第132話 追放劇・プランA
少し時間はかかったが、僕達は金盾アルペロの居場所をつきとめた。
金盾は、紅花通りで楽士をしている女の所にいるらしい。
正確に言うと居場所を突き止めたのは『風読み』で、僕達は教えてもらっただけだけどな!
情報料は払ったし、何の問題もないぞ!
もちろん請求は、ジェシカ・ダッカーに回すつもりである。
金盾の説得に行くのは、僕とナガヤ三兄弟、そしてユーフェミアさん、この5人になる。
シオドアに、精神操作耐性のない女性は近付けるな、と言われた。
この忠告は守るべきだろう。
キンバリーとメリアンとセリアさんは近くで待機する。
何かあった時のために治癒術師は近くにいて欲しい。
女性3人だけど、エルフの魔術師セリアさんもいる。
変な男に絡まれたら、セリアさんが防御魔術を展開し、メリアンは遠慮なく攻撃魔術をぶっ放すことになる。
彼女達は大丈夫だろう。
絡んできた連中がどうなるかは知らない。
「問題は金盾が、ロイメの律と故郷の律、どちらに従うかです」
ユーフェミアさんが最終確認をする。
「彼がロイメ人なら、損得で動くはずだ」
僕は言った。
ロイメは冒険者と商人の町なのだ。
「彼が故郷の律に従うなら、信仰と神託に基づいて動くはず」
コイチロウさんが言う。
銀弓の言動を考えても、彼らの故郷は信仰深い土地だろう。
「彼が理屈の通用しない単なるならず者なら、……シオドアと冒険者ギルドに任せるしかあるまい」
コジロウさんが露骨に渋々と言った。
ロイメの法に触れるのは、最終手段。
合法かつ合意のもと、金盾アルペロをロイメから追放する。
これが僕達の目標である。
金盾をロイメの法の範囲でどうやって説得するか?
様々な情報を元に、法律の専門家であるユーフェミアさんを交えて僕達は考えた。
一応、プランはA→B→Cの3通りある。
プランCで駄目なら撤退。
僕達の誰か1人が魅了スキルにかかったら、その時も撤退する。
最初にして最大の問題は、法の範囲でどうやって楽士の女の家に侵入するかだった。
しかし、これはあっさり解決した。
仕事に行く途中の楽士の女と交渉したら、金と引き換えにあっさりと鍵を貸してくれたのだ。
楽士の女は、魅了スキルで操られているわけではないらしい。
「床を汚さないで」
楽士の女は言った。
夕暮れ時、僕達は楽士の女の小さなアパートに鍵を開けて、踏み込んだ。
楽士の女が言ってた通り、金盾アルペロは家にいた。
黒い髪に、銀弓と同じ浅黒い肌、金色の瞳の、背が高くて、マデリンさん的に言えば「セクシー」な男。
間違いない。
いささか
「貴様ら、何者だ!」
金盾アルペロは言った。
「『三槍の誓い』と申します。家主の許可は得ています」
僕はそう言うと、鍵を見せた。
「私はユーフェミア・ストーレイ。
あなたにお話があって参りました。
ロイメの法の範囲で交渉がしたいのです」
ユーフェミアさんが言う。
金盾は何か呟くと(多分クソッタレとかそう言う言葉だ)、側にあった木の椅子に座った。
ヨシ、まずは座らせた。交渉モードだ。
ナガヤ三兄弟の圧が効いたな。
まずはプランAだ。
損得で動かす作戦だ。
「金盾のアルペロさん、あなたにはロイメを出て行ってもらいたいのです。
ついでに銀弓ダイナさんにもその旨を手紙に書いて下さい。
必ずお届けしますので。
当面の旅費として、300万ゴールドお渡しする用意があります」
ユーフェミアさんは言った。
300万ゴールドは大金だ。ロイメでも半年以上遊んで暮らせる。2人でだぞ。
周辺地域は、ロイメより物価が安いので、価値はさらに増す。
「そんなはした金で、俺を動かそうと言うのか?
最低3000万ゴールド、いやもっとだな」
金盾は言った。
態度がでかい。
ユーフェミアさんの額がピクピクと反応するのが見えた。
「3000万ゴールドと言うのは、お支払いしがたい金額です」
ユーフェミアさんが言う。
一応、600万ゴールドまでは交渉次第で払う気はあったんだが。
ただ、これはプランAでも前哨戦だ。
「では交渉は決裂だな」
金盾は答えると、足を組んだ。
金盾のカリスマ性は危険だと噂は聞いていた。
確かに危険だ。
うっかりしていると、金盾のペースになりそうだ。
「そうはおっしゃいますが、金盾さん、あなたの魅了スキルは危険過ぎます。
たくさんの人があなたを脅威だと思うでしょう。
そして、ロイメにはあなたの魅了スキルに対抗できる人材もたくさんいます。
これ以上ロイメにいても良いことはありませんよ」
ユーフェミアさんは言った。
軽く脅す作戦である。
「良いことがあるかどうかは俺が決める。
とりあえず、お前らの困った顔を見るのは、とても楽しい」
金盾は答える。
こういう発言が出てくるのも、予測の範囲だ。
金盾は腹を立てている。
突然訳のわからない理由で追放されることに!
故郷も神託が原因で追放されたらしいし。
「色恋が絡むと何が起きるかわからん。
命は大事にした方が良いぞ」
コジロウさんが、言った。
笑顔が怖い。
「俺は
殺せるものなら殺してみろ」
「確か王になると言う神託でしたね?
そして、女冒険者によって運命が変わるとの神託もありましたか?」
ユーフェミアさんが確認する。
「そうだ」
「どうぞ」
そう言うと、ユーフェミアさんは紙を1枚差し出した。
冒険者通信の最新号だ。
『タラシ王・金盾、その軌跡を追う』『本命は銀弓か、マデリンか、女冒険者が好み!?』
ばかでかいセンセーショナルな見出しが踊る。
内容は主に金盾の女性遍歴だ。
魅了スキルについては危険な情報なので伏せておいた。
記事はちゃんと裏もとってある。
僕達もゴドフリーに協力したんだよ。
たいへんだったんだぞ。
「
ユーフェミアさんは言った。
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