第43話 洗脳を解け

 4月27日 7:06

 俺とセージが殴り続けた石は原型を留めておらず、サラサラと風に舞ってどこかへ消えた。

 それを眺めて息を整えていると、急にセージが「ジジイ!」と叫び、後ろの木に縛りつけられた。

 俺は振り返り、マインドフリーの目を見て瞬きした。

 

 「急にあなたとあの男が消えて、私は男に洗脳の解き方を聞くためにあなたたちを探しに行ったの。あなたの魔力量は多いから、見つけるのは簡単だったわ。それで見つけたあなたたちは、海に向かってあなたが何かの魔法をかけてた。何をしていたの?」

 「海の底に、父さんが封印されてるって彼が教えてくれたんだ。」そう、彼はとても良い人だった。でも、封印を解除しても出てくるのには時間がかかるから、まだ父さんはここへ来れないそうだ。

 「嘘だ、レオ!お前は騙されてる!」デイジーに魔法を解いてもらって自由になったセージが言う。

 「セージ、お前の父さんも父さんと一緒に封印されてたんだよ。もちろん解除しておいた。」

 デイジーはかなり怯えた目をセージに向け、俺に金縛りの魔法をかけた。そして「洗脳の解き方を教えて。」とマインドフリーを見ながらこん棒を作り出した。

 セージもマインドフリーに近付いて構えている。「もう魔法が使えないようにしておいた。話さないと彼女に殴られるぞ。」

 膝をついて後ろで手を縛られたマインドフリーは「彼女に殴られたって痛くなさそうだが?」と二人を煽った。

 デイジーは力いっぱいこん棒を振り、マインドフリーの腰を殴った。「力は増強してるから痛いんじゃない?それにおじいちゃんは腰が弱いしね。」

 マインドフリーはうめき声を上げると地面に倒れ込んだ。「少しは老人の体を労ったらどうなんだ。」

 「労って欲しければ答えなさい。」デイジーはまた相手の腰をこん棒で殴った。

 「ゔぅぅ分かった、もうやめてくれ!」

 「意外と早かったな。で、どうするればいいんだ?」セージはマインドフリーの体を起こした。

 「特定の周波数で脳に波動を送るんだ。今から俺が波動を出してやるから、それを覚えてやればいい。いいか、一度しかやらないぞ。」マインドフリーはセージに魔法を解いてもらい、5秒間程波動を出した。

 デイジーはそれと同じように波動を出すと、そのまま上空20m程まで飛んで下にいる人々に向けた。

 俺は波動を感じると、フッと力が抜けたような感じがした。そして今さっきまで俺がしていたことを一気に理解した。「セージ、大変だ!」

 「おかえり、レオ。」

 「さっき俺は父上の封印を解除していたんじゃない。すごく大変なことをやらかしてしまったんだ…。」  

 洗脳から解けた人々は次々と魔物退治を始めた。魔物は最初の10分の1くらいに減っていた。

 「どうした?何をしたんだ?」

 「彼に何をさせたの!?」デイジーはこん棒ではなく槍を持ってマインドフリーを見た。

 『伝説のドラゴンの封印の解除。』俺とマインドフリーは目を合わせて同時に言った。

 「この、クソジジイ!」セージはデイジーから槍を奪い取ってマインドフリーの胸に「このっ、このっ!」と何度も突き刺した。

 デイジーは血だらけでどんどん体温を失っていったマインドフリーの胸に空いた穴に爆薬を詰め、火を出した。「セージ、みんなに離れるよう指示を出して。」

 俺がデイジーに言われたとおりその場にいる味方全員に指示を出すと、みんなは空高く飛んで行ったりワープしてどこかへ行った。

 俺とセージは二人で大きな球体のバリアを作り、火をマインドフリーの体の上に落としたデイジーをその中に引き入れた。

 

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