第32話 思い出話

 俺は椅子に腰掛け、「君のお父さん、ペリドットだったんだ。…うちと一緒だな。」デイジーを見た。「ご両親、君がペリドットだってことは知ってたみたいだ。」

 「やっぱりそうなんだ。」

 「3歳の頃急に魔法が使えなくなったって。それを知ったら傷付くだろうから、今まで黙っていたらしい。」

 彼女はずっと天井を見つめていたが、「3歳か…。そうだ、森の広場で遊んでた時にね、ある男の子と友達になったの。それで一緒におままごとしてて、何でか分かんないけど葉っぱ食べちゃったの。しかもちゃんと飲み込んじゃってさ。すっごい苦いのに。」ふと俺を見て目を合わせたデイジーが楽しそうに笑っていて、俺も思わずつられてしまった。

 「それが苦すぎて、ずっと覚えてるの。それが一番古い記憶…と、味覚。でも、男の子の名前も顔も、何で葉っぱ食べちゃったのかも覚えてないや。何でだっけ。」

 「俺もよくその広場で遊んでた。そう言えば、そこで仲良くなった女の子が花かんむりとか四つ葉のクローバーのしおりとか、色々作ってくれたっけ…。俺の家のこと知らないのに、王子様って言って花かんむりをつけてくれたんだ。」

 「王子様…?」

 「うん。」

 『私がお姫様ね!って…』

 俺とデイジーは同時に同じ言葉を言って目を合わせた。

 「白いワンピースにつるを巻き付けてドレスにしてた…。」

 「花かんむりが大きくてネックレスみたいにつけてた…あの子、レオなの?」

 「記憶が一致してるから…多分。」

 「もう運命じゃん!」

 「いや、それはどうかな…」

 俺が返答に困っていると、誠にナイスタイミングなことに、セージからテレパシーが届いた。

 「あの使者が目を覚まして、今本当の理由が分かったらしい。どうしても城の中に入りたかった訳は、俺たちの秘密や弱みを暴こうとしたからだった。アルペストはベルシギスに戦争を仕掛けようとしている可能性が高い。」

 「それで、どうするの?」

 「俺たちが目指すのは平和であって、領地拡大でも味方の確保でもない。だから戦争は避けたいんだけど…明日、チームのみんなで作戦会議をしよう。」

 「分かった。私も行きたい。」

 「じゃあ、ここで会議してもいいか?明日は学校は休みだし、出来るだけ早めに終わらせるから。」

 「もちろん。…これが解決したら、魔法の練習付き合ってもらえる?」

 「ああ、魔力量の計測とか、転入とか、やることはたくさんあるから早く回復しろよ。」俺はそう言ってセージのところへ向かった。

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