第103話 消去法
「間違っていたら入れ替えればいいだろ」
ダグが発言した。
ここがダンジョンでなければ、ダグのやり方でいい。
しかし僕は、仕掛けを解くのに失敗して、最後に落とし穴に落ちた冒険者の話を聞いたことがある。
その話を聞いた時は馬鹿だなー、と笑っていた。
今は笑えない。
とりあえず、慎重に、だ。
上から
その
結界に触れないぐらいの距離だ。
「ニンゲンヒトリメ、エルフフタリメ、ドワーフゾクガサンニンメ、トロールヨニンメ、ケンタウルスゴニンメ、キタリシモノがロクニンメ」
ちょっと待て。来たりし者って何だ?
「来たりし者って何でしょう?」
僕は皆に聞いてみた。
「何だよ、いきなり」
ダグが言う。
「あの
僕は答えた。
「来たりし者って、この場所に来たってこと?つまり私達?」
メリアンが言った。
「ちょっと像を見せてください」
ウィルさんが言い、僕は彫像を渡す。
「どちらにも種族的な特徴はありませんね。両方人間に見えます」
そうなんだよね。僕にもそう見える。
「かっー、わかってないな。テストや謎解きってものは全部分からなくていいんだよ。
片方分かればいいんだ。
そして、いざと言う時は
ラブリュストルの聖印は
なぜ僕はダグにテストの解き方について解説されなくてはならないんだ?
……おかしい。全くもって納得がいかない。
しかし……、その通りである!!
僕は、残った二つの彫像をよくよく見た。
少なくとも、片方は人間のはずだ。
気合いを入れて見る。
テストでダグに負けるわけにはいかないだろ!
両方とも人間の男に見えた。
まあ、他の像も男だった。
女性には悪いが、種族的特徴は男性の方がはっきり発現するので、男性の彫像で正解である。
「こっちの方が顔がはっきりしてるわ」
メリアンが言った。
言われて見れば確かにそうだ。
「こっちのは像は、顔に特徴がないというか、顔立ちは曖昧よね」
さらにメリアンが言う。
ふむ。他の像はどうだろう?
既に台座にセットしてあるエルフやドワーフその他の種族の像を見る。
種族の特徴ははっきりしている。だが、人相は曖昧だ。
「こちらが人間の像だと僕は思います」
僕は、人相が曖昧な方を持ち上げた。
「もう一つの顔がはっきりしている方は、誰だか分かりませんが『来たりし者』の像なんでしょう」
彫像の顔は僕が知らない顔だった。
「私もそれでいいと思いますよ」
ウィルさんが言う。
「いいんじゃないの」
メリアン。
「おっし。セットするぞ!」
ダグはそう言うと、人間の像を台座に置く。
ポワッと小さく光る。
僕は最後の来たりし者の像を台座にセットした。
6つの台座がポワッと光る。
ガガガガッ。
音がした。
僕達の後ろで、あの岩扉が開いていった。
「開きましたね」
ウィルさんが言った。
ああ、開いた。
「ああ、怖かった」
メリアンが言った。
ああ、僕も怖かった。
「よっしゃ。帰るか。話したら、みんなうらやましがるぞ」
ダグが言った。
その図太さが心底うらやましい。
ずいぶん長い間、閉じ込められていたような気もしたが、時計を見れば、時間はそれほどたっていなかった。
急いで戻れば、昼ぐらいにはなんとか戻れるのではないだろうか。
「遅い!」
入り口では、ハロルドさんが仁王立ちで待っていた。
『三槍の誓い』の皆や、『雷の尾』のメンバーもいる。
だいぶ彼らに狩られたんだろう。賢明だ。
「実はこういうことがありまして……」
僕は今回の経緯を報告した。
「大規模な扉の仕掛けか。素晴らしい。是非見にいかねば」
イリークさんが興奮している。
「今回はなんとかなったものの、迂闊過ぎるぞ」
ハロルドさんはウィルさんを叱りつけた。
でも、そのハロルドさんも目は爛々と輝いている。
冒険者なら当然だ。
僕達は、皆でそろって広間に行くことになった。
休憩を希望する者はいなかった。
再度訪れたが、青い目の鳥の扉も、僕達を閉じ込めた岩扉も、開いたままである。
「素晴らしい」
エルフのイリークさんが2番エルフの台座に触れる。
台座はポワッと光る。
ハーフ・トロールであるコジロウさんが、4番トロールの台座に触る。
これもポワッと光る。
コジロウさんは、この後1番人間の台座にも触れた。これも光る。
コイチロウさんとコサブロウさんも同様だった。
なぜ、混ざり者の台座がないのかと思ったが、どうやらハーフ種族は両方いけるようである。
ちょっとしたチートだ。
僕達がそんなこんなで台座をいじって興奮していると、不意に寒気を感じた。
気温が下がっている?
いや違う。強い霊気だ。
広間に強い霊光をまとった白い影が現れた。
白い影には実体はない。
そのような
できれば会いたくなかったが。
ハイ・レイス!!
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