第22話 肝試し

 9月16日 21:00

 「レオ、大丈夫か?昨日の夜眠りながら泣いてたけど…やめても大丈夫だぞ?」セージは心配そうに俺を見た。

 この林間合宿で、生徒たちが一番楽しみにしているもの、それはこの肝試しだ。男女でランダムにペアになって森の中の決められたルートを歩くらしい。

 「昨日夜に聞いた話で、父上のこと思い出しちゃってな。もう大丈夫だよ。それよりペアが心配なんだ。男子だといいんだけど。」この学園では女子より男子の方が人数が多いので、運が良ければ男子とペアになれるのだ。男子同士のペアはたった3ペア。クラスが混合でなければ、うちのクラスのほとんどは男子だから、俺は女子とペアにならなくて済むのに。

 「ああ、ペアな。俺も彼女とペアになれるといいんだけど…」

 セージがそう言い終わらないうちに、「セージ・リュカ。お前の望み叶えてやろう。」と後ろから声がした。振り返ってみるとエヴァンス先生がいて、にまにましている。

 「えっ、ほんとですか!?」セージは子供のように目をキラキラさせて言った。

 「本当だ。ただ、俺はお前の彼女が誰か知らない。教えてくれたら、ペアにしてあげよう。」先生は恋の話だとかが好きらしい。

 「うわっ、究極の選択だ…。」セージは腕組みして考え込んでいる。生徒にはほとんど知られているくせに、先生にだけは知られたくないらしい。

 俺が「魔法は使わないんですね。」と聞くと、先生は「悪用は禁止されているからな。だが人間観察はした。お前たち二人を気にしている女子のな。」とニヤっとした。が、すぐに口角を戻した。「多すぎて分からなかった。お前らモテすぎなんだよ。」

 「喜んでいいんだよな…。先生、俺は運に任せます。きっと彼女とペアになれる。」

 「あっそ。じゃあそろそろくじ引き始めるからな。」


 「こういうの運命って言うんだよ、レオ。そうだ、怖いの苦手?それより虫が気になる派?」俺のペアはデイジーだった。森のルートに入って少ししてから、彼女が初めて口を開いた。「私は怖いの好きだから、ウキウキしてるよ。」

 「俺も怖いのは好きだ。虫はちょっと苦手だけど、気にならない。それより運命って何だよ。」

 「65分の1の確率なんだよ。運命じゃん…」

 「わっ!!!」俺は後ろに気配を感じて見つけてしまったものに驚き、つまずいた。

 デイジーは後ろを見ると、「なんだ、幽霊か。」と言って俺に手を差し出してくれた。「大丈夫?やっぱりびびりなのね。」

 俺がその手を取り立ち上がると、「あのね、こんなこと言われたら困っちゃうかもしれないんだけど…私本当にレオのこと好きなの。付き合って。」とデイジーが顔を赤らめた。

 「えぇっと…付き合うって?」

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