第31話 解放
「あ"あ"あ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"っ…!」デイジーはさっきから何度も、叫びながら空気の波動を放っている。自分でも止められないようで、苦しそうだ。
足元に倒れている男は死んではいないようだが、全身にあざや傷が見える。
数十分間してやっと収まってくると、俺は
デイジーを眠らせ、セージは男を救護室に運んだ。もう男の記憶は消さないとまずい段階まで来てしまったので、魔法を見られても構わない。
数時間後、城の一室のベッドで寝ていたデイジーが目を覚ました。「レオ…?」
セージと医者と一緒に見守っていた俺は「うん。大丈夫?」と出来るだけ優しい声を出すよう努めた。
「体がどっと疲れて動かないの。私、どうしちゃったのかな。」
その疑問を受けて「君は今さっきペリドットになったんだよ。」と医者が言った。きっと今から、デイジーが寝ている間に俺やセージが聞いた話をするつもりだろう。
デイジーは眉をひそめた。「どういうことですか?」
「ペリドットになったというより、生まれつきペリドットだったが何かしらの理由で魔法が使えなくなっていたんだ。それが今日、また何かしらの理由で力が解放されたというところだ。」
デイジーはさらに困ったような顔をして「はあ…?」と言った。しかし急にハッとした顔になり、「あの、私今日17歳の誕生日なんですけど…それって何か関係ありますかね?」と医者を見た。
「えっ、そうなの?」そんなの初耳だ。
セージもそのようで、驚いた顔をしている。
医者は「もしかしたらそうかもしれない。また色々な面で調べてみるよ。少しの間ここで安静にしていなさい。」と言うと部屋を出て行った。
「二人は?怪我とかない?ごめんね。」
セージは「俺たちは大丈夫。それより原因が気になるな。」とデイジーの問いに答えた。
「今夜はここに泊まるべきだ。保護者は?連絡しておくよ。」
俺が聞くと、デイジーは「お父さんもお母さんもいる。今のうちに全部伝えといてもらえる?」と言って目を瞑った。
俺がデイジーの御両親の元で説明を終わらせ戻ると、部屋にはデイジーしかいなかった。明かりを消して部屋を出ようとすると「待って、レオ?」デイジーはまだ起きていたらしく、目を開けて「眠れないの。どうにも落ち着かなくて。」とベッドの横の椅子をポンポンと叩いた。
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