第129話 神託について語る
シオドアとネリーは、一通りの話した後、去った。
これから2人で冒険者ギルドに向かうのだと言っていた。
確かに魅了スキルは、冒険者ギルドに報告すべき案件だ。
そこで、ジェシカ・ダッカーにも会うのだそうだ。
2人が冒険者ギルドより先に、『青き階段』に来てくれたことは感謝すべきだろう。
「魅了スキルか。どうやって対抗する?」
コイチロウさんが言った。
「ある程度は行けそうな気がするんですよ。
僕は精神操作属性の防御結界も張れます。
ただ金盾の力は、魔術ではなく、スキルなので確実にとは言えませんが」
僕は言った。
「クリフ殿、いろいろやるのお」
コジロウさんが言った。
それほどでも、……あるかもね。エヘヘ。
ネリーに凹まされた後なので、こういう称賛は素直に嬉しい。
「私もクリフさんと同じ意見です。
ただ、魅了スキルに対抗するには、パーティーメンバーの選定が大切です。
別の言い方をすれば、メンバーを選べば対抗可能でしょう」
ユーフェミアさんが言った。
「耐性のあるメンバーはそう簡単に見つかるものか?」
「例えば私がそうですよ。
ストーレイ家は、精神操作に耐性のある家系です。
精神操作属性の持ち主のクリフさんも大丈夫でしょう。
クリフさんの結界の中に入れば、その方々もおそらく大丈夫です」
ユーフェミアさんは言った。
僕としても、ユーフェミアさんの言うことは概ね正しいと思う。
シオドアとネリーは大丈夫だったんだし。
「それよりも、神託が問題です」
ユーフェミアさんは断言した。
そうなりますかね?
「金盾が、
金盾さんには、納得済みで、ロイメを去っていただかないと」
ユーフェミアさんは言った。
「……。」
僕達は沈黙した。
クエストの難易度が跳ね上がった。
金盾が銀弓と似たような性格だったら、最悪だ。
神々が何を考えているのか?
僕にはわからない。
神々の意思を解釈するのは、神官の仕事だ。
神々は、そうそう世界に干渉してくる存在ではないが、その力は絶大である。
この前、第三層でダンジョンが水没させたように。
魔術師クランでは、あの事件は
「ロイメでは神託はどういう扱いなのだ?」
コイチロウさんが聞いた。
「僕は神託をあまり信用していないんですよ。でも、好きな人は好きですよ」
僕は答える。
ユーフェミアさんが僕に続けて答えた。
「公式に『神託』を行うには、ロイメ市の許可が必要です。
でも、非公式には……やってますね。半分野放しです。
ただ、たいてい小さな魔石を使っていて、あまり降りて来ないようです」
「公式に行われる『神託』とはどういうものなのだ?」
コイチロウさんがさらに聞く。
答えたのは、ユーフェミアさんだ。
「最後に行われたのは半世紀以上前です。
Lv6の魔石を使い、人間族とエルフ族とドワーフ族の魔術師が協力して行いました。
運河の大規模な改修工事を行う予定があったので、天候を予測する必要があったのです」
「Lv6の魔石はすごいのお。
それでどうなったのだ?」
コジロウさんが聞いた。
「神託は一応降りて来たのですが、その……かなり外れまして」
ユーフェミアさんは言った。
この件は僕も知っている。
実は外れるのは、神託あるあるである。
しかしLv6の魔石が代価となると、ちょっと納得できない。
「それ以来、ロイメ公式の神託は行われていません」
ユーフェミアさんは言った。
「ロイメ市の気持ちは分かるの」
コジロウさんは言った。
「そんな訳で、ロイメはあまり神託を信用していません。
ただ、既に降りている神託を破るとなると……、まあ、嫌がる方々はいるでしょう」
ここでユーフェミアさんは一呼吸おく。
「間違いなく言えることは、
そして、それは、ジェシカ・ダッカーの望む展開ではないでしょうね」
ユーフェミアさんは言った。
結局、金盾には納得ずくで出て行ってもらわなければならないと言うことか。
めんどう臭いな!
あの婆さん、無茶振りしやがって!
「のう、神託をあまり重く考えない方が良いのではないか?」
コジロウさんが言い出した。
「アキツシマ人は『神託』が大好きでな、あちこちでしょっちゅう行われていた。
神を降ろす巫女もたくさんいたが、タブン偽物も混じっていたな」
「黙れ、コジロウ!故郷を悪く言うな」
コイチロウさんが遮る。
「続けさせてくれ、兄者。
アキツシマでは、神託のあまりの多さに、訳がわからなくなった。
皆は、つごうの良い神託だけ信じておった。
さらに、神託を都合よく解釈する職業まであったのだ!」
コジロウさんは言った。
当然だが、所変われば『神託』の意味も変わる。
アキツシマの話は、初耳だ。
その時、ウフフと言うちょっと不気味な声が聞こえてきた。
「それは、……素晴らしいアイデアです……。
神託を破らずに、別の解釈を与えれば良いのですね……」
ユーフェミアさんである。
「……ただ、下準備が必要ですね……、ウフフ……」
ユーフェミアさん、なんか怖いんですけど!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます