 紅蓮の冒険者
10 黒鉄戦士隊
冒険者通信を、わざわざ早売りで買うのは、だいたい僕達のような冒険者だ。
皆、情報交換がてら番付パーティーの噂話をしている。
「毎度ながら、『緑の仲間』は強いなあ」
「当然だな。『女神大戦』を仲裁したジェシカ・ダッカーの手腕。今回は文句ねえよ」
これは、僕も同意する。
「『盟約の守護者』は、いつもの定位置だな」
盟約の守護者は、エルフ族のみからなる超古参パーティーだ。
僕が冒険者通信を初めて買った時以来、1度もトップ5から落ちたことがない。
「てるてる坊主、やるじゃないか。トップ3だ」
「あいつら、
「知ってるよ。で結局、中心メンバーが何人か
「まだ療養してるメンバーもいるし、引退者も出そうだって」
「ちょっと稼いだぐらいじゃ割に合わないんじゃないか?」
これは、初耳だ。
禿げのお頭は、何度も荷車を出したと言っていたが、自分のパーティーメンバーのためでもあったのか。
「『洞窟の王者』は手堅いが最近順位がいまいちだな」
ここは、ドワーフ族のみからなるパーティーだ。
昔は、2位に入っているのも見たことがある。
確かに最近調子が悪い。
「5位『マナ同盟No.2』って何だよ?
トップ5の入れ替わりは珍しいぜ」
「魔術師クランの二軍だな。
一軍の『マナ同盟』と入れ替わってる」
「確かに珍しいな。
メンバーは誰だ?
良い新人が現れたか?
リーダーのせいか?」
魔術師クランの二軍がトップ5。
クランの二軍は、僕が希望すれば入れただろう。
後悔はしていない。
断じて後悔はしていない。が、……悔しい。
「『トンネル採掘隊』って初めて聞いたぞ?知ってるか?」
「ああ、知ってるぞ。
ドワーフ族がリーダーだったな。
新しく現れたパーティーだ。
未踏の通路で、結晶化した魔石を見つけたらしいぜ」
「お宝発見かよ。やるねえ」
このパーティーについては、全然知らなかった。
ロイメには、たくさんの冒険者パーティーがいる。
そして、お宝発見はうらやましい。
「『三槍の誓い』は……、ああ、あの紅の悲劇を片付けたパーティーか。
『紅蓮の冒険者』も気の毒になあ。これからって時に」
「なあ、魔石を取ったのは、『紅蓮の冒険者』なんだろ?
『紅蓮の冒険者』の順位が上であるべきなんじゃないか?
『三槍の誓い』は、言わば
「でもな、『紅蓮の冒険者』は、しょせん帰ってこなかったパーティーだからな……」
「しっかし、『三槍の誓い』はうまくやったな。俺も
ダンジョンで他人の獲物を横取りすることだ。
僕達は、『紅蓮の冒険者』を助けただけだ。
まあ、助けたのは、3人中2人だけど。
僕達と会わなければ、全滅したか、盗賊として討伐されただろう。
冒険者ギルドにもそう判断されている。
「事実はどうでも良い。我らを貶めたいだけだ。
原因は嫉妬だ。
我らが何を言っても連中は聞かぬであろう。
……兄者ならそう言う」
コサブロウさんは言った。
ギギギ。
なんだこの音?歯ぎしり?
「歯ぎしりの音が聞こえるわよ、コサブロウ…殿?」
メリアンが言う。
「一発ぶん殴るか、軽く脅してやりたい。
でも、兄者ならやらぬであろう」
コサブロウさんは言った。
まだ歯ぎしりの音が聞こえる。
「そうね。しょせん番付に載れなかったパーティーのひがみ。
芋菓子買って帰りましょ」
メリアンは明るく言った。
なお、僕達の噂話をしていた連中は、歯ぎしりをしているコサブロウさんを見て、とっとと帰っていった。
賢明である。
「1つ良い話も聞いた。
『てるてる坊主』は主要メンバーが療養中。
次回は思うようにはいかないのではないか?」
「そうですね。チャンスかもしれません」
僕は同意する。
「あとは、……クリフ殿、マナ同盟No.2のリーダーは誰だ?
勝因はなんだと思う?」
「マナ同盟No.2には、僕の知り合いのルークが参加してました。
あとは……」
僕は口を濁す。
いろいろ悔しいんだよ!
察してくれ。
いや、後でちゃんと話すから。
その時、僕の視界の端に知ってる人物が映った、気がした。
……!
その人物は、軽く肩をすくめると、人混みの中に消えて行く。
待ってくれ。
聞きたいことがある。
「ちょっと、用事を思いだしました。先に帰ってください」
僕はその人物を追いかける。
中背の黒髪の男、右肩が軽く下がった姿勢、間違いない。
レイバン!
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