第151話 ソズン中級コース【秘密メモ・三槍の誓い・雷の尾】

僕、トビアスさんとウィルさんと、『青き階段』のロビーでお茶タイムだった。

いつもの芋菓子も買ってきた。



3人ともさっきまでソズンさんの中級コースに参加していた。

トビアスさんとウィルさんは、まだ元気そうだが、僕は疲労困憊していた。


実は、ギャビンも一緒にトレーニングしていた。

ギャビンは、終わった後、「トレイシーちゃんに会いに行く」とか言って、元気に出かけてしまった。



……僕としては、中級コース参加は気が進まなかった……。

僕は、肉体派じゃない。


でも、そうも言ってられなくなった。


この前の親父の査問で、僕は彼我ひがの戦力差ならぬ体力差を痛感した。

体を鍛えないと、永遠に親父に勝てない。


別にメリアンに何か言われたとかではないぞ。タブン。



ソズンさんには、上半身の筋力アップと、初歩の格闘術の習得を勧められた。

耐電・帯電コンボを使うには、体を接触させないといけないしな。

やるしかない。


しかし、くたびれた。

芋とお茶が旨いよ。




「トビアスさん、あなたが素晴らしいノートを持って居ると聞いたのですが……」


ウィルさんの発言に僕の耳が反応した。

トビアスさんの秘密ノート公開なら、ボーッとしてはいられない。


「いやまあ。

おい、クリフ、お前だろ。

ばらしたの」


正直記憶にないですが、そうかもしれないです。


「私も、あちこちで噂は拾いますから。

それよりも、内容についてです」


「一部なら見せてもいいが、無料じゃねえぞ?」


「もちろん、必要ならお支払いします。

それよりも、お互い情報交換を提案したいですね。

トビアスさんは、ノートをより良いものにする。

私は一部見せていただく。

いかがですか?」



かくして、トビアスさんの秘密ノート公開&情報交換会が始まった。

ラッキー!




『三槍の誓い』

攻撃 B+~A-

防御 A-

情報 B~B+

回復 B+

輸送 B

資金 B+


『雷の尾』

攻撃 B+~A

防御 B+~A-

情報 B-~B+

回復 A -~A

輸送 不明

資金 不明


これが、『三槍の誓い』と『雷の尾』の暫定データである。



「フム。基準が良くわからないんですが、攻撃力なら『三槍の誓い』の方が上だと思いますね」

ウィルさんが言った。


「そうなるかね?」

トビアスさんが確認する。


「『雷の尾』はどちらかというと守勢のパーティーですよ。

ハロルドさんは、盾士ですし」


トビアスさんはうなずきながら、指先で鉛筆を回す。


「一方、『三槍の誓い』です。

ナガヤ三兄弟の攻撃力は、半端ないと言うのが私の意見です。

槍の技量もですが、あのお三人は軍事面の高度な教育を受けてると思います」

ウィルさんは続ける。



そうかもしれない。

確かにナガヤ三兄弟の立ち居振舞いからは、育ちの良さを感じる。

それに、声の出し方。

あれは、戦場で部下を指揮するための声だ。



「クリフは、あの3人の生まれや育ちを知ってるのか?」

トビアスさんが僕に質問してきた。


「そういう話はあまりしないので。

3人の父親がクソだったと聞いたことはありますが」


「ナガヤ三兄弟の素性の詮索はこれぐらいにしましょう。

評価はどうなりますか?」

ウィルさんは話題を切り上げた。



トビアスさんは、攻撃について、


『三槍の誓い』A-、

『雷の尾』B+、


と書き直した。



「次は防御ですね」


「エルフのイリークの防御魔術の腕はどれくらいだ?」

トビアスさんが聞いた。


「イリークは、防御魔術も使いますが、クリフさんと比べるとお粗末です。

魔術師クランで修行して、腕が上がると良いのですが……」


トビアスさんは、でもハロルドさんは盾士だったよな……、と呟きながら、


『三槍の誓い』 防御 A-

『雷の尾』 防御 A-


と書く。



「次の情報だが……」

トビアスさんが切り出す。


「ウィルさんもスカウトの技術を持っています。

マッピングがすごいですよ」

僕は発言した。


亡霊レイスのダンジョンでは、ウィルさんのマッピングに助けられた。


「私は、戦闘であまり役に立たない分、いろいろやる必要があるんです」

ウィルさんは言う。


『三槍の誓い』 情報 B

『雷の尾』 情報 B+以上


トビアスさんは書いた。

なお、両パーティー共、第五層を一度でも経験すればワンランクアップ、らしい。




「次は、回復だな」


「イリークの上級治癒術は、難ありですよ」

ウィルさんは言う。


「僕の上級治癒術は、難ありまくりですね」

僕も言う。


トビアスさんは、


『三槍の誓い』 回復 A-

『雷の尾』 回復 A-


と書く。


「『三槍の誓い』がB+からA-にランクアップしているのは、メリアンの加入分だ。

多少の難ありでも、上級治癒術が使えるメンバーがいるならA-以上でいいだろう」

トビアスさんは言った。



「いよいよトビアスさんが重要視している『輸送』です」


『三槍の誓い』 輸送 B

『雷の尾』 輸送 B


「不満かもしれないが、両パーティー共、ロイメのダンジョンでの経験、ポーターのチームを運営するノウハウが足らない。

今の所はこんなもんだよ」

トビアスさんはノートに書きながら言う。


僕とウィルさんは頷いた。



「さて、資金力だが……」


「順調に稼いではいるつもりですが、ポーターをたくさん雇うのはキツイですね。

まずは装備の強化だと思っています」

僕は言う。


「引っ越しに金を使いましたよ。

稼げてはいますが、そんなに余裕はありませんよ」

ウィルさんは言った。


『三槍の誓い』資金 B+

『雷の尾』資金 B-


「現状を反映してこんなもんか?」



『三槍の誓い』

攻撃 A-

防御 A-

情報 B

回復 A-

輸送 B

資金 B+



『雷の尾』

攻撃 B+

防御 A-

情報 B+以上

回復 A-

輸送 B

資金 B-


このような形になった。

フムフム。僕は頭の中にメモする。



「所詮紙の上のデータだ。

強いパーティーでも死人は出すし、弱いパーティーが稼ぐ時もある。

あまりあてにするなよ」

トビアスさんは言った。



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