第130話 アプスト女神神殿の面会

その日の午後、僕達は、当初の予定通りマデリンさんに会うことにした。


金盾の魅了スキル対策や、神託対策も大事である。

しかし、もしマデリンさんが決闘を止めるなら、とりあえず依頼達成なのだ。


ジェシカ・ダッカーの依頼を達成し報酬を受け取り、後の事はロイメ市に任せる。

それで良いじゃん!



「魅了スキルで恋心を操られていタことを知ったら、クソ店主マデリンがどんな顔をするか楽しみデス」

セリアさんはニマニマ笑いながら言った。


……そうですか。

まあでも、どんな反応するんだろうな、マデリンさん。

僕も興味はある。



愛の女神アプスト神殿のマデリンさんとは、割とあっさり会えた。

訪ねて行ったら、マデリンさんが神殿の二階から「やっほー」と手を振っていたし。


愛の女神アプスト神殿は、結婚の女神ヴァーラー神殿に比べると、雰囲気も警備も緩い。

神様の性格が、神殿の管理にも出ているのだろうか?



「みんな、訪ねて来てくれてありがとね。

もう暇でぇ、つまんなくてー」

僕達と面会したマデリンさんは、セイレーン族の6本指をヒラヒラさせながら、のんきに言った。


相変わらず超美人だ。

神殿の警備は特になかった。

まあ、マデリンさん激強だし、必要ないのかもしれないけど。



「フッ、店主マデリン、ビッグニュースですヨ。

なんと金盾アルペロは魅了スキルの持ち主デス。

あなたは恋心を操られていマス」

セリアさんは得意満面に言った。


「やだ、アル君たら、バレちゃったんだー。

いざと言う時まで隠しておけって言ったのにぃ」

マデリンさんは言った。


知ってたのか……。



愛の女神アプストの信者として魅了スキルに腹が立たないんデスか?」

セリアさんは追及した。


「んーでも、アル君の魅了スキルはー、相手に多少は好意がないと効果でないよ?

まー、アル君イケメンだからぁ、みんな好きになっちゃうんだけどー」


魅了スキルについて新情報が出た。多分真実だろう。

僕は頭の中にメモする。


「あとー、魅了スキル使いながら、いろいろやると面白いんだよー。

いっぱいドキドキするしぃ」


……いろいろやるって、……まあその、えーと。



「そういうの、って言うのよ。

ママが言ってた。

あと、そういう客はだって」

メリアンが断言した。


「まあ、そうかもだけどー」

マデリンさんはイマイチ納得していない。



「『輝ける闇』のトレイシーさんが魅了スキルにかかって大変だったって言ってた」

キンバリーが言った。


「セイレーン族と人間族は違う。

人間族の女の子にとって、『ちょっと良いな』と『本気の恋愛』は違う。

魅了スキルは困る」

キンバリーは断固主張した。



「んー、確かにそうかもねぇ。

分かったぁ。

今度アル君にあったら注意しとく!」

マデリンさんは言った。


マデリンさんは、納得したようだ。

ヨカッタヨカッタ、って違うだろ!



僕は一歩踏み出した。


「マデリンさん、本当に決闘やるんですか?

結界の女神ヴァーラー神殿には、王国と繋がっている連中がいる噂もあります。

正直に言います。困るんです。

決闘は止めてください」

僕は単刀直入に言った。

本音で勝負だよ。


!」

マデリンさんは言った。


「やあだって、マデリンさん、子供じゃないんですから」

僕は思わず言ってしまった。


「やるったらやーるの」

そう言うとマデリンさんは頬を膨らませる。



その時である。


「マデリン殿、金盾アルペロはそれほど良い男か?」

コジロウさんが脇から言った。


「うん」

マデリンさんは笑顔で答える。


「妬けるのう。俺よりもか?」

コジロウさんはそう言うと、野性味が強い笑顔を見せる。


か……格好いいかもしれない。

僕は思わずドキドキしてしまった。

ノーノー。今のナシ!



「うーんえーとね、あなたもぉ、同じくらいステキ!」

マデリンさんは力強く言った。


「俺が頼んでも駄目か?どうしても決闘したいのか?

俺はマデリン殿のような強く美しい女は大好きだぞ」

コジロウさんは言う。



「コジロっもがが」

割って入ろうとしたコイチロウさんは、コサブロウさんに口を塞がれている。



その時、マデリンさんの大きな青い目からポロポロと涙が零れ落ちた。真珠のようである。


「ごめんなさい、あなたはステキよ。

でも、どうしても決闘したいの。譲れないの」



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