第113話 美女対決
マデリンさんはびっくりするほど簡単に見つかった。
紅花通りの側に大きな広場がある。
その広場に大きな人だかりができていて、その中からマデリンさんこ声が聞こえたのである。
「間違いないです。マデリンさんいます。側に銀弓もいます」
キンバリーが言った。
キンバリーはコイチロウさんの肩の上に乗っている。
肩車ではない。
肩の上に立っているのだ。
人だかりを覗くための苦肉の策である。
キンバリーはマデリンさんを確認すると、ヒョイと身軽に地面に降りた。
マデリンさんはこの人垣の中か。
さて、どうするか。
「何のための取立て認可証デスか。行きますヨ」
セリアさんは押しとおる覚悟だった。
「皆さん、私達は、ロイメ市の認可を得た者デス。
そちらのマデリンに用がありマス。
道を開けなさイ!」
残念ながら、小柄なセリアさんの言葉は興奮した群衆にはほとんど効果がなかった……。
コイチロウさんがスゥと息を吸った。
「我々は!
ロイメ市の認可を受け者!!
道を開けよ!!!」
広場に大音声が響き渡る。
今、耳にきたよ、キーンと。
人々は動揺し、人垣が大きく崩れた。
「道を開けよ!!」
コサブロウさんは、そう言うと人の群れをかけ分けた。
「道を開けてくれ!!」
コジロウさんもそう言いながら、人垣の中を進む。
「なんだ?」「ロイメ市だって」「この取立て証が目に入らヌカ!」「押すなよ」「今、いい所なんだよ!」「すみません、通して下さい」
かなり大変だったが、僕達はなんとか人垣の前に出ることができた。
足踏んじゃった人、ごめんなさい。
人垣の中央には、ポッカリと円形の広場ができていた。
そこにマデリンさんと銀弓ダイナはいた。
「災い多き女よ!
そなたこそ我が
銀弓ダイナが良く響くアルトで宣言した。
銀弓は、優雅な長身で、手足は長く、浅黒い肌は日の光によく映えた。
黒髪はポニーテールにしており、前髪の一房が銀色だ。
銀弓は美人だ。そして、単なる美人以上の強烈な存在感がある。
「でもぉ、そんなこといわれても、恋する心は誰にも止められないのぉ」
こちらはマデリンさん。
マデリンさんの白い肌に、セイレーン族特有の青い髪がよく映える。
前にも言ったが、超巨乳美人である。
セイレーン族は愛の女神アプストの愛し子であると言われるだけはある。
「白々しい。
セイレーン族の思いほど移ろいやすいものはない。
そのような思いで我が君をたぶらかすとは」
銀弓の白いスカートのスリットから見事な脚線美が見えた。
おおっ。
群衆からどよめきが起こる。
「足は銀弓だなあ」
僕の隣のオッサンがぼそぼそと言った……。
「移ろう愛、変わらぬ愛、全て真実なのよぉ」
マデリンさんが上半身をひねった。
薄紅色のワンピースの大きく開いた胸元からは、胸がこぼれ落ちそうだ。
おおおっ。
再びのどよめき。
「胸はマデリンだなあ」
僕の隣のオッサンが言った……。
「そのような軽はずみな愛でこの世を担うことはできない!
アプストよ、そなたの愛は災いしかもたらさぬ!」
銀弓が一歩踏み出した。
長く細くい脚は力強く、見事に鍛えられている。
黒く真っすぐでつややかな髪が風にたなびいた。
おおおおっ!
「銀弓の足は捨てがたいなあ。あと黒髪ストレートは正義でしょ」
「幸福も災いも愛の一面なのよん」
マデリンさんは、セクシーに体をくねらせる。
ヒューヒュー。
「でもマデリンのふくらはぎと足首もいいな。
細けりゃいいってモンじゃないからな」
隣のオッサンは無視することにして、だ。
どうやって、マデリンさんに話しかけるか。
下手なタイミングだと、群衆から総スカンを買いそうだ。
そんなことを考えていた時だ。
「ちょっと君、クリフ・カストナーじゃないか。
いい所で会えた」
いきなり後ろから話しかけられた。
げっ!
背が高く、黒髪青灰色のタレ目、甘い顔のイケメン。
ハーレム・パーティーの黒一点、シオドアである。
さらに後ろには、赤毛のネリーや、ボンキュッボンのトレイシー、トロール族の馬鹿でかい女(名前は忘れた)もいる。
『輝ける闇』そろい踏みだ。
「ちょっとシオ、そんなチビどうでもいいじゃない。
女将さんの指示は『銀弓を連れて来い』よ。
ソイツは関係ないでしょ」
トレイシー、貴様、僕をチビって言ったな!
言っておくが、僕はチビではない。普通である。
ナガヤ三兄弟や、シオドアみたいにでかくはないが。
「お久しぶりです。シオドアさん。
その節はお世話になりました」
僕は礼儀正しくかつ儀礼的に答えた。
「クリフ君。
ちょっとだけ、僕に雇われてくれないか?
あ、メリアン君もいたか。君も頼む」
「はあ?」
「報酬は相場の倍払うよ。
じゃあ頼んだから。
今この時だけだ」
シオドアは強引に言う。
「ちょっと、まだ承知してないから!」
メリアンが言い終わる前にシオドアは動いた。
「皆の衆、僕はシオドア。
ストーレイ家の者だ。
ストーレイ家の名において、結界魔術師と治癒術師を用意した。
マデリン、銀弓ダイナ。
後顧の憂いなく、思う存分やってくれたまえ。
決闘の立会人は僕がつとめよう」
シオドアは朗々とした声で言った。
群衆はドッと沸く。
ストーレイ家は、ロイメの名門である。
シオドアはそこの出身なのか。
ますますいけすかないやつである。
僕とメリアンは、ストーレイ家の人気取りに利用されるのか?
とはいえ、群衆はやんややんやの大騒ぎ。
後には引けない雰囲気である。
銀弓ダイナは、背負っていた弓を構えた。
マデリンさんも体をくねらせるのを止めて、軽く構える。
これ、僕やりませんとは言えなそうだなあ。
しょうがないな。
シオドアに前回の借りを返しておくか。
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