第112話 マデリン・クエストその2
「しかし、レイラさんは何故今になって、
これまでワタシが探して欲しいと言っても、知らん顔だったノニ。」
セリアさんは『マデリンのお店』を片付けながらも、しゃべり続けている。
「マデリンさん、銀弓と決闘するらしいじゃないですか。
レイラさんもマデリンさんを心配してるのでは?」
僕は言った。
レイラさんとマデリンさんは、長年の相棒だったらしいし。
「あの糞
そう簡単にくたばりまセンよ。
無詠唱で上級治癒術を使う化け物デスよ」
セリアさんが言う。
は?ちょっと待った。変なこと聞いたぞ。
そもそも、上級治癒術って無詠唱で使えるモノなわけ?
「……ねェ、なんかおかしなこと聞いた気がするんだけど」
メリアンが言った。
メリアンも治癒術の使い手だから、異常性が分かるのだろう。
「はい。
あの
でもこれは真実デス。
私は見ましタ」
……いや、あの。
……マジ、ですか。
マデリンさん、ぱねえ。
「ついでに、
こちらも凄腕デス。
決闘ごときで、心配する必要があるとは思えまセン」
「それは……、マデリンさんはガチの防御の鬼ですね」
僕は感想を述べた。
「クリフ殿、なぜそうなる?」
コイチロウさんが質問してきた。
「水属性の魔術は、防御向きなんです。
水結界は、攻撃力の強い火属性の攻撃魔術を防ぎます。
ハイレベルな水結界は、雷の魔術も遮断できます。
風の攻撃魔術は、言わずももがなです」
僕は解説する。
水結界は、汎用性が高い防御結界なのだ。
水結界こそ「最強の結界」だ、と言う者も魔術師クランにいる。
僕は同意しないけどな!
水結界には水がないと使えないという欠点がある。
まあ、僕の知っている水属性の魔術師は、大きな水筒を
でも欠点がある以上、最強とは認められない。認めたくない。
防御魔術については力学魔術が頂点。
僕の持論である。
「クリフ殿の結界とマデリン殿の結界はどちらが強力なのだ?」
コサブロウさんが一見のんきに言った。
うううっ。コサブロウさん、それ聞きますかぁ。
「それは、それぞれに適した結界を張る方がいいに決まっています!
とは言え、結界の強さは術者の腕にも影響するんです。
僕の理想は力学魔術である、衝撃吸収の結界を張ってその内側に元素魔術結界を張ることで、今僕は練習中で、だから最終的には……」
僕はどんどん早口になった。
……。
「適性の広さは全属性を使えるクリフ殿が上。
だが、現時点での術者としての腕はどちらが上だかわからない。
そう言うことか」
コイチロウさんが言った。
「そうですよ」
僕は答える。
そうなんだよ。
マデリンさんは強そうだけどな。
「水属性の結界を破るには、どうやって攻撃すれば良い?」
コイチロウさんは続けて質問してきた。
「魔術攻撃でなら……、氷魔術で結界ごと凍らせるか、土属性の攻撃魔術で結界をぶち破るか、かなあ」
以前、僕は魔術師クランの模擬戦で、
模擬戦の勝ち負けはどうだったって?
その後、至近で攻撃魔術をぶっ放されて負けたよ。
「でも、結界を破って攻撃を当てても、マデリンさんなら治癒術で治しちゃうんじゃない?」
メリアンは言う。
「無詠唱で上級治癒術を唱えられると言うことは、意識があれば治癒術を使えるってことでしょ」
メリアンは続ける。
「……」
僕は沈黙した。理論上はそうなる。
つくづくマデリンさんぱねえな。
「……なるほど。『マデリンは強い』となるわけだな」
コジロウさんは言った。
「分かりましたカ?
一対一であの馬鹿
何故、レイラさんがそこまで心配するのかわかりまセン」
「やはりそこは友情と言うものではないのか?」
コジロウさんが言った。
……友情かぁ。
「さてと、どこに行くんデスカ?」
店を閉めたセリアさんが言った。
「マデリンさんの最後の目撃場所は、紅花通りです」
キンバリーが言う。
紅花通りは、ロイメ最大の歓楽街である。
ここから少し東へ歩く。
運河を船で行くこともできるが、僕達は歩くのが仕事の冒険者だ。
僕達7人組は、紅花通りへ出発した。
「しかしなぜ、マデリンさんはそんなところににいたんでしょうね?」
僕は歩きながら言った。
紅花通りは歓楽街だ。
平たく言えば、娼婦の縄張りである。
女性冒険者には相性が悪い街だ。
「娼婦達の治療のためでショウ。
昔から
マデリンさん、そんなことをしていたのか。
僕の中で、マデリンさんのイメージが大きく変わった。
「のう皆。
俺は今、思ったのだが。
紅花通りの住人は我々が借金取りで、マデリンを探しに来たと言って。
……居場所を教えてくれるだろうか?」
コサブロウさんが言った。
僕達は沈黙した。
マデリンさんを探すのってとっーても大変なんですよ。
ユーフェミアさんの言っていたことの意味がわかった。
「マデリンさん相手に高圧的にでちゃダメ。
特に紅花通りでは絶対にダメ。
借金の取り立ては、あくまでも名目。
私達は、レイラさんの代理としてマデリンさんを迎えに行く」
キンバリーが宣言した。
「マデリンさんに、友達が心配してるから会って話をしろって、まずは伝えましょ」
メリアンも言う。
「はぁ。そううまく行けばいいデスけどネ」
セリアさんが言った。
「あのね、紅花通りには私はコネがあるわよ。
小さい頃は紅花通りの裏で遊んでたんだから。
私の母は、通り随一の高級娼婦だったのよ」
メリアンが言った。
それは初耳である。メリアンが昔のことを話すのは珍しい。
「それは目立つ方だったんでしょうネ」
セリアさんがメリアンの金髪をじろじろと見ながら言う。
確かに。
メリアンのお母さんなら、多分美人だろうな。
「まあね。母も同じような金髪よ。
『紅花通り美人番付』で何度も1位を取ってたわよ。
なんとかなるって。行きましょ!」
メリアンが言った。
うん。メリアンの言うとおりだ。
案ずるより産むが易し。
案ずるより団子汁。
ともかくマデリン
本人を見つけないことには話にならない。
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