第40話 取り戻せ

 4月26日 8:13

 「俺、考えたんだけど…昨日、君の話を聞いてムカムカしたのは、俺には彼女が必要だからなんだと思う。いや別に、好きっていう感情は未だによく分からない。だけど、彼女が自分のことを好いてくれることが俺にとっては嬉しいことっていうか…彼女が俺ではなく別の人を見ているということに対してあんまり良い気がしないっていうか…」

 「おはよう、レオ。」

 「あ、ああ、まずはあいさつが先だよな、ごめん。おはよう、キャシー。」

 「それで、どうするの?私も考えたんだけど…デイジーはあなたに一目惚れしたじゃない?だから、あの時のセージを見て恋をするのももしかしたらありうることなのかもしれない。」

 「確か、セージも君に一目惚れだったと思う。…ってことはあの二人の恋も普通にありうること…なのか…?」

 「その可能性は高いわね。レオ、一緒に彼らを取り戻しましょう!」

 「でもどうやって…?」

 「あなたがボロボロになれば、デイジーは振り向いてくれると思うわ。セージはその後考えましょう。」


 「デイジー!助けて、レオが大変なの!」放課後、俺は学校の校舎裏に倒れていた。赤い絵の具を頭から被って、茶色や黒の粉を腕や足の至るところにつけて。

 「だ、大丈夫!?」デイジーが駆け寄ってきた。「気絶してるの?」

 その後ろからセージも来た。「何があった?」

 「分からないの。大きな音がしたから来てみたら、彼がここで倒れていて。あなた手当とか詳しいでしょう?」

 「こんなに血が出てたら私たちじゃ手当できない。とりあえず、保健室に連れて行こう。」

 「分かったわ、もう大丈夫。それなら私一人でできるわ。お二人はお先に帰ってどうぞ。」

 二人とも動かない。

 「私に連れて行かせてくれる?」デイジーが言った。

 「ええ、もちろん。お願いできる?」キャシーがそう言った瞬間、四人まとめて保健室にワープしていた。

 「どうして?あなた私の彼をとったじゃない。どうしてまだレオの役に立とうとするの?放っておけばいいでしょう。」

 「その話は今するべきじゃないでしょ。先生はいないみたいだから、呼んでこなくちゃ。」

 俺は本当に怪我をしていないので、先生を呼ばれるとすごく困る。本来であればデイジーが正しいが、今はキャシーにねばっていただきたいところだ。

 「いいえ、先に話して。」

 「でもキャシー…」

 「あなたは黙ってて!」恐る恐る口を開いたセージを、キャシーがピシャリと止めて睨む。

 「はい、すいません。」

 「あなたって欲張りなの?レオも、私の彼も自分のものにしたいの?」

 「そういう訳じゃない!…セージ、あなたには悪いけど、私洗脳にかかってたみたい。本当はレオのことが好きなの。…私の推測を、話させてくれる?」

 「ええ、聞かせてちょうだい。」

 キャシーが俺の体についた絵の具と粉をサッと取ってくれたので、俺はスンッとして上体を起こした。「騙しててごめん。本当は元気なんだ。」

 「うぇぇえ!?…まあ、何もないなら良かったけど…。」セージは目を丸めた。

 デイジーは俺をチラッと見て「そう。じゃあ場所を移動して話すね。」と四人まとめてワープさせた。

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