第47話 伝説のドラゴンⅣ
4月27日 8:28
攻撃を吸収できるようになったドラゴンは、デイジーの手首に爪を貫通させ、彼女から魔力を吸い取った。
俺は、爪が抜かれてそのまま地面に落下していくデイジーを急いで助け、透明化して森の木々に隠れることにした。「デイジー、大丈夫か!?」
俺の腕の中でぐったりとしたデイジーは自分の左手首に魔法をかけた。「大丈夫。止血した。右利きだし。」
間もなくして、ドーンという大きな音とともに地面が揺れ始めた。地震が起きたのだろう。少し離れた場所でゴゴゴゴゴッと地面が割れ、段差ができる。
少し離れたところを見ると、地震のせいで倒れてきた木をセージとキャシーで避けているところだった。二人とも、顔や腕などに切り傷がある。割れたバリアの破片が刺さっているところもあった。よく見ると、キャシーの喉に破片が深く刺さっていた。彼女は木を避けきれず、頭を強打してしまう。
「キャシー!」俺とデイジーは見つからないように小さく叫ぶ。
するとセージがキャシーを別の場所へ運んで、すぐに一人でこちらへ飛んできた。「ここにいるんだろ、お前ら。」
俺は一度透明化を解除すると、セージを含んだ三人でもう一度透明化した。同じ人がかけた透明化の魔法なら、かかった人はお互いを見ることができるのだ。「キャシーは?」
俺が聞くと、セージは首を振った。「だめだった…。なあ、レオ、俺たちは残酷な人間になってしまったよな。」
「どういう意味だ?」
「先生たちも、マックも、アレクセイも、…キャシーも…みんな、仲間のために自分の命を犠牲にしてくれた。で、俺たちはどうかというと…慣れちまった。でも今さっきキャシーが…それで思ったんだ。俺たち、変わったなって。」
「二人とも、みんなが犠牲になったとき、何も感じなかったの…?」デイジーが上体を起こす。
考えてみれば仲間たちが死んだとき、胸が苦しくても動けはした。みんなが仲間を助けようとしたとき、俺もセージもそれを止めた。
「父さんを亡くして心が強くなったんじゃない。何とも薄情で、卑屈で、卑劣で、最低なやつになっちまったんだよ。…だからさ、最後くらい俺は役に立たせてもらうよ。」セージは微笑むと、俺の手首を掴んだ。「今、俺の魔力を90%お前に譲渡した。あとの10%で少しでも戦ってくるよ。レオ、マックも言ってたけど、絶対勝てよ。…今までありがとう。楽しかった。」セージは透明化を解除するとワープしてドラゴンの正面から巨大化した拳を入れた。「ゔうぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」強烈なパンチをくらったドラゴンは後ろによろけたが、セージはまだ攻撃をやめない。ドラゴンの翼を引き千切って、無事だった片手をバキバキと細かく折った。
敵が弱っている隙にと俺とデイジーは二人で一緒にビームを出す。ふと緑色の風が吹いたかと思うと、口の中に粉のようなものが入って、俺もデイジーもビームが出せなくなった。そして後ろで手を縛られ、まるで見えない糸で吊られるかのように、ドラゴンの高さまで引き上げられた。
顔を上げると、セージが足先が徐々に凍らされ、魔力を吸い取られているところだった。氷はついに顔まで到達し、セージは目を見開いたまま氷で覆われてしまった。
「あ…?」
ドラゴンはこちらを見てにやりとすると、氷を尻尾で力強くはたき落とした。
氷は物凄いスピードで落下し、地面に到達すると粉々に砕け散った。
「セーーーーージィィィ!!!!!」
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