第39話 長い髪と髭の男

 4月25日 17:21

 「よう、レオとキャシー。何で俺とデイジーはここにいるのか、説明してもらってもいいか?」俺の部屋の椅子にワープさせられたセージが言った。念の為魔法は使えないようにしている。

 その隣ではセージ同様魔法を使えないようにしてあるデイジーもきょとんとしているが、しっかりセージと腕を組んでいる。

  俺はそれを見て耳が熱くなるのを感じたが、深呼吸すると腕を組んだ。「ああ、少しお前の見たことを見たい。」

 「ちょっと失礼。」キャシーもショックを受けているようだが、ぐっと堪らえてセージと俺の額に触れた。

 するとまた視界が白くなり、全身の力が抜けた。


 ほうきで空を飛んでいた。下には森が広がっており、隅々までその森を見ていく。

 急にほうきが垂直になったかと思うと、頭側から真っ直ぐ下に落ちていった。上手く着地ができず、地面に追突する。たまたまほうきが先にぶつかり、その衝撃でバウンドしたおかげで、骨折や全身打撲などの大怪我は免れたが、強く打った肋骨が痛む。

 背後で足音がしたので振り向いたが、顔を確認する暇もなく顔面を蹴られた。クラクラする頭を振ってもう一度相手の顔を見ようとすると、今度は体が地面から10m程離れた。何とか相手の顔を見ると、白いものが混じった髪と髭を長く伸ばした初老の男が立っていた。足が悪いのか杖をついている。

 「セージ・リュカだな。」

 「お前は、誰だ…?突然襲ってくるなんて随分礼儀のなってないやつなんだろうな、このクソジジイ。」

 セージの声がして、次に男の笑い声が聞こえたかと思うと、体が地面に叩きつけられた。「お前の言葉遣いも礼儀がなってないな。」

 震える手で体を起こし、反撃をしようと岩をたくさん作って相手の方に飛ばす。

 …が、全て跳ね返されてしまった。岩たちはそのまま自分の方に向かってくるが、避ける体力もバリアを作る体力もない。それに意識も朦朧としていて頭がクラクラする。

 岩が目の前まで飛んできたその時、ズザザッという砂の擦れる音がして、視界が少し暗くなった。

 「セージ、だ、大丈夫!?」デイジーだった。巨大なバリアで攻撃を防いでくれている。

 男はニヤッと笑って何やら指を動かすと、ワープでどこかへ消えていった。

 見えたのはそこまでで、それからだんだん視界が暗くなって意識がなくなった。


 セージの視界を借りたため酔ってしまったのか、気分が悪くなった。「なるほど。…ありがとう、二人とも。少し一人になりたい。連れてきておいてなんだが、外してもらえないか。」

 三人が部屋を出た後、俺はベッドに寝転がり、頭の整理を始めた。

 


 

 

 

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