第135話 追放劇・スーパー・イレギュラー
金盾から流れ込む金色のマナが僕には見えた。
魅了スキルの力だ。
金盾の魅了スキルは、僕が皆のために張った防御結果を突破した。
次に魅了スキルは、僕の意識に入り込もうとし、第二の防御結界も突破し……。
そこで第三の防御結界にぶつかり阻まれる。
残念だったな。防御結界が一つだとは言ってない。
二つだとも言ってないぞ。
三つだとも言ってないからな!
自分の意識を守るための膜構造の結界を張るなんて、眠っててもできる。
さて、ここまできたら、毒を喰らわば皿までである。
僕は金盾の魅了スキルに興味があるのだ。
スキルの情報を収集するため、金色のマナの流れに注意深く接触する。
魅了とはいかなるシステムなのか?
その片鱗でも知りたい。
次の瞬間、視界が切り替わった。
僕の意識は別の空間に放り出された。
不思議な世界である。
周囲は淡い金色の霞がかかっていて、金盾のマナの気配を感じる。
その中で、僕は透明な多重結界に包まれた状態で存在している。
僕と金盾の意識は、魅了スキルのマナで半ば結び付いてしまったようだ。
推測するに、金盾の精神世界に僕が侵入した感じだろうか?
もしかして、僕は今、すごい経験をしてる?
僕は金盾の精神世界に探りを入れてみる。
他人の意識への干渉は、攻撃魔術の領分である。
僕には本来できないことだ。
だが、今ならいける!
やっちゃえ、クリフ!
世界の片隅で、金盾が何か喚いているが、僕は軽く黙らせた。
ロイメ将棋で王を追い込むのに近い。
この意識世界で物を言うのは、腕力ではない。
意思の強さ、思考のスピード、思考の練度が力になっている。
確信がある。
この意識世界では僕の方が強い。
案の定、金盾は軽く吹っ飛んだ。
いい気分である。
しかし、
一応金盾の意識世界だろ?
なぜこんなに弱いんだ?
僕は探査の手を伸ばす。
金盾の精神世界は荒涼としていた。
巨大な空白があるのだ。
ここには本来あるべき何かがない。
思考の軸になるようなもの。
何だろう?
銀弓か?
僕は金盾の意識に尋ねる。
関わりはあるが違うようだ。
神託か?
さっきより近い。でも違う。
僕は推理を働かせる。
閃いた。
金盾の鍵になるもの。
ユーフェミアさんは最初からこれだと言っていた。
神への信仰か?
ビンゴ!
金盾の意識世界は大きく震動した。
次の瞬間、世界が切り替わる。
「「クリフさん(殿)!」」
僕は目を明けた。
小さなアパートに、ユーフェミアさんナガヤ三兄弟、ソーソーさん、その他ギュウ詰めの人々。
そして、目の前にはうずくまる金盾がいた。
顔色は真っ青だ。
「金盾アルペロ、あなたがこんなにも弱いのは、神への信仰を忘れたからだと思いますよ」
僕は金盾に話しかける。
「……お前に何がわかる……」
金盾は弱々しく言った。
「安心してください。
何もわかっていません。
僕はあなたや銀弓が持つ強烈な信仰がどんなものか、分かりません。
僕の中には存在しないものなので。
でも、状況証拠から見て、あなたに足りないのはそれでしょう」
僕は言った。
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