第152話 マデリンの失恋【秘密メモ 初代・緑の仲間】

あ、そうだ。


「初代『緑の仲間』の話を聞いたんですよ。

ジェシカ・ダッカーとレイラさんとマデリンさんとトロール族のポーターで潜ったとか」


僕は「女神大戦」の時、聞いた話をペラペラしゃべった。

若き日のジェシカ・ダッカーの物語だ。


しゃべって良い話だよね?



「なんじゃそりゃ?

冒険者同士の物々交換で、物資を手にいれたぁ?」


「強烈なメンバーですね……」



「トビアスさんなら、どう評価しますか?」

僕は聞いた。ワクワクだ。


「面白そうですね。遊びの範囲でも良いので聞きたいです」

ウィルさんも言う。



「そうだなあ、やってみるか。

『初代・緑の仲間』、ロイメの歴史に残るパーティーだ!」


「「おおー」」パチパチ。



「メンバーは、

リーダー、人間族の女、ジェシカ・ダッカー、

サブリーダーでスカウト、ハーフエルフ・ケンタウルスの女、レイラ、

治癒術師で水魔術師、セイレーン族の女、マデリン、

ポーターでパシリ、【気の毒な男】トロール族の傭兵、

以上4名だ。

一応、ハーレムパーティーだけど、ホント全然うらやましくないな。


攻撃 A

間違いなく強い。

A+にしないのは、4人組で、まだ強くなる余地があるからだ。


防御 B+以上

マデリンさんの水結界は強力だが、このメンバーが大人しく結界の中にいるのかねえ?


情報 B+

こいつら、ろくに調査もせずにダンジョンに潜ってないか?

正直Bにしたいが、レイラさんの実力を見て、B+とする。


回復 A+というかS?

マデリンさんが参加している時点で、回復はA+だ。

しかし、このパーティーは、ジェシカ・ダッカーの上級治癒術も加わる。

レイラさんも、初級治癒術は使う。

回復については、贅沢過ぎる組み合わせだ。


輸送 B+以上

トロール族の男が惜しみなく働けば、かなりの荷物が運べるだろう。


それにしても、トロール族も歩けばレイラさんに当たる、か。

まあ、【気の毒な男】だな。


資金 C-

物々交換で潜るとか、いい加減にしろ。

ダンジョン嘗めんな。


こんなもんか?


そこまで強くないようにも思えるが、ラブリュストルの定員の6人組まで、あと2人あるのが驚異的だ」



「素晴らしいです」「参考になりました」

僕とウィルさんは、口々に言った。




「そう言えば、マデリンさんは、この前ロビーでしくしく泣いていましたね」

ウィルさんが言った。


「ええとですね、マデリンさんは、『黄緑の仲間』のマークさんに告白しまして……」

僕は説明する。


告白したのは、打ち上げの最中だった。

『黄緑の仲間』のオバサン達は、阿鼻叫喚の大騒ぎだった。


「『黄緑の仲間』のマークさん?

ああ、南ロイメ商会の番頭だったマークさんかあ」


トビアスさんはマークさんを知っていた。

さすが顔が広い。



「で?どうなったんですか?」


「亡くなられた奥さんを愛しているとかで……」


「振られたわけね。

まあ、君子危うきに近寄らず。

さすがマークさんだな」

トビアスさんは言った。


「私から見ると、あの胸は惜しい気がしますけどねぇ」

ウィルさんは言う。



「そう言えば、マークさんを追い出した南ロイメ商会はどうなってるんですか?」


オバサン達には、若旦那が無能だと散々に言われていたが。


「あそこはダメだね。

マークさんを追放した若旦那が、お約束通りの無能な二代目だ。

破産する前に、店も家屋敷も売り払って、田舎に引っ込んだ方が良いと思うけどね」



「田舎に引っ込めば、無能でもなんとかなるんですか?」


「無能を自覚して、余計なことをせずに静かに暮らせば、なんとかなるんじゃないか?

田舎は物価も安いし」

トビアスさんは少し考えから言う。


「その余計なことをしないが、難しいんですけどね」

ウィルさんは、言った。



無能を自覚して、余計なことをしない。

確かに難しそうである。






「薬草取りの季節」は、これにて完結です。

次章は「たかが番付、されど番付(仮題)」です。

『暁の狼』のあの人が登場予定です。

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