第42話 悪夢再び

 4月27日 6:44

 「最悪だ。また、あの時みたいに…」

 「レオ、落ち着け。お前が落ち着かないでどうする。お前は強くなってる。やつが封印されてる間にな。」

 「分かった…まず、国民を避難させよう。モノセロス学園だ。で、魔法使いは城に集まって敵に備える。」言葉にした後すぐ、国中に指示を出した。


 セージを襲った初老の男が海の氷を溶かし、ジョーが封印されている箱を取りだした。そして封印を緩めると、洗脳した数十人のペリドットで封印を解いた。ジョーが箱の中から出てくると、男はペリドットたちを海に落とし、笑った。

 

 朝食を食べていると、この光景が脳内に送られてきた。太陽の角度からみるに、あれはリアルタイムではないはずだ。

 一緒に朝食を食べていたチーム全員、同じものを見た。俺とセージ以外は敵を探しに行ったきり、まだ帰ってこない。


 不意に聞き慣れない音がして窓の外を覗くと、そこにはジョー,初老の男,数人の魔法使い,200体程の魔物が森の入口にいた。

 周りにはチームのメンバー含めた魔法使いたちが次々と集まってきている。

 「セージ、あれ…。」

 「何だ、この前よりも弱そうだ。大丈夫、前みたいにすぐ終わるさ。でも次は犠牲なしで。」

 「レオ!」デイジーがワープして来た。「敵を見つけた。」

 「ああ、今ここから見える。悪の魔法使いが他にもまだ数人いたことと、魔物が思ったより大量にいることがショックだが。」

 「確かにね。とにかく早く行こう。もう戦いは始まってる。」


 戦場に到着すると、多くの魔法使いたちが敵と戦っていた。しかし、魔物はかなり手強いようで、倒れている死体が全然ない。

 「魔薬専門の魔法使いは魔薬で敵の魔法使いたちを殺せ。それと、俺のチームも魔法使いを相手に戦う。他の魔法使いは魔物を頼む。」俺はその場にいる味方全員にテレパシーを送り、ジョーの元へ向かった。

 やつは俺とセージを見て「すぐに封印から目覚めて悪かったなぁ。」と笑った。

 「次は殺してやる。」セージは血管を浮き立たせている。

 「その前に教えてくれ。どうしてこんなに魔物やお前の味方の魔法使いがいるんだ?それに、お前の封印を解いた魔法使いはどうした。」

 俺が聞くとやつは、「ここにいる魔法使いはお前が王座につくことや戦争の時の作戦、最近の襲撃など色々なことに不満を持った奴らをそそのかした。封印を解いたのは10割洗脳だ。魔物は…すぐに分かるさ。」とにやりとした。

 「洗脳?…みんな、死んだんだぞ?お前らが海に落としたせいで、みんな!」セージはさらに顔を赤くした。

 「それは俺じゃない、あいつだ。」

 「あのジジイの名前は?何なんだ、あいつ?」

 セージの問いに、ジョーがマックとアレクセイとキャシーと戦っている男に目を向け、「彼はマインドフリー。魔力量が少ないことがコンプレックスで、ほとんど洗脳だけを特訓してきたようなもんらしい。」

 「なるほど、洗脳しか出来ねぇアホって訳か。レオ、もうこいつ殺していいか?」このセージの子供のようなキラキラした目は久しぶりに見た気がする。

 「殺したい時にそんな目をするのはやめろよ。でもまあ、そろそろ殺すか。」

 俺が口を開いた瞬間、セージはナイフや岩をどんどん相手に向かって飛ばしていったが、ジョーは球体のバリアを作ってしまったので何の攻撃にもならない。

 俺は助けてあげようと相手のバリアにビームを当てた。もちろんバリアにはヒビが入り、セージの飛ばした数たくさんのナイフが一本相手の腹に刺さった。

 相手が怯んだ隙に金縛りの魔法をかけると、セージは少し時間をかけて大きめの斧を作り、ゆっくり相手に近づくとその首を切った。

 ジョーは声も出さず落ちていき、俺が地面に着く前にやつを石化すると、ゴンッという鈍い音を出した。

 俺とセージは地面に降り、俺が作った2つの巨大な金槌で石化したジョーの頭も胴体もボロボロに砕いた。二人とも父親を殺された憎しみと悲しみと悔しさを込めた。


 

 

 


 

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