第13話 閑話 ユーフェミアとレイラ

「はああ」

ため息が聞こえる。

ユーフェミアは、それを無視して遅めの朝食を取っていた。


「ユーフェミアさん、お届け物です」

受付の女の子のひとりミシェルが声をかけてきた。ユーフェミアは、朝食を中断する。



届けてくれたのはドワーフの職人だ。届け物は木の札だ。

木の札は、直方体で四つの面が赤・青・黄色・灰色に塗り分けてあり、その四面それぞれに名前が書かれている。


「これはクリフさん、これはコイチロウさんコジロウさんコサブロウさん、そしてキンバリー。注文通りですね」

ユーフェミアは、綴りに間違いがないか確認していく。

問題はない。


「ありがとうございました。またお願いします」



朝食は名残惜しいが、先に片付けることにする。

「はああ」

またため息。


『青き階段』のロビーの壁にはこの木の札がたくさん下がっている。それぞれが冒険者の名前が書かれている。


Eランク場所にコイチロウにコジロウ、コサブロウの札を赤を正面にして下げる。これは、すぐに移動することになるだろう。

続いてCランクの場所にクリフとキンバリーの札を、これも赤を正面にして下げる。



「……心配だわ」


「うるさいですよ。レイラさん」


レイラは、キンバリーの赤い札を見ながら言う。

「やっぱり、こっそり後ろから付いて行けば良かった」



これらの札は、冒険者の所在を表している。


青なら都市ロイメ内。黄色は都市ロイメ外での活動。赤はダンジョンに潜っていると言う意味だ。そして、灰色は、行方不明を表す。


一時期に比べると札は減った。

看板パーティーの引き抜きに伴う混乱の中で、別のクランへの移籍パーティーが何組か出たためだ。

でも、今後の『三槍の誓い』の活躍に伴い、また賑やかになるとユーフェミアは思っている。



「そもそもレイラさんは、何故ウチにいるんですか?」


「キンバリーに関して第一報が入って来るとしたら、『青き階段』ですよってみな言うんだもの」


つまり、クランマスターのレイラがあまりウザいので、風読みのスタッフは、こちらに押し付けたのだ。


「クリフさんは防御魔術の名人ですし、トビアスさんとダレンさんもいますから大丈夫ですよ」


「それが心配なのよ。キンバリー以外皆男じゃないの!キンバリーはあんなにかわいいのに」


キンバリーは確かにかわいい。だいぶ無愛想だけど。


「皆さんそんなことをする方じゃありませんよ」


「わかっているわよ。そんなこと。だいたい私がそんな危ないパーティーに送り込むはずがないでしょ。

キンバリーをどこのパーティーに預けるかは、ずぅーっと考えていた。

私が一緒に潜ることも考えたけど、キンバリー嫌だっていうんだもの。

綿密な情報収集と分析の末、安全性と将来性両方の視点から、『三槍の誓い』に預けたの」


「なら、安心できますね」


「ダンジョンは何が起きるか分からないの!」



ザクリー爺さんが来て、レイラの側に芋菓子を置いて行く。


「絶対付いて来ちゃだめとか、ひどいわキンバリー」

レイラは芋菓子をバリバリと食べながらぼやく。


ユーフェミアは、朝食の続きを食べることにした。

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